第4章 仲間との出会い
翌朝、リオは早めに目覚めた。体の痛みは予想以上に軽く、むしろ昨日より体が軽く感じる。
「これも運のおかげかな」
朝食を済ませ、広場に向かう。昨日と同じく、レオンと他の見習いたちが集まっていた。
「おはようございます」
リオが挨拶をすると、レオンが頷いた。
「よし、今日は基本の剣術だ。まずは木刀を持て」
それぞれが木刀を手に取る。リオの手に渡った木刀は、サイズがちょうど良く、重さも絶妙だった。
「二人組になって、基本の動きを練習しろ」
レオンがそう言うと、見習いたちはペアを作り始めた。リオはどうしようかと迷っていると、
「ねえ、一緒にやらない?」
明るい声が聞こえた。振り返ると、金髪の少女が笑顔で立っていた。
「あ、うん。お願いします」
「私はエマ。よろしくね、リオ」
どうやら、昨日の自己紹介を覚えていてくれたようだ。
二人は向かい合って立ち、レオンの指示に従って動きの練習を始めた。
最初は互いに遠慮がちだったが、徐々にリズムが生まれてきた。リオの動きは素人離れしていて、エマを驚かせた。
「すごいね、リオ。昨日まで剣を握ったことないんでしょ?」
「うん、でも何となく体が覚えていくみたいで...」
実際、リオ自身も驚いていた。レオンが見せる動きが、まるで以前から知っていたかのように自然に体に入ってくる。
「羨ましいな。私なんて、まだぎこちなくて...」
エマが少し落ち込んだ様子を見せる。
「大丈夫だよ。一緒に頑張ろう」
リオが励ますと、エマは笑顔を取り戻した。
練習の合間に、二人は自己紹介を交わした。エマは王都から来た商人の娘で、騎士に憧れて見習いになったという。
「リオはどうして騎士を目指したの?」
「えっと...」
リオは言葉に詰まった。転生してきたばかりで、自分の背景すらよく分かっていない。
「実は、よく覚えてないんだ。でも、何かのために強くならなきゃいけない気がして...」
エマは不思議そうな顔をしたが、それ以上は追及しなかった。
「そっか。じゃあ、一緒に強くなろうね」
エマが差し出した手を、リオはしっかりと握り返した。
その日の練習が終わると、レオンが全員を集めた。
「明日からは、朝の走り込みと基礎トレーニングの後、午前中は剣術の練習だ。午後からは魔法の基礎を学ぶ」
魔法。その言葉にリオは身を乗り出した。ここは魔法の存在する世界なのだ。
「楽しみだね」エマが囁いた。
リオも頷く。剣も魔法も未知の領域だが、不思議と恐れは感じなかった。むしろ、これから始まる新しい挑戦に胸が躍る。
「よーし、明日も頑張ろう!」
エマの元気な声に、リオも「うん!」と元気よく返事をした。
二人は別れ際に約束をした。明日の朝、広場で待ち合わせて一緒に走ることに。
部屋に戻ったリオは、今日一日を振り返った。剣の練習で見せた意外な才能。そして何より、エマという新しい友人ができたこと。
(運がいいのか、それとも...)
考えていると、また例の半透明の窓が現れた。
『スキル:運 Lv2』
いつの間にか、スキルのレベルが上がっている。
「へえ...」
リオは小さく笑った。明日はどんな一日になるのだろう。期待に胸を膨らませながら、少年は再び深い眠りについたのだった。