本日雨天なり、敵に塩を送る?
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「ごめん、僕は今日は用事があるから先に帰るね」
「俺も筋肉がジムに行きたがっているから先に帰るわ」
「おう、分かった。爽ちゃんは?」
「ごめん、俺も今日は部活に顔を出さないといけなくて」
俺と久志、琢磨は帰宅部であるが、爽ちゃんは軽音楽部に所属している。
なにやら、アニソンとかをギターで弾きたいかららしい。
俺たちは何となく部活に入らず、帰宅部を謳歌しているが、本日はボッチで帰ることになりそうだ。
「佑ー!いるかー?」
そうすると教室の入り口に佐が立っていた。
「どうした佐、なんか用事か?」
「今日、顧問の先生が休みで部活がなくなった。自主練で走ろうとしたら、『今は雨が降ってるしお前はテストで赤点取りそうだからさっさと帰って勉強しとけ』って先輩に言われた。傘は家に忘れたし、お前の傘に入れてくれ。
因みに佐は頭が悪い。
どのくらい悪いのかというと、高校受験の時に俺が付きっきりで勉強を教えて、何とか幸徳高校に合格できたレベルだ。
幸徳高校は倍率もあまり倍率も高くなく、比較的簡単だというのにだ。
てか、俺も受験生だったのに俺に勉強を教えてくれって頼むなよ。
「俺もバイト休みだし、別にいいけどさ」
しかし、双子が同じ傘で相合傘だなんてな、女子同士なら絵になるが、男同士だとむさ苦しいだけな気がする。
「じゃあ、家に帰るぞ。俺は今日はじっくり休んで明日の練習に備える」
「はいはい、分かったよ。走るの大好きマン」
――――
これは運命なのだろうか……
佐と一緒に帰ろうとすると下駄箱付近に高嶺さんを発見した。
どうやら、傘を忘れてしまい途方に暮れているみたいだ。
「あ、桜子じゃん。あんなとこで何してんだろう」
因みにこいつは高嶺さんの事を下の名前で呼んでいる。
実に羨ましい。
「もしかしたら、傘忘れたんかな?」
確かに朝会った時に傘は持っていなかった気がする。
「そうか、なら桜子も一緒に佑の傘に入れるか」
俺は想像してみた。
俺、佐、高嶺さんの3人で同じ傘で帰る。
高嶺さん歓喜、飄々としている佐、その隣にいる俺。
因みに高嶺さんが佐の事が好きって噂は結構広がっている。
そして、俺が持ってきている傘は普通の傘でビーチパラソルじゃないからみんなびしょ濡れ。
……俺、周りから空気読めよって感じになるな。
「えーと、佐?この傘を持って高嶺さんと一緒に帰りなさいや」
「はぁ、3人で入れば問題ないだろ?」
問題は大いにある。
「あー、俺は走って帰るから、お前は高嶺さんを家まで送る事!いいな?」
「え、でも、佑がびしょ濡れになるぞ?」
「いいんだよ。たまには水も滴るいい男にもなりたいんだよ!」
傘を佐に押し付け、ちょうど雨が土砂降りなっている外を目掛けて走り出した。
高嶺さんの側を通り過ぎる際に俺を見たが俺は気づかないふりをした。
くうーーっ!!雨が目に染みるぜ。