22,こうみえてTSしてます
―――はい、という訳でやってきました『ロマノフ聖国』。
現地にてすでに『トライデント』のメンバーは揃っているようだ。
空港には西ハンターが迎えに来てくれた。ちなみにトライデント以外のハンター組織はまだ来ていないらしい。
「メンバーはホテルなんで着いたら紹介するっす」
と言う事で、トライデント一行が泊っているホテルに向かった。
ホテルに向かう途中に話を聞くと、政治的なあれこれでややこしい事情を教えてもらった。
しかも、ここに私たちの報酬も関わっていて……。
問題を起こした国A国、ロマノフ聖国をB国とする。A国は被害の賠償を支払う予定だが、それだけじゃ足りないとB国、魔物を倒すのもA国が負担しろとなった。ちなみに否定したら戦争だ!ってな感じ。
でも魔物の巣はB国にあり、A国の戦力は入国させません。で、日本に頼った訳なんだけど……日本政府へ提示された金額はそこまで多くなかった。
蟻の巣の攻略には人数が必要で、この金額では依頼を受けるハンター企業は無いし、日本政府も戦力を失いたくない。日本政府が依頼を断ろうとしたところ、A国は討伐数だけ追加の報酬を払うと言ってきた。
日本政府はこの話を一度企業に持ち掛け、参加企業が集い今になるのだが……ここでB国が口を挟んできた。
A国は魔物の死体を引き取る代わりに報酬を支払うつもりだったのだが、B国は自分たちの領土にある物をかってに持ち出すな、と主張してきたのだ。魔物の死体はお金になる為、B国も欲したのだろう。
一度日本政府とA国で合意したのに、B国が入ってきた事で話が白紙に戻りかけたが、B国が戦争をチラつかせA国が支払う事になった。
図にすると、
魔物の死体 → B国(ハンターから奪う) → A国(1.3倍の値段で買う) → B国(1.3倍のお金が入る) → ハンター(1.0倍で払う)
要は中抜きだ。
まだハンターに払われる値段が適正なのは救いだろうか。
そして、なんとB国のハンターも討伐に参加するらしい。
戦力は1チーム5人だけど、なんとAランクのハンターが1人いるという。一応は日本と協力する気がありますって意思表示だとか。本音はよく分からないけど、たぶん魔物の素材が欲しいとかじゃないかな~って西ハンターは予想していた。
「―――着きました。ここが泊ってるホテルっす」
いろいろ考えていたらホテルに着いた。
ちなみに私は英語以外の外国語が分からない。通訳さんはいるけど、魔物のいる場所まで付いてこないし少し不安である。
急に参加する事になったB国のハンターと上手くやっていけるだろうか?
ホテルの一部階層を貸し切りにしており、ここには他の日本ハンター達も滞在するようだ。
今はトライデントだけだが、他の組織も準備ができ次第送られてくるのだろう。
ホテルの大広間。
部屋自体広いのだが、なんとどの階層にも客がくつろげるスペースがあるらしい。
そこに集まったトライデントメンバーは西ハンター以外女子の集まりだ。西ハンターがハーレム状態だとSNSに上げておく。
「そんじゃあ自己紹介っすね。あ、俺もしたほうがいいっすか?俺は西達也っす。前衛で役割は斥候っす。武器はハンマー、土の魔法も使うのでよろしくっす!」
「初めまして、私は早乙女陽子です。ランクはBでトライデント所属の後衛の魔法使いやってます。魔法は火と風を使います。よろしくお願いします」
眼鏡をかけたOL女性。
スーツを着て、いかにも仕事ができそうな雰囲気だ。ちなみに彼女がバルバトスの鑑定をするらしい。
「次は私ですね。私はソロで活動している柏原智美、トモちゃんって呼んでください。私も魔法使いでBランク、水と氷、あといくつかの技能を持ってます。よろしくお願いします」
次に自己紹介をしたのは私より頭一つ半小さな女性。
見た目中学生だが、私より年上のはずだ。ボブカットの髪型で少しボーイッシュな感じが可愛い。
「じゃ、次は私ね。私は藤堂彩芽。普段は兄とチームを組んでるわ。ランクはBで、私も魔法使いだけど近接戦もできるわ。魔法は水と雷ね。よろしく」
ミノタウロスの討伐にも参加していた藤堂妹。
長い茶色の髪を一つにまとめ、前に流している。なんというか、大学生でカフェとかにいそうな落ち着いた雰囲気のお姉さんだ。
ちなみに年齢順にすると、トモちゃん>陽子さん>彩芽さん>私となる。……馬鹿なッ、トモちゃんが一番年上なんてありえないッ!
「最後は私みたいね。こう見えてTSしてます武蔵夏輝よ。特異な武器は盾ね。女騎士なみにみんなを守るわ!」
「おぉ!かっこいいね夏輝ちゃん」
「ふふん」
トモちゃんに褒められてご満悦な私。
後衛職が多いのは蟻が物理系の耐性を持っているからだろう。
だから、私が彼女たちを守るのだ!
