入学後しばらくはクラスの人との距離感に困る
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入学して1か月と少し過ぎた。
大抵は仲の良い人ができて、それが集まってグループとなっていく。
あたしは中学からの友人である美久と李里奈と一緒にいることが多い。
この二人は見た目が派手であるからよくギャルと間違えられるけど、お洒落や流行ものが好きないたって普通の女の子だ。
………まぁ、李里奈のお兄ちゃんは地元で有名な不良で、李里奈に手を出した男を締め上げたという事があるし、李里奈自身も声をかけてきた不審者を単身で撃退したという腕っぷしには自信があるみたい。
因みに美久はゴシックネタが好きな至って普通の女の子。
他にも話す人はいるけど主にこの2人と一緒にいることが多くて、たまに佑と話したりしている。
爽太くんとは未だにうまく話せていない。
小学校の時は普通に話せていたけど、中学に進学してから異性として意識して以降、爽太くんと話そうとすると緊張してしまい、佑や他の人がいないとまともに話すことができない。
そして、そのあたしの姿を見た佑がニヤニヤした顔でこっちを見てきて殺意を覚えてしまう。
「だから貧乳こそ正義だって言ってるだろ!!」
「いいや、巨乳こそが真の正義だ!!」
……………教室の中、授業の合間の休み時間で大声でかつ熱い討論が行われていた。
「貧乳はステータスだ、とどこかの偉人が言っていたように、胸が小さい事を気にして恥ずかしがる姿こそ至高。守りたくなるだろ!!」
貧乳について熱く語るのは堂園久志。
入学式の日にも関わらず勉強していた男だ。
あの堅物で真面目そうだった人がどしてこうなった?
「巨乳には男の夢と希望がいっぱい詰まっているんだ。あの大きなたわわにうずくまる。これこそが全ての漢が求めているものだろ!!」
巨乳について熱く語るのは地頭拓真。
強面でガタイがよく、いかにも不良って感じの男。
噂では中学の時は相当荒れていたらしい。
この強面な男がどしてこうなった?
「「心の友である佑はどっち派なんだ!?」」
「おいおい、おっぱいっていうのは一人一人個性があるからいいんだろ?小さくても大きくてもその胸には男のロマンや魂が詰まっているんだよ!!それを一概にどっち派なのか選べるはずがない!!」
まぁ、犯人は佑なんだけどね…………。
佑は熱く語ってるけど、クラスの女性陣はドン引きしてるよ。
何故か男性陣は絶賛してるみたいだけど……
「おっぱいもいいけど、獣耳がなかったら少し魅力が下がっちゃうよね……」
「「「それはお前だけだろ」」」
……やっぱり爽太くんは獣耳が好きなんだ。
恥ずかしいけど獣耳のカチューシャ付けたら爽太くんはどんな反応するんだろ?
「ってそうじゃなくて、ちょっと、あんたたちは公共の場で堂々と何いかがわしい話をしてるのよ!!」
「「「げ、鬼姑だ!!」」」
「何が鬼姑よ!?そういう変な事話す暇があるなら次の授業の準備でもしてなさいよ!」
「何を言っているんだい花木さん。貧乳派か巨乳派なのかは男の永遠のテーマだよ」
「そうだぞ!永遠のテーマなんだぞ。まぁ、佑がみんな違ってみんな良いって事を教えてくれたんだけどな」
「桃歌、自分たちの意見を言い合う事は大事だと思うぞ」
こいつらは良い事を言っている風ではあるが、内容は最低だわ。
「討論は大事だけどモラルってものがあるでしょ!!」
「まぁまぁ、ももちゃん落ち着いて。教室ではあんまり下ネタは話さないように善処するからさ」
あ、爽太くんに声をかられちゃった。嬉しい!
自分でも顔が赤くなっている事が分かった。
「な、ならいいけど……少しは周りを見なさいよね」
爽太くんに顔が赤くなっているところを見られたくないから、あたしは自分の席に戻った。
……背後からはニヤニヤした表情をした3人の視線を感じながら。
『やっぱあの爽太くん以外の3バカは頭おかしいよね』
『だよねー。特にバカの佑。本当に隣のクラスの佐くんと兄弟なのかしら』
近くからヒソヒソ話が聞こえてきた。
まぁ、確かに双子の弟の佐とは性格真逆だもんね。
「おーい、授業を始めるぞー!これが終わったら昼飯だから頑張るぞー!」
ここで先生がやってきて、ヒソヒソ話は終わったみたい。
まぁ、佑たちがけしからん事をしているのは分かるけど…言い過ぎだと思う。