18,魔女狩り
ちょっと長くなった。
2話に別けるか考えたけどそのままにしたよ。
というか、後半ほとんど関係ない話だから、飛ばしてもいいです。長いので。
6階層『孤毒の魔女』。
魔女の中では最低ランクの魔女だが、実際の強さはBランククラス。
と言うのも、魔女は魔女装備と魔女技能を持った人型魔物で、ボスの場合さらに強くなる。
魔女装備や魔女技能はどれも強く、その分値段と人気が高くなる。
当然『孤毒の魔女』も人気があったが、今は過疎化している。
理由は2つで、1つにソロでしか魔女装備、魔女技能をドロップしなかった事。
もう1つは場所と1日1回の制限だ。場所は郊外、遠く無く近くもないが始発の電車に乗って行ってもすでにクリアされている事があり、行くだけ無駄になる事が多かった。しかも宝箱も無い。
結果、今ではこのダンジョンに潜る人がいない。
「そもそも、ソロで死に過ぎたから制限が掛かったんだけど」
制限のせいでBランクからしか入れないけど、Bランクのハンターからすれば所詮Cランクのダンジョン、魔女以外の階層は実りが少な過ぎる。
まあ、それでも、魔女装備や技能が欲しいならこのダンジョンが一番簡単ではあるんだけど。
「魔女装備には種類があって、ここでは『孤毒』シリーズの装備が集まります」
:へー
:魔女装備有名だけど女性限定だからあんまり知らない
:男は魔女装備のコスに意識が持ってかれるからな
:美魔女までは可、それ以降はアウト
:魔法少女まで可、それ以降はアウト
「ここで手に入る魔女技能は4つ。『闇の手』『闇の眷属【カラス】』『爆弾魔法』『闇の障壁』で、当然敵が使ってくる」
6階層はこれまでのステージと違い、夜の森の中。
敵はこのステージのどこかにいる。
少し歩くと、暗い森の中を動く何かが居て……それを盾で応戦すると、カラスが地面に落ちる。
敵の眷属だ。
魔力がある限り眷属を呼べるため本体を叩きたい所なのだが、この森の中だと探すのに時間が掛かる。
:このカラス普通に強いんだっけ?
:強いけど、ボコられてるね
:この眷属は人によって強さが変わる。
:配信視聴者50人超えたな。2日で来れはすごい。
:テレビバフだな
感覚を研ぎ澄まし、森の中を進む。
進むにつれ何度も眷属の襲撃に合うが、その方向はバラバラ。倒されるたびに召喚しているとして、こうもバラバラだと魔女が場所を移動している可能性が高い。
魔女装備の杖は飛行能力があり、魔女はそれに乗って移動するからだ。
:魔女まだー?
:ここの階層だけ戻りのゲートがあるから、逃げれはする。
:襲撃頻度がヤバいな。こりゃあソロを制限されますわ
:なお、敵の攻撃にダメージを受けていないもよう
敵の攻撃を何度か受けるが、そこまでのダメージは無い。
眷属の強さはDランクの鎌狸くらいだろう。Bランクのハンターならいくら眷属を召喚されても問題なくたおせるだろう。
前の私なら少し危なかったかもしれない。
眷属の後にボスと、連戦になれば不意を突かれて致命傷になる事もある。連戦が苦手なハンターは多く、ソロのハンターは一部を除いて連戦が不利になる。
:今度は全然襲撃されないな
:それフラグ
:回復される前に襲撃、これ基本……あれ?消耗してないぞ
数分前、カラスの眷属を倒してからピタリと襲撃が止む。
まだ魔女の姿は見えない。
襲撃が魔力の無駄だと判断したならいいが……私の甘い予感を裏切り嫌な予感が蔓延する。
私の勘が、ここが危険だと言っている。
いつの間にか、まるで敵に囲まれたかのように危険な気配が漂う。
魔物と戦うときの勘が、すぐにここを襲撃されると言っている。
その勘が当たるように、地面から嫌な予感が増し―――
「まずッ……!?」
―――地面が爆発した。
私は間一髪、空に飛び盾を構えたが、それでも吹き飛ばされて体中をぶつける。
その場に置いておいた撮影機材はバラバラだ。
:ふぁ!?
