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5,予測していた事態





ダンジョン攻略5日目。


ミノタウロスの襲撃は何度かあったが10体以上の襲撃は無かった。

この事からボスは10体くらいと考えていたが、戦闘が続きミノタウロス1体であると結論になった。


遭遇したミノタウロスがどれも同じ個体だと判明したからである。

その場合、複製の技能が上位の能力に変わっている事となり、必然ミノタウロスも上位個体であると判断した。


安全と日数を考え、6人の3つのパーティーで攻略する事になったが、運が良かったのか、3階は2日の探索で階段を見つけられた。





―――4階層



3階層で階段を見つけるのに2日を要したが、これまで脱落者は無く攻略できている。



「ここも同じかよ」


と悪態をついているのは桐島ハンターだ。

チームごとに行動していて、私は桐島ハンターが指揮するチームに入っている。


Aランクは桐島さん1人。

Bランクは私、西ハンター、五十嵐ハンター、伊藤ハンターの4人。

最期にCランクハンターの疋田ひきだ直人なおと


見て分かる通り、トライデントの3人+αなチームだ。



桐島ハンターが悪態をつくのも無理はない。

1階から4階まですべて同じシルエットなのだから。私もさすがに見飽きた。


「5日もこの光景を見ていると頭がおかしくなりそうです。ただでさえ考える事が多いと言うのに。明人さんが早く倒してくれると助かるのですが……」


「俺もよー、そうしてぇけどよー」


「引きこもりの牛が悪いっす!」


軽口をたたくトライデントの3人はそこまで深刻ではないが、伊藤ハンターと疋田ハンターは少し精神が不安定になっている。

動きも落ちているし、このままだと少し不安だ。


「少し休憩しませんか?」


「お、そうだな。よし休憩!」


ちょうど進んでいた道が行き止まりで、休憩の提案をするとすんなり通った。

2人は安堵して座り込み、トライデントの3人は集まって来た道を警戒している。



「 Bランク上位のダンジョンとはいえ、Aランクハンターが居れば問題なく進めます。ただ、少し気になる点が……」


「ミノタウロスの行動か?」


「はい。相当上位の個体にも関わらず、知能があまりに低い事が気になっています。消耗を狙う、相手の戦力を測る、どちらにしても不可解な点があります」



これまでの襲撃は最初の待ち伏せ以降は遭遇する形で戦闘になった。ミノタウロスは2〜4体で行動していて、遭遇しても仲間が転移してくる事は無かった。


上位の魔物は知能が高く、その中でもミノタウロスはかなり知能が高いとされている。なんせダンジョンの罠を使いながら戦うのだから。


だが、最初以降でそういった知能は感じられない。それに、ミノタウロスが罠を使って戦う姿は確認されていない。


私の考えを先に行くように桐島ハンターから答えがでる。


能力特化(ロスト・スペル)か」


「おそらくは」


能力特化……魔物は決められた能力を持っている。その内のどれかに特化した個体を指して言う言葉だ。特化している代わりに他の能力が弱くなったり、失ったりする。


「我々は騙されているのでは無いでしょうか?ボスは複数で、複製能力特化の個体が迎撃をしている。わざと戦力を誤解するように」


「考えすぎだ……と言いてえんだが、俺も疑問に思ってた。上位個体にしては歯応えがねぇし、複製だからかとも思ったんだけどな。ドロップの内容を聞いて考えが変わった」


「憶測なので黙っていましたが、少なくとも能力特化が2体はいます。この2体がボスなら簡単ですが、ここに上位個体が含まれると面倒ですね」


「それに能力特化は倒したハンターに恩恵がでかい」


2人の会話を盗み聞きする形になったけど、私も会話に参加する事にした。

気になる事もあったのでその事も聞いてみる。


「準備できました。それより恩恵って何ですか?」


この数日間でこのメンバーとはよく話をしている。タンクとして認められてからはよく勧誘されるし。

頑丈な体のおかげで休憩も必要なく、上位のハンターたちについていけている。


「そうか、お前は知らねぇのか。教えてやるからトライデントに入れ」


「いやです」


「明人さん、諦めてください。……能力特化の敵を倒すと技能が強化されるんです。ただ、強化されるのは1人だけで、選ばれる傾向にラストアタックをした人が多いんです。多いだけで他の人が選ばれる事もあります」


