放課後、一緒にティータイムしよう!
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「杏ちゃんもなんなチャラ男たちにナンパされるなんて最悪だったね」
場所は変わって喫茶店【ルフラン】。
2人がチャラ男たちと校舎裏に行ってしまったので、あたしは1人で帰ろうかと思ったのだが、杏ちゃんがどうしてもお礼がしたいとの事でやって来た。
ルフランはモーニング、ランチ、ディナーと食事が美味しく、値段もリーズナブル。そして、コーヒーも美味しいらしい。
あたしたち以外にも何人か学生が寄り道していた。
「うん、断っているのにあんなにグイグイ来るなんて……。私、男の人苦手なんだ」
「だったら、尚更最悪だよね!あたしもあんなナルシストみたいな奴嫌いだわ!」
「あはは……、そういえば桃歌ちゃんのお友達は本当に大丈夫なの?」
「大丈夫!多分今頃、李里奈が懲らしめていると思うから。杏ちゃんは何頼むか決まった?」
「うん、大丈夫だよ」
そして、店員さんを呼ぶベルを鳴らすと……
「いらっしゃいませ!ご注文は決まりましたか?」
見知った奴があたしたちのテーブルにやって来た。
そう、佑である。
「佑!こんなとこで何してるのよ!?」
「おー、桃歌かぁ。見ればわかるだろ?バイトだよバイト!って、鳥牧さんじゃないか!」
「え、神谷くん……?」
杏ちゃんは大層驚いた表情をしていた。
「なに、佑は杏ちゃんと知り合いなの?」
「オーイエス!今日不思議な出会い方をした仲だよー。後、俺の事は佑って呼んでくれていいのに」
不思議な出会いってどんな出会い方をしたのよ……。
「でも、昼休みに会った時と大分雰囲気が違うような……」
それもそのはず、目の前にいる佑は長い髪を後ろで一つ結びして、眼鏡を掛けていないのだ。
正直に言えば、佑は普通に身長こそは少し低いが身だしなみをちゃんとしてれば、そこそこのイケメンなのである。
いつもだらしない感じであるのは『身だしなみにかける時間はない!』との事。
「あー、この髪が邪魔だし、眼鏡も携帯とか弄らないからいらないし掛けてないんだよね」
「まぁ、佑はブルーライト対策で眼鏡を掛けているだけで、普通に視力はいいしね」
「ほわぁー……」
杏ちゃんは佑に見惚れていた……、まさかこれは!
「で、ご注文は何にしやがるんですか?コーヒー美味しいからコーヒーを頼みやがってください」
「そんな言葉遣いをする店員さんはいないわよ。しかも、コーヒーを強要って、あたしがコーヒー飲めないの知ってるよね?」
こいつは杏ちゃんの熱視線には全く気づいてなく、淡々と注文をとっている。
相変わらず佑は自分に好意を持っている人には気づかない鈍感野郎。
「アイスティーを頂戴。幼なじみの縁でなんかサービスして頂戴」
「わ、私もコーヒーは飲めないので暖かい紅茶をください」
「残念ながら当店では幼なじみサービスは行っておりませぬ」
注文を受けた佑はテーブルから離れて行った、
「桃歌ちゃんは神谷くんと知り合いなの?」
佑が去った後に真っ先に杏ちゃんが声をかけてきた。
「まぁ、幼なじみであり腐れ縁っていうかね……」
あたしと佑の関係を説明するのは難しい。
中学3年の時に佑と2人で遊び行った姿を李里奈や美久に見られ『あのオタクっぽい人はももの彼氏なの?』と言われたこともある。
勿論、彼氏ではない事を説明しても『いやいや、友達にしては距離近すぎるって』と言われた。
うーん、あたしとしては当たり前になり過ぎて佑との距離感を相手に説明するのは難しい。
因みに今はあたしと佑の関係は世話焼きの姉と手のかかる弟と、李里奈と美久は言っている。
「へぇー……そうなんだ。因みにだけど、神谷くんは彼氏とかいたりする感じ……?」
あたしの予想は的中しそうで、杏ちゃんは佑の事が好きな感じかな?
「多分いないとは思うけど……。いるとしたら二次元での彼女?かな」
「そう、なの?」
『二次元の彼女かぁ』と小さな声で呟いた。
「ねぇ、もしかして杏ちゃんは佑のことが気になる感じ?」
と、あたしが気になっている事を杏ちゃんに尋ねたが……
『ちよ、マジあの女ヤバかったんだけどー!』
『だよなー!校舎裏で礼儀を教えてやろうと思っただけなのにさー!』