「でも貴女、夏輝ちゃんさんは魔法使いの方が向いてますよ?」
「そうなの?」
「はい。私、鑑定スキルを持ってるので分かるんですが……たぶん私よりも魔力量が多いです」
へー。
まぁ魔法技能は値段が高いから持ってないんだけどね。
早く魔女技能とか集めたいんだけど……『孤毒』以外のダンジョンだとBランクの『天理』になるかな。あそこはBランクだからソロで行くのはまだ先だと思ってるし、条件があって挑めないんだよね。
「ごめんなさい。魔法技能を持ってないの」
「残念、すごく勿体ないと思うの。だから『トライデント』に入らない?今なら魔法技能を安く手に入ります」
「それもごめんなさいね。まだ組織にとか考えてないの。誘ってくれて嬉しいけど、保留にさせてもらえないかしら」
「全然大丈夫ですよ。また興味が湧きましたら、人事部の方に私か社長宛で伝言をください」
と言う事で自己紹介終わり。
今日の所はこのままホテルで一日過ごすらしい。
「うげぇ、なんかすごい通知が来てるんすけど……SNS?」
―――あ、なんか嫌な予感が……さっさと部屋に行こう。
――――――――――――――――――――
午後、私たちに来客が来たようで西ハンターに呼ばれる。
一度無視したら、部屋の前まで来たのだ。ハーレム発言で自分にも選ぶ権利があると主張してタコ殴りにあっていたけど、疲れた様子はなくケロリとしている。
きっとあれもハンターなりのスキンシップなんだろう。(違います)
扉を少し開け顔を出す。
「要件は何?」
「なんか大統領が挨拶に来たっす」
「はぁ?」
来客はどうやらこの国の大統領らしい。
なんで来たんだろう?
「挨拶ならみんなが集まってからすればいいのに」
「俺らがトライデントの代表って事になってるっすから、挨拶しに来てもおかしくは無いんすけど……お偉いさん方の事情っすね。こういうのは事務方の陽子ちゃんに任せるっす。一応顔見せって感じなんで来てもらってもいいすか?」
「えー」
正直めっちゃ行きたくない。
「SNSの写真、かってにアップしたっすよね?」
「行くわよ。行けばいいんでしょ。これでチャラね」
「まぁいいっすけど」
トライデントのメンバーと顔合わせをした大広間に行くと、すでに他の3人と翻訳の人が来ていた。
そんな私たちの前に座るのがたぶん大統領。白い髪の初老のおじいちゃんで、周りに黒服の護衛を4人も連れてきている。
あと5人ほどハンターの格好をした人たちがいるけど、たぶん合同で討伐に参加するメンバーだろう。
『ふむ。日本人は若く見えるというが、君たちを見ているとそう思うよ。あぁ、人を見た目で判断するのは前時代の価値観だ。気にしないでくれ』
「それで、大統領自らどういった用向きでしょうか?」
翻訳の人を間に挟み、陽子さんが会話を進める。
その間する事が無いので話半分聞きながら、お菓子を頬張る。このホテルのお菓子美味しいんだよね。持って帰っていいか後で聞こう。
『なに、日本のトップハンター企業がどれほどのものか見に来ただけさ。あとは孫娘と話してくれ』
「ぇ……孫娘?」
それだけ言って大統領は席を離れる。
護衛を連れて帰ってしまった。
非公式の場とは言え、なんて自由な人なんだ。
「ハロー、私日本語できるよ」
「ハロー」
大統領の孫娘さんが話しかけてきたので、お菓子を頬張りながら返事を返す。
銀髪の綺麗なお姉さんだ。大統領は白い髪だったけど、あれは地毛だったのかな?身長は私よりも大きく、トモちゃんが並ぶと大人と子供のように見える。
「夏輝ちゃん、口の中の物を飲み込んでから話してください」
「アハハ!ジャパニーズ流の食い意地ね。文化は大事、尊重する」
「……夏輝ちゃんのせいで変な勘違いされてますよ」
いやだって、綺麗なお姉さんが手を振ってるんだよ?
口の中にお菓子が入っていてもハローって返しちゃうじゃん。
ちなみに、陽子さんの私の呼び方は夏輝ちゃんになった。
呼び名で親密度が変わるらしいと本人から。
なにそれギャルゲー?
「文化交流しましょ。ヴォートカ飲む?」
「ごめんなさい未成年なの」
「……ジャパニーズジョーク?ああ、ロマノフの酒は18よ。他の国は21でもここなら大丈夫」
「わたし17なの」
何かの冗談だと思ったのか私以外に顔を向ける彼女。
他の人が頷いて、私が本当に未成年である事を知ったようだ。私たちの情報を知らなかったのだろうか?
