第8章 王都での事件
王都への旅は、リオにとって新鮮な体験の連続だった。広大な平原、鬱蒼とした森、そして遥か彼方に見える王都の尖塔。全てが目新しく、心躍るものだった。
しかし、王都に到着した翌日、思わぬ事件が起こった。
リオたちが宿泊している騎士団の宿舎で、何者かが機密書類を盗み出すという事件が発生したのだ。犯人の姿は誰にも目撃されておらず、手がかりすらない状態だった。
「これでは大会どころではありませんね...」
引率の教官が頭を抱えていた。その時、リオの中で何かが反応した。
(この感覚は...危機察知?)
リオは直感に従って動き始めた。宿舎の中を歩き回り、時折立ち止まっては目を閉じて集中する。
「リオ、何をしているんだ?」教官が不思議そうに尋ねた。
「すみません、何か...感じるんです」
リオは答えながら、さらに奥へと進んでいった。そして、宿舎の裏手にある小さな倉庫の前で立ち止まった。
「ここです」
リオの言葉に、教官たちは疑わしげな表情を浮かべたが、とりあえず倉庫を調べることにした。
中に入ると、埃っぽい棚の隙間に、何かが光っているのが見えた。
「これは...」
教官が手を伸ばすと、そこには盗まれたはずの機密書類が隠されていた。
「まさか、リオ。お前どうやって...」
リオは困惑しながら答えた。「実は僕にも分からないんです。ただ、ここに何かがあるって感じたんです」
教官たちは驚きの表情を浮かべたが、とにかく書類は無事に見つかった。犯人の特定には至らなかったものの、大きな問題にはならずに済んだのだ。
この出来事は、リオの評判をさらに高めることになった。特殊な才能を持つ見習い騎士として、上級騎士たちの注目も集めるようになった。
その夜、リオは再び自分のステータスを確認した。
『スキル:運 Lv6』
『風魔法 Lv3』
『直感 Lv3』
『危機察知 Lv2』
『新スキル獲得:真実視 Lv1』
(真実視...?これはまた凄いスキルかもしれない)
リオは新たなスキルの可能性に思いを巡らせながら、明日からの大会に向けて心を引き締めた。
翌日、大会の開会式が行われた。王都の巨大な競技場には、国中から集まった若き騎士たちの熱気が満ちていた。
開会の辞を述べる国王を見上げながら、リオは決意を新たにした。
(よし、全力で挑もう。この力を正しく使えるのは僕しかいないんだから)
リオの目には、燃えるような決意の炎が宿っていた。彼の本当の冒険は、ここから始まるのだ。