思いは言葉にして伝えるべき
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「佐くん見て見て、占いの館だって!行ってみようよ!」
「おう、いいぞ」
桜子と文化祭を回っているのだが、2人きりになるタイミングを見つけられず、告白できずにいる。いや、これは言い訳で告白する勇気が出ずにいる状態だ。
ある意味ではインターハイの決勝で走る事よりも緊張している。
目の前ある2年の占いの館に入った。
『えーっと、お二人さんはカップルだから相性占いで大丈夫かな?』
2年の先輩は開口一番にとんでもない発言をした。
「ふえっ!?わ、私と佐くんは付き合っていないですよ!?」
「ま、まぁ、そうだな……」
桜子、そんな全力で否定されると俺も傷つくのだがな。
『へー、そうなんですか?じゃあ、2人の相性でも占いますね!』
こちらの話は流しつつ先輩は俺と桜子の相性を占う。
いや、俺としては知りたいのだけどな……。
『むむ、2人の相性は……』
「あ、相性は……」
心なしか桜子も俺との相性を気にしているみたいである。
『バッチグーですね。ナイスベストカップルになれますよ!』
満面な笑みで先輩はサムズアップをする。
よっしゃ、桜子との相性が良いなんて嬉しい限りだ。
「本当ですか!?やったぁ!!」
桜子は周りの事も気にぜずにガッツポーズをとっていた。
「さ、桜子……?」
「あ、ごめんね。つい……」
え、桜子がこんなに喜んでくれるなんて……。
ま、まさか桜子は俺のことを……。
『ただ、2人の相性はとても良いのですが、油断してはダメですよ。おそらく2人は大変モテているみたいですので、ライバルキャラの告白でどちらかがそれにOKしてしまうようです。カップルになるんだったらお早めの方がよろしいと思います』
ら、ライバルキャラ……佑のことか!?
「そ、そうなんですね……」
最後の最後でなんとも後味の悪い結果になってしまったな……。
――――
「あはは、占いがなんか佐くんとの相性占いになっちゃったね」
き、気まずい……。
桜子の相性は良いと言われたのは嬉しいが、占いの館で言われた事は当たっている。
そう、佑のライブの時間が迫っているのだ。
そうなれば必然的に……
「そういえば、そろそろ佑くんたちのライブの時間が近づいているね!体育館に行こうか!」
まぁ、そうなるよな。
結局俺は桜子に告白する事なく、佑が桜子に告白するライブ会場の体育館に行く事になった。
――――
『みんなせんきゅー!!盛り上がってましたねぇ!!』
体育館の観客はぼちぼちいる感じで中々の盛り上がりを見せている。
「楽器を弾けるって凄いよね!私も上手に弾けたらなぁ」
桜子は大いに盛り上がっているみたいだ。
俺はというと判決を待つ罪人の気分を味わいながら佑たちの出番を待っていた。
『ありがとうございました。続いてのバンドは【めっちゃあモテ隊】です」
いよいよ、佑たちの出番がやって来た。
「えっと……【めっちゃモテ隊】って中々のネーミングセンスだね……」
「……俺に聞かないでくれ」
事前に佑からバンド名を聞かされてはいたのだが、正直このバンド名はダサいって思ったのは俺だけではないはずだ。
そう考えているうちに佑たちが姿を現した。