右人は前行き、左人は囚われる。
――――
「うおぉぉぉっ!!やったな佑!!」
「佐に勝つなんてとんでもない男だよ!!」
「だぁーっ!!男に抱きつかれる趣味はねーよー!!」
なんとなんと、俺は佐に勝ってしまったのだ。
まぁ、ギリギリだったんだけど。
走り終えて自分の陣営に戻ると盛大なお祝いムードだった。
それはいいのだが、真っ先に琢磨と久志が抱きついてきたのだ。
流石に抱きつかれるんだったら男より女の子が良いぞ。
「流石は佑ちゃん、不可能を可能にしてみせたね!」
「やっぱ、ゆーくんはカッコいいねー!」
「だろ?俺が本気出したらこんなもんさ」
爽ちゃんと斐芽とハイタッチした。
「はぁ、アンタは普段からこんな感じでいると、マイナスイメージが少ないんだけどね……」
「お、桃歌、感極まって俺に飛びついてくれるのか?」
「そんな恥ずかしい事しないわよ!!でも……」
桃歌が手を挙げた。
「流石に今回ばかりはカッコよかったわよ」
「おう、応援あんがとな」
俺は桃歌とハイタッチした。
『ねぇねぇ、あのイケメンが佑だなんて今だに信じられないんだけど』
『しかも、あの佐くんに勝っちゃうなんて……。実は凄い奴なのかも』
女性陣はヒソヒソ話をしている。
多分俺の悪くだろうな。
『佑ーっ!お前最高かよ!!」
『やっぱ、佑がナンバーワンだな!!』
そして男性陣に囲まれる俺。
嫌ではないのだが、チヤホヤされるんだったら女の子にされたいものだが……。
「佑くん!」
隣の陣営に居るはずの高嶺さんがこちらの陣営にやって来た。
これはあれか、『なんで佐くんに勝っちゃうのよ!!このバカっ!!』って怒られるタイプか?
「佑くん、さっきの見てたよ!まさか、佐くんに勝っちゃうなんて……。2人を応援するつもりだったけど、つい佑くんの方ばかりを応援しちゃったよ」
まさかの展開だ。
集中していて声援が全く聞こえていなかったが、どうやら佐よりも俺の事を応援してくれてたみたいだ。
やばい、めっちゃ嬉しい!
「あの、その……走る姿の佑くん、カッコよかったよ」
顔を少し赤らめて話す高嶺さん。
今まで俺に見せてこなかった表情だ。
これは……少し俺の事を異性として認識してくれたのかな?
「お、おう、ありがと」
なんか照れ臭い感じがする。
やっぱり好きな人にカッコいいって言われるのは気分が良いな。
「何、照れてるんだよ!次のプログラムは1年の集団演技だぞ。早く集合するぞ!」
琢磨の声に我に帰る。
周囲の奴らはニヤニヤしていた。
「おー、お、そうだったな。じゃあ、高嶺さんそういう事で!」
俺は逃げるようにその場から離れた。
恥ずかしくて、穴があったら入りてぇっっ!!!!
――――
「くそっ、また負けた」
自分の陣営に帰るのが億劫で、1人になりたくて校舎裏に来ていた。
「くそくそくそーっ、なんで佑に勝てないんだ俺は」
慢心などなかった、自分の持てる力を発揮したつもりだった。
けど負けてしまった。
今日までの俺の努力はなんだったのだろうか?
『次のプログラムは1年による集団演技になっております。1年生は所定の集合場所に集まってください』
会場に戻るのは嫌だがサボるわけにはいかないな。
俺は所定の集合場所に足を進めた。




