ふらっと行かれても困るのだが……。
――――
「おいおい、嘘だろ……」
体育祭を終え、家へと帰ってきたらとリビングのテーブルにある置き手紙が置いてあった。
【お父さんがいつまで経っても家に帰ってこないので、ちょっとお父さんのところに行ってきます。PS.斐芽ちゃんと離れ離れになるのが寂しいよう】
……おかーんっ!!??このタイミングが悪い時に家を留守にするなーーっ!!!!
てか、ちょっと買い物風に出かけてくるみたいに言ってるけど、おとんの単身赴任場所は海外だぞ。
おかんの行動力が半端ねぇ……。
「おー……流石が靖子さん、中々アグレッシブだね〜」
これには斐芽も驚愕である。
「えーと……しかも、おかんいつ帰ってくるのか書いてないし……」
「しばらくはゆーくんとたーくんと斐芽の3人暮らしだねー」
まじかぁ……一応しばらくの間生活出来るぐらいのお金は置いてあるみたいだけど、このパターンは絶対俺が家事する事になるだろ。
何故なら斐芽は活動は控えてるとはいえ不定期にアイドル業があって忙しい、佐はとりあえず走る事で忙しい。
俺はバイトがあるとはいえ、毎日働いている訳でもないから幾分か余裕があるし、まず2人とも料理ができないから、とりあえず俺が料理当番なのは確定だしな。
「おー、じゃあ、斐芽がお料理作るよ〜!」
「いや、やめっくれ……じゃなくて、斐芽は忙しいと思うからとりあえず料理は俺がするから安心してくれ」
流石に今のは斐芽の地雷を踏みそうになった事だと俺にも分かった。
「むー、斐芽料理作るの好きだから残念。でも、ゆーくんの料理を食べられるからやったー!」
斐芽は料理作るのは好きみたいだ。
だが、あんな風のご飯を食べ続けていたら、流石に糖尿病になるぞ……。
今度斐芽にちゃんとしたご飯の作り方を教えてやろう。
「そういえばたーくん帰ってこないねー」
「そういえばそうだな。怪しい人に付いて行ってなければいいのだがな」
「流石にたーくんは怪しい人には付いて行かない気がするけど……」
流石にそんな事はないよな……佐?
「ただいまー」
そんな心配を他所に佐が帰ってきた。
「おー、たーくんおかえり〜。帰りが遅いから心配したよー」
「あぁ、ちょっと野暮用でな。ところで母さんは?」
「これだよ……」
佐にリビングに置いてあった置き手紙を見せた。
「あー……なるほどな。なんとも母さんらしいな」
「えーっと、佐よ……」
佐にあの時の事を話そうとするが……。
「佑、何も言うな。あの時は俺がどうかしていただけだ。お前はいつも通りのお前でいろ」
俺が何かを言う前に静止させられた。
「おー?2人とも何かあったの?」
「いや、何でもない。ところで今後の事だが、母さんがしばらくいないとなると家事を分担しなきゃならないのだが……」
「とりあえず朝昼夕のご飯は俺が作ろう」
佐との事はさて置き、とりあえずこれだけは譲れない。
俺たちの健康の為にも。
「あぁ、それだけは佑に頼む」
佐は今日食べた弁当箱を洗い場に置いた。
多分全部食べたのだろうが、おそらく俺と佐は『斐芽に料理をさせたらいけない』で気持ちが通じているだろう。
「えー、それだとゆーくんが大変じゃないかな?斐芽も作るよ〜」
「「斐芽は忙しいと思うから大丈夫だ。問題ない」」
「ぶー、斐芽も料理したかったのにー。じゃあ、洗濯は斐芽がするね。その、洗濯物見られるのはちょっとだし……」
いとことはいえ斐芽も女の子である。
自分の下着を同じ年の男2人に見られるのは嫌だろうな。
俺も斐芽下着を干したり畳んだりするのは流石に気まずいぞ。
「じゃあ、俺は何を担当すればいいんだ?」
「佐は……なぁ……」
佐は基本家事は何もできない男だ。
俺は考えを巡らした結果……。
「佐はゴミ捨て担当だ!これはお前にしかできない仕事だ」
多分、料理は俺、洗濯関係は斐芽、他の家事は俺と斐芽がなんとかして、佐はゴミ捨てに専念してもらう。多分これが1番スムーズな気がする。
「分かった。ゴミ捨ては任せろ!」
遠回しに佐は家事しないでくれと言っているようであるが、素直な佐は了解した。
なんか心苦しいな。
「とりあえず今日は料理する気が起きないから何かで前でも取るか」
「おー!それなら今日ゆーくんとたーくんはいっぱい頑張ったから、斐芽がなんか奢るよー!」
「え、おかんから託されたお金で払うから大丈夫だぞ?」
「一応、斐芽はアイドルとしてお給料は貰っているのです。そのうちお母さんに預けてる分もあるけど、斐芽もお小遣いとして貰ってる分もあるのですよ!」
忘れがちだが斐芽は売れっ子アイドルなのである。
今日は斐芽甘えて奢ってもらうことにしよう。
よし、今日は寿司だな。
因みにこの後出前で来たのは高級な寿司で改めて斐芽すげーってなったのは言うまでもない。