「だが、多いとなれば狙うだろ?ハンターにとって技能は虎の子だ。強化したいってのは誰でも思う」


話を聞いて驚く。


技能の強化については何かしら方法があると思っていたけど、まさか能力特化の魔物を倒す事だとは思っていなかった。


てっきり同じ技能書で強化するものと思っていたけど……よくよく考えると、同じ技能書なら安いので試す人がでてその話が広がるはずだ。



あまり知られていないのは能力特化の魔物が珍しいのと、技能強化が強すぎるからだろう。おそらくだが、Aランクハンターは能力強化している人がほとんどだ。


AランクとBランクには歴然とした差がある。

それに技能の強化が関わっているのだとしたら、変化前とは別物に強い技能へと変わるのだろう。


「そんなこと教えてもいいんですか?」


「Bランクになればいずれ知る話です。それを僕から伝えたって事に意味があるんです。あとはまぁ……」


「他の班が敵になったって事だ」


敵になったとそう告げる桐島ハンターの顔は真剣だ。

冗談ではなく、本気でそう思っている。あるいはそう思ってしまう出来事が過去にあったのだろう。


実際世の中には犯罪以外なら何でもするハンターがいて、ダンジョン内は特に危ない。今回の場合記録に残るし、殺人などは元からアウトだけど、怪我や撤退の判断は()()()()だ。それが意味する事は……。



私は桐島ハンターが何を懸念しているか分かってしまった。


「強化される技能もランダムだから、全部が強くなる訳じゃない。それでも、強化された技能1つで世界が変わる。トライデントに入ればそういった機会にも巡り合える。どうだ、入りたくなっただろ?」


