横暴な方とルーク【黒咲悠とルーカス】
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黒咲悠と悠次、そしてルークことルーカスを中心とした話です。
黒咲悠と悠次って? という方は、本編「光と共に」の3話(1)を読むと出てきますよ。
ルークについては、1つ前の話「〈光の御子〉の犠牲」を読んで貰えたら! 幸いですね!
「うるせぇ! クソジジイ!」
「煩いのはお前だけど、な!」
城の庭に、またしても大きなひび割れができる。ルークことルーカスの手刀打ちが命中した黒咲悠と共に。
正確には、悠のもう1つの人格の方だったが。
「ったく、また嬢ちゃんを呼ぶことに……」
庭が破壊される度、直すのは香花の役割だった。ルークは庭のひび割れの中心で倒れている悠の身体を置いて、広い庭を後にした。
香花の部屋、ダイニングルーム、香花の執務室の順番に城内を巡って行くルーク。しかし、香花の姿は見つからなかった。
香花の居そうな場所を巡り終えたルークは、どうする? と頭を動かした。その結果、城兵に声をかける。
「香花の嬢ちゃん、どこにいるか知ってるか?」
「香花様なら、王都外にお出かけされています」
「……――そうか。ありがとな。邪魔をした」
「いえ」
ルークは廊下を歩いて行く。
(嬢ちゃんいないのか……)
ルークの頭に浮かぶのは、ハイスペック人間の柚葉の顔だ。香花がいないとなると、知り合いかつ簡単に庭を直す魔法を使える存在は柚葉のみ。
ルークにとって、香花や煩い方の悠の人格ほど絡みやすくはないものの、柚葉は光陽王国の重鎮仲間だ。そのため、庭を直すのを頼む相手として答えは出ているが、反応が薄くマイペースな柚葉が庭を直してくれるのか、ルークは疑問だったのである。
(訪ねるだけ訪ねてみるか)
ルークはダメ元で柚葉を訪ねるため、城の庭の外れを目指した。
柚葉の家屋の前にやって来たルークは、柚葉のお手製の魔法具を鳴らす。それは、現代で言うインターホンのようなモノだった。
ルークは何回か魔法具を鳴らすが、反応はない。
「おーい」
呼びかけてみるが、やはり反応はない。気配は感じるものの、出てこない。
(…………。――嬢ちゃんが帰ってきたら頼むか)
出てこないなら仕方ない、そう思ったルークは踵を返す。そうして、悠が倒れている場所に戻ったのだが――
(アイツ、どこ行った!?)
そう。そこに悠の身体はなかった。
ルークは焦る。悠の煩い方は、横暴だ。かつ暴力的なのである。ルークや香花など、一部の相手なら問題ないが、一般人と遭遇して事件でも起こせば、監視では済まない。香花の監視だけで留めるという心遣いが無意味になり、処罰することになり得る。
しばらく目を覚まさないだろうと思って、目を離した自分を悔やむルークだが、時すでに遅し。ルークは全力疾走で柚葉の家屋に戻ると、問答無用で窓を割って中に飛び入った。
「――はぁ? ありえないんだけど」
1階のリビングでスイーツタイムをしていた柚葉は、土足で入って来たルークに顔を顰めてそう漏らした。
「居留守使うだろうからな! それよりも急いでるんだ! 悠の居場所、教えてくれ!」
「……」
「目を離してた隙に移動したんだよ! コレで何か事件でも起こせば、嬢ちゃんに顔向けできねぇだろ!」
「…………。――アイツの自室付近」
「! Gratze!」
ルークは母国の言葉で礼を言うと、一目散にその場所を目指す。
「おい! 餓鬼!」
悠の自室前の廊下を歩いているのを見つけたルークは、そう煽る。
「…………ルークさん――?」
ルークを振り返り、殺意を向けずに静かに青年は声を通す。
「……お前……悠の方か」
どうやらルークの杞憂で済んだらしい。
悠の主人格は、ルークに頷いた。
◇◇◇
「ルーク、柚葉の家の窓壊したってホント?」
数日して戻って来た香花に、そう訊ねられる。
「あー……柚葉のヤツが居留守使うだろうから、な」
ルークが苦笑しながらそう答える。
「家に籠ってたんだ」
「行ったら起きててスイーツ食ってたけどな」
「柚葉らしいね」
ルークの言葉に、香花はそう反応して。
――こうして、香花によって庭は元の状態に戻ったのであった。
はい! 4人の本編「光と共に」の登場人物が出てきました〜!
時系列的には、本編から見ると結構昔の話になりますね。まだ香花と柚葉とルークと黒咲悠(悠次)しかいなかった頃です。もちろん、城兵や国王などの王族はいるんですが。
次回の短編も早めに書きたいなぁ(願望)
ここ数年スランプが酷く、何ヶ月も空いたりすることもありますが、少しずつ増やしていきたいですよね! ホント!
ではでは、読んで頂き、ありがとうございます!!!