おかえりなさいませ、ご主人様っっっ!!!!(野太い声)
「我ながら素晴らしい出来ね……」
今日は待ちに待った幸徳祭本番当日。
うちのクラスはメイド喫茶を出店する。
男子が内観を頑張り落ち着いた感じの雰囲気に仕上がっている。
そして、メイド服である。
メイド服は黒を基調とした長袖ロングスカートの仕上がりで、女子だけではなく男子もメイド服を着るので人によっては多少の化粧を行なっている。
流石に漢っ!!て感じの地頭くんが化粧するのはちょっと……ね?
今は佑の化粧を行なっているのだが……。
「おー!!ゆーくん、べっぴんさんだぁ!!」
あやちーの言う通り予想外に可愛いのだ。
まぁ、佑自体が元々中性よりの顔つきであったが、ここまで化粧映えするなんて……。
「佑、いいじゃん、可愛いじゃん!!」
そして隣に来たのは先に化粧を終えた爽太くん。
爽太くんは勿論めっちゃめちゃ可愛いくなっている。
佑と爽太くんが並んだら売れっ子のメイドさんみたいに見える。
「……そうなのか?まぁ、メイドに大切なのは外見じゃなくて中身だ!!いかにご主人様やお嬢様を丁寧にご奉仕ができるのか大事なんだ!!」
外見は可愛いのに中身が佑なのが欠点ではあるのだわ……。
「おう!!その通りだ中身が1番だ!!」
「まぁ、琢磨は見た目がアレだから中身で勝負するしかないけどね」
目の前にはピチピチのメイド服を見に纏う地頭くんがいた。
本人曰くこの日に合わせて筋肉を仕上げてきたと話している。
結構大きめに作ったのにピチピチって……。
「そういえば桃歌ちゃんのメイド服姿も可愛いね。いつもと違った感じで良いと思うよ」
「そ、そそんなことないよぅ」
「おー、もーちゃん照れてる〜」
いつもはどちらかといえば動きやすい格好がほとんどなので、こんなヒラヒラした服を着る機会は滅多にない。
それを爽太くんに褒められるなんてとっても、とーっても嬉しい!!
「まぁ、桃歌はいつもボーイッシュな服ばかり着てるからな。メイド服なんてめっちゃ珍しいよな」
佑は揶揄う様な感じで声をかけてきた。
「ゆーくん、女の子にそんな事言うなんてデリカシーがないよ〜」
まぁ、佑の言う事にも一理ある。
あやちーみたいに女の子らしい服があたしに似合うかといえば似合わないと思う。
それでも好きな人に可愛いと言われるのは嬉しい事である事は間違いない。
「あー、そうだよな……ごめんな桃歌」
あやちーに諭され佑も素直に謝罪する。
そんな素直に謝られても反応に困るのよ。
『みんなー!準備はできたー?そろそろ店をあけるよー!』
委員長の掛け声でみんなの緊張度が増す。
あたしもなんだか緊張してきた。
『只今より、1年2組のメイド喫茶がオープンします。しっかり順番を守って、ゆっくり入店してください!!』
委員長より開店の声があがり、それと同時にゾロゾロとお客さんが来店してきた。
えっと、まずはあの挨拶をしなきゃ……。
「「「お帰りなさいませっっ!!!!ご主人様っっ!!!!」」」
野太い声が教室に響いた。
途端にお客さんたちことご主人様たちはざわめき出す。
『げっ、男もメイド服着てるのかよ……』
『入るとこ間違ったか……けど……」
「おー、お帰りなさいませ。ご主人様!」
『『『『あやちーがメイド服着てるーーっっ!!!!』』』
初めは男たちのメイド服姿に呆然としていたが、あやちーのメイド服姿を見てご主人様たちは感激していた。
男はなんて単純なんだろう……。
「くっ、やはりあやちーには勝てないのか……」
すぐ側では地頭くんが本気で悔しがっていた。
大丈夫よ、地頭くんじゃ絶対にあやちーには勝てないわよ。
「ご主人様、お席はこちらになりますよ」
佑は満面の笑みでご主人様たちを案内していた。
普段から喫茶店でバイトしている佑にとって接客は慣れた感じね。
『あ、えっと、どうも……』
「あ、私は佑子と申します。最近ご主人様の館で働かせて頂く事になりました。何卒よろしくお願いします」
佑は両手でスカーの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げた。
俗にいうカーテシーを行っていた。
「佑ちゃん、設定まで考えてくるとは……やるね!」
爽太くんは佑に感心していた。
因みに女子は名前に変更はないが、男子たちはメイドになるにあたってそれぞれ源氏名を使っており、佑は佑子、堂園くんは久子、地頭くんら琢子であり、ほとんどの男子は名前の後ろに子を付けるだけ。
爽太くんは爽子だと何かに届いてしまいそうなので爽美になっている。