一瞬鋭くなった空気が霧散する。

さっきまでの真剣な顔が嘘のように、軽い感じで勧誘される。


たぶん変な空気になって戦闘に支障が出ないよう空気を変えたかったのだろう。

まあ、私は元から気にしていないけど。


「いえ結構です。この依頼が終われば2ヵ月ほど休む予定なので」


「なんだよつれねぇな。……そういやTSポーション貰ったんだったな」


「桐島ハンターはというより、第1世代はTSポーション反対派ですもんね」


「おじさんの年齢でおばさんになっても誰も喜ばねぇよ」


確かにと相槌を打ってみる。


性別が変わる過程でかなり容姿も変わるが、年齢は若返ったりしない。

男から女になる場合少し若返っているように見えるが、それは身長が縮んだり小顔になったりして若くなったように錯覚するからだ。


そんな話をしていると、西ハンターと五十嵐ハンターが慌てて通信機を操作し始めた。


「明人さん、不味いかもっす」


「嫌な予感がするな」


「第2班の通信機が切れました。最悪の事態を想定するなら2班の入った道に向かうべきです。1班に連絡しますか?」


それぞれの班に通信機があり、1日2回の通信をおこなっている。

もし通信機が壊れた場合はその班に何かあった場合だ。通信機には場所を示す座標もあり、もし壊れた場合は最後の場所も他の班に伝わるようになっている。


その通信機から通信が消えたという事は、魔物に襲われて壊れたか―――



「最後の発信場所は降りてきた階段、つまり4階層の入り口です」


―――故意に通信を切った場合だ。


通信機の破壊は故意でも失格にならない。

カメラは付けたままだろうけど、それを追うにしても確認作業に時間が取られるだろう。



「……あの2人にすぐ移動するよう伝えろ。1班にも連絡だ。武蔵、お前が先頭で突っ走れ。魔物は無視する。……ッチ、だからガキは嫌なんだ」









数分走れば降りてきた階段の場所までたどり着いた。

途中の魔物は風神の盾で押しのけて走ったから、ドロップアイテムは無い。


かなりのスピードで走ったけど、トライデントの3人組は余裕で付いてきていた。残り二人は担がれてたけど、担ぎながら魔物も撃退する3人は改めて別格だと感じた。

たぶん身体能力は私よりも高い。


戻ってきた階段の場所には1班の6人がすでに居り、何かしらの話し合いをしている。


たぶんハンターが付けているカメラの解析だろう。


「……秋葉ハンターの行動をもう一度見せてください。……やはりここから行動が変ですね。多分この先にボス部屋が見えたのでしょう」


「でもカメラには……」


「感知系の技能、あるいは透視やハンターとしての勘でしょうか」


2人の会話から状況を察する。

壊された通信機器にはカメラの機能があり、その機能を解析したのだろう。


私たちが付けたカメラはカメラ内のチップか、外の本部に送られた動画しか見れないから。


「おい水嶋、話してる時間はねぇから行くぞ」


「桐島さん……」


「ったく、最初から俺らのところに依頼すればいいもんをよ」



ここ数日、見ていた感じでは水嶋ハンターは考えて行動するタイプだ。理性的で判断に間違いが少ないが、イレギュラーに弱い。

今は一刻を争うと理解していて、それでも行動する前に考えてしまっている。


こういった時は桐島ハンターがとても頼りになる。

考えるより行動するのが桐島ハンターで、間違うことは多々あるけどリーダーシップがある。


「ほら行くぞ、先頭は俺の班が行く。武蔵、お前が先頭だ」


「はい」


「え、武蔵ハンターが先頭ですか?」


「こいつなら大丈夫だ。お前は道の指示だけしろ」


この数日で桐島ハンターからの信頼を集めたらしい。


問題ないとサインを出し準備を始める。

流石にミノタウロスが5体以上だと対処は難しいが、道中の魔物やミノタウロス1匹2匹なら問題なく押し通せると思う。









―――と、思っていましたが……。



「おいおいおい、通せんぼってか?」


目的の場所目の前で、10体以上のミノタウロスが道を塞いでいる。奥が暗くて正確な数は分からないが、確実に10体を上回る数だ。

敵戦力の見積もりが甘かったとしか言いようがない。


それでも時間を掛ければ倒せない事は無い……が、あきらかに時間稼ぎが目的だと分かる。


1分1秒でも早く合流を目指すべき場面での妨害。

出し惜しみしている時間は無いようだ。


そう思ったのは私だけでは無いようで―――


「―――『トライデント』」


一瞬の光が走り迫っていたミノタウロス3体の頭が吹き飛ぶ。


それが何なのか、次に迫っていたミノタウロスが倒れて露わになる。


風を纏った一人の人間、桐島ハンターが立っていた。


「これだから後輩の尻拭いは嫌なんだ。計画が台無しだぜ」


そう言って槍を振るうと暴風が現れミノタウロスを押さえつける。

その隙を逃さず、他のハンターも一斉に攻撃を開始する。


計18体のミノタウロスは一瞬でアイテムに変わった。






特殊個体のステータス


【特殊】ミノタウロス

もはやAランクの魔物

全長 6m

体重 12t


技能

・特殊技能【複製】 最大10体召喚可能、ステータスは元のステータスの8割。複製体も通常の複製を持つ。(実質20体) クールタイム1体に付き1日。

・特殊技能【迷宮】 罠を自在に作り使用する。

・特殊技能【転移】 魔力消費が1になり、クールタイムが無くなる。

※特殊技能は他の能力を犠牲にする。

【海神の呪い】

ステ―タスアップ【上】攻撃、防御、体力、魔力、知力

全状態異常耐性【中】


ステータス (知能以外4倍)

攻撃力 100 (400:S)

防御力 100 (400:S)

体力  60  (240:A)

魔力  60  (240:A)

知力  60  (60:B)



補足:最初の襲撃は複製体の複製体です。ステータスは特殊個体の64%となります。また、武器も複製であり、普通の物より64%能力が落ちています。

攻撃力 256

防御力 256

体力  153

魔力  153

知力  38


つまり、通常ミノの複製体よりステータスは高いが、武器は弱くなってます。

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