全ての自分を解放するとき。
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「ふう、一息つくかな」
学校が終わり、直帰で家に帰りまた勉強する。
高校に入学しても、この僕のライフワークは変わらない。
僕にも勉強以外に趣味はある。
……それは読書である。
本を読むのは良い、何故なら先人の知識を文章を通して得る事が出来るのだから。
勉強の合間の読書が僕の気が抜けるひと時なのである。
しかし、僕が読む本はもっぱら哲学書や偉人たちが書いた本のみで他の恋愛小説とかには興味がない。
「さて、今日は学校で読んだ本の続きでも読むか」
鞄から本を取り出すと、無理やりアイツが入れた「貧乳だけど元気にやっています!』が手にあった。
「くそ、せっかくの楽しみの時間なのに今日が削がれるな」
本の表紙には女の子が描かれており、本の厚さからいって小説であろう。
本当ならこの本をゴミ箱に捨てたいのだが、流石に人の本を勝手に捨てるのは倫理的にダメだと思ってしまい我慢をした。
ただの気まぐれ、気の迷いなのか、本を開いてしまった。
まぁ、少し読んだら終わりにしよう。
そしてアイツが何か言ってきたら、『つまらなかった』と答えよう。
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「どうだった?略して『貧元気に』の感想は?」
翌日、休憩時間にアイツが近づいてきた。
「……実に興味深い内容だったよ」
この小説を呼んで衝撃を受けた。
所詮は俗物だと馬鹿にしていたが、その実内容は奥深く、貧乳である主人公が巨乳の女に蔑まれながらも強く生きており、巨乳に倍返しをする内容。
どれだけ、衝撃を受けたかというと、続きが非常に気になり、夜であったが本屋へ行き、最新巻まで買った程だ。
お陰で今日は寝不足である。
「おー、気に入ったのなら何よりだ!」
「神谷はいつもこんな素晴らしい小説を呼んでいるのかい?」
「隣に双子の弟がいるから苗字じゃなくて佑でいいよ。そうだなぁ、ラノベを読んだり、ゲームしたり、色々してるぞ」
こいつ、何て素晴らしい人生を送っているんだ……。
僕なんて今日まで勉強しかない人生だったのに。
「僕も君みたいになれるのかな……」
羨ましい……その一言だ。
両親や兄を恨み、勉強して難関大学を目指すより遥かに人生を謳歌している。
そんな……佑みたいな人生を送りたい。
「慣れるさ、俺と友達になったら。一緒にバカしようぜ」
差し出してきた物は『新世紀微乳少女』。
全くコイツは……
「あぁ、これからも宜しく頼むよ」
それを僕は暑い気持ちで受けとった。
そして、貧乳派に目覚めたのであった。
後日の話になるが、佑から借りてきた本が父に見つかり、叱責を受けるのかと思ったが、どうやら父も佑から借りたラノベを見たようで、衝撃を受けていた。
以後は僕と父は同じ趣味を持つ関係となり語り合う事が増えた。
因みに語り合う僕たちを母と兄は呆れた顔で見ている。