嫌がる相手を誘ったらいけません!
――――
『よっしゃー!!学校終わったー!』
『心の友の佑、帰りにメイドカフェ行こう!』
『あー、今日俺バイトがあるからパスで』
『おー、ゆーちゃんバイトしてたの?』
終礼が終わり、爽太くんと馬鹿3人はだいぶはしゃいでいた。
てか、佑はいつの間にバイトを始めていたの?
「ももー、私たちも帰るよー!」
「ももっちー、帰りにタピオカ飲みに行こうよー」
「うん、帰ろー!」
「それとも、ももっちは爽太くんたちと帰る?」
美久はニヤニヤしながらとんでもないこと言いだした。
「む、むむ無理ー!!」
「いやー、照れてるももっちはやっぱり可愛いや」
「こらこら、あんまりももをいじってやるなよ。頭がパンクするだろ」
爽太くんと放課後2人っきりでの寄り道……喫茶店に行ったりショッピングしたり……。
想像しただけでも顔が熱くなってくる。
『じゃあ、俺たち3人でメイドカフェに行ってくるわ!』
『おう!感想よろしく!』
……やっぱ爽太くんとの寄り道はオタクっぽいところに行くことになるのかな?
――――
『ねぇねぇ、いいじゃーん』
『えっと…私用事があって…』
『そんなのどうでもいいじゃん、俺たちとカラオケいこーよー?』
靴に履き替えようとしていたら、下駄箱付近で2人のチャラい男が女の子を口説いていた。
『それに俺たち2人と遊んだら楽しいし、いい事づくしだよー?』
『よし、俺たちとカラオケでけってー!』
チャラ男の1人が女の子の腕を無理やり掴み連れて行こうとしていた。
「……ちょっと行ってくる」
「え、ももっちー!?」
あたしは現場に近づき女の子の腕をチャラ男の手から放し、女の子を後ろの方に誘導した。
「ちょ、いきなり何するのー?」
「この子嫌がってるよ?」
「えぇー!そんな事ないよー。嬉しそうだったじゃん」
チャラ男たちはニヤニヤしながらふざけた事を言っていた。
「あ、それとも君も俺たちとカラオケ行きたかったの?可愛いし、後ろの子程じゃないけど胸大きいし全然オッケーだよー」
「それに君たち1年だよね?俺たち2年だよー。先輩の言う事は聞かないといけないんだよー?」
なんか、こいつらと話していたら無性にイライラしてきた。
「すいません、先輩たちと遊ぶほど軽い女ではないし、あたしチャラチャラした男は大っ嫌いなので、丁重にお断り致します」
「……あーあ、俺ちょっと怒っちゃった。ちょっとあっちで話をしようか?」
チャラ男の1人があたしの腕を引っ張って連れて行こうとした。
「くそっ!離してよ!!」
「頭がプッツーンしちゃったよー。校舎裏で先輩に対する礼儀を教えてあげるよ!」
流石に校舎裏に連れて行かれたらヤバい。
そう思って、チャラ男の手を解こうとするが、中々解くことができなかった。
「李里奈の姉御ーっ、こっちでーす!!」
「姉御って言うな!」
美久と李里奈がこっちに近いてきた。
「その汚い手を放しなよ。ももが嫌がってるだろ?」
「さっきから、面倒くさいなぁ。何なの?全員俺たちの事が気になるの?」
この後に及んでも、2人の態度は変わらなかった。
コイツらはどんだけ自分に自信があるのだろうか。
「は?お前らに興味はないよ!さっさと、消えろよ」
李里奈は鋭い眼光でチャラ男たちを睨んでいた。
あ、李里奈めっちゃ怒っている。
「女の子なのに言葉遣い悪いよー!先輩への礼儀作法を教えてあげるから付いてきなよ」
「いいよー、あたしからも女に対する礼儀ってもんを教えてやるよ」
大分お怒りである李里奈はチャラ男たちに付いて行った。
「えっと……多分チャラ男さんたちが危ないから、私も李里奈の監視役として付いて行くね。ももっちは先に帰っててね」
苦笑い気味の美久は李里奈の後を追った。
「あ、あのー……お友達の方は大丈夫ですか?先生呼びます?」
女の子が恐る恐る尋ねてきた。
確かに普通この状況なら先生を呼ぶのが正しいと思う。
けど、付いて行ったのが李里奈。
先生を呼んだら大変なことになる。主に李里奈が……
謹慎処分になってしまうから先生を呼ばない方がいい。
「大丈夫大丈夫。李里奈は強いから。それよりあなたは大丈夫?」
「大丈夫です!あ、私は1年4組の鳥牧杏っていいます」