「……日本人、年齢わかんないのね。そっちも子共?」
「いえ、私は大人です。ウォッカも飲むよ」
「おぉー、ますます分かんないね」
未成年がいる事は知っていたようだが、私ではなくトモちゃんの事だと思っていたようだ。
確かに、このグループで見たら見た目一番年下なのがトモちゃんだ。
それなのにトモちゃんはお酒を受け取ってグイッと飲んで見せる。
大人がお酒を飲む姿って、なんだか憧れるよね。
今だけはトモちゃんが大人の女性に見える。
「トモちゃんさんはお酒が好きなんですよ。こう見えて」
「一言よけいだよ」
「皆さんも座って親睦を深めましょう」
「感謝するね『座って酒を飲もうってさ』」
ロマノフのハンターチームは男性2人女性3人。
大統領の孫娘さん以外はたぶん一回り年上だと思う。外国人の年齢は分からない。
「私たち日本好きよ。文化交流楽しいね」
「へー、親日家って以外と多いの?」
「うーん……少ないね。日本しらない人多い。あう、自己紹介忘れてた。私イリーナよ、ヨロシク」
孫娘さん、あらためイリーナさんは数少ない親日家らしい。
残り4人も日本の事を良く知っていて、悪い感情は無いらしい。日本語は話せないが、聞き取るだけなら少しはできるようだ。
たぶんそういった人選で選ばれたのだろう。
「それにしても、大統領の孫娘が討伐に参加するなんてね」
「私、そこまで重要じゃないよ。じじいは孫いっぱい。その1人が私。でも私価値ある。私Aランクのハンターよ」
「へー、イリーナさんがAランクのハンターなのね。てっきり他の人かと思ってたわ。いかにも軍人っぽい雰囲気だし」
男2人指して言うと、陽子さんに手を叩き落された。
人を指で指したらダメらしい。……いや、そんなん分かってるけど、紹介してくれないじゃん。
それになんか男は男で集まってるし。
私も一応元男だし、向こうに顔出しに行こうかな。
なんて考えていたら、藤堂さんが倒れた。
トモちゃんとロマノフ女性2人にお酒で勝負して負けたらしい。……何やってるのよまったく。
「夏輝ちゃんを一人にするのは心配ですが、彼女を部屋まで連れて行きますね。くれぐれも失礼のないようお願いしますよ」
「了~」
「アハハ!リョウ~」
「……」
呆れた顔で、そのまま藤堂さんの方へ向かった。
どういう訳か、かわりに西ハンターを私の後ろに立たせて。必然、ロマノフ男2人も私たちの方に加わる。
イリーナさんは日本文化が好きで日本語も学んだらしい。
漫画などで日本の文化を学び、いつか行ってみたいと言う。
「日本で氾濫したら、私助けに行くね」
「ありがとう。まぁそうならないよう私たちが頑張るわ」
「むー、私日本行きたいだけよ」
「分かってるわよ。イリーナさんが来るのを拒否してる訳じゃないわ」
男たちで集まってた時は会話してたと思ったのに、こっちに来て一切話をしない西ハンター。
そろそろ2人で話すのも疲れたから変わってくれないかしら?
「いや~無理っす。女子トークに男が入れる訳ないじゃないっすか」
他の2人も頷く。
……そういうものかしら?
「陽子ちゃんが戻ったら、一緒にサウナ行ってくるっす」
「バーニャね。だからヴォートカ飲まない。仕事中にも飲むのに」
「へー、このホテル大浴場とか無かったよね?」
「サウナは外にあるっすよ」
ホテルの部屋にはバスが付いているが、日本のような大浴場はない。
代わりに外にサウナがあるようだ。
「日本の伝統芸ね。ハダカのツキアイ、私知ってるよ。ナツキ、私たちも行くね」
「あの私は……」
「大丈夫。混浴じゃ無いよ」
「私、TSしてるのよね」
「……『マジで!?』」
驚きのあまりロシア語で話、西ハンターの方に向く。
西ハンターも共感したようにうんうんと頷く。
「……これがジャパニーズ女体化。さすが日本ね」
なんかいろいろと日本が勘違いされている気がする。
まぁ私は関係ないよね。
ステータス(本編には関係ないです)
西達也 男 Bランクハンター
趣味 ゲーム、賭け事
特技 気配を消す
技能
ステータスアップ【上】攻撃、防御、体力、魔力、知力
【ドワーフの加護】 全ステータス2.5倍、土魔法ダメージ1.5倍
【魔人化】 全ステータス3倍。悪魔属性獲得。 (1分ごとに消費体力1)
【土魔法】
【略奪】 敵のステータスを1割奪う。
【気配察知】 生物の気配が分かる。
【危機察知】 危険を察知しやすくなる。
【罠発見】 罠発見率が上がる。
【夜目】 暗闇でも見通す。
ステータス(5倍)【魔人化3倍】
攻撃力 8(40:C)【120:A】
防御力 5(25:E)【75:B】
体力 8(40:C)【120:A】
魔力 6(30:D)【90:B】
知力 4(20:E)【60:B】
運 9