:ぐぁー目がぁー
:あsdfghjkl
:撮影機材壊れちゃったね
撮影機材は壊れたが、通信機器とマイク、ヘッドフォンに異常はない。
たぶん画面は真っ暗で私の声待ちだろう。
かなりの勢いで飛ばされ木々にぶつかり怪我をしたが、命に別状はない。
すでに回復しつつあり、見た目は血だらけで深刻そうだが問題ない。
「地面が爆発した。私は問題ない」
西:魔女の爆発魔法っすね
:ヤバすぎだろ。どこに仕掛けてるか分からないの?
:たしか小石とかにも仕掛けられる。犯罪者の技能として有名
:上位ダンジョン用の機材っていくらだっけ?
:大丈夫、500万の槍がある
「魔女来た」
爆風で木々が倒れ、爆心地にまるで闘技場のステージができる。
そこに現れたのが空飛ぶ魔女。『孤毒』の魔女である。人型の魔女は杖にまたがり空を浮遊し、黒い膜に覆われている。
爆発の空気が漂う地面、その空気を吸うとレジストした感覚が起きる。
―――毒攻撃だ。
「爆風に毒がある。でも無問題」
:あーね
:毒付与か……あれって爆弾に付与したら爆風にも付与されるんだっけ?
:毒付与は自分にも掛かるけど、魔女は空飛ぶから
すでに展開しているバリア。まるで黒い風が魔女を守るように動いている。
闇の障壁だ。
このシールドはかなり硬く、並大抵の攻撃では傷1つつかない。
私が欲している技能だ。
先に仕掛けてきたのは魔女からだ。
魔女を見たら体が動かなくなり、魔女の上空に巨大な石が出現する。その石は縦横5mくらいの大きさで魔女の魔法で作られた石が動けない私に向かう。
ただの石な訳がない。たぶん爆発が付与された石だ。
今動けるようになっても爆発に巻き込まれさっき以上のダメージになるだろう。
『闇の手』と爆弾石の最悪なコンボだ。
「―――『バルバトス』!」
とっさに盾を出す。
制御できないが召喚されるのは私の前。呼ばれたバルバトスがそのまま石にぶつかり爆発する。
爆発と同時に体の制御が戻り、爆発の煙に身を隠しながら木の後ろに隠れる。
『闇の手』は目視しないと発動できない弱点があるのだ。
木の陰から召喚したバルバトスを見ると、爆発したがダメージを受けた様子はない。
下半身並の大きさの石が爆発したのだ。普通ならもっとダメージを受けたり、倒されてしまう事もあるだろう。だというのに無傷で立つバルバトスは控えめに言って恐怖でしかない。
あれはどうやら私より強いようだ。
巨体のバルバトスは剣を掲げ、爆発のお返しに魔女へ剣を振る。
斬るのではなく叩き潰すように剣の腹で魔女をとらえ……
―――轟音と一瞬の豪風。ダンジョンの地面が揺れた。
その後に見えた光景は魔女のシールドが地面に沈み、剣と接触する部分にヒビが入っていくところだ。
力の拮抗はすぐに崩れ、シールドが壊れる音と地面に消える魔女。
やる事はやったとバルバトスは消えた。
「……ッ」
確認のため。シールドで出来たクレーターに向かう。
その場所は剣に潰され穴ができており、その穴にはドロップアイテムが落ちていた。魔女が倒されたのだ。それも一撃で。
「……なにこれ、怖ッ」
:なになに?
:気が抜けた声
:戦闘終わったん?
:そらそうやろ。秘密兵器やぞ
桐島:くそ、機材が壊れて分かんねえ
「魔女潰れた」
:は?
:はあ?
:何言ってんだおめぇ
:ボスがいくらなんでもこんな短時間で……
「私でも何言ってるかわかんない。今あった事ありのまま話すと、爆弾を防ぐために召喚したバルバトスが剣で魔女を潰した。まるでハエを叩くみたいに叩き潰した。私自身、何を言ってるのか分からない」
:はあぁあ!?
:はいはい
:シールドはどうした?
:う、嘘だろ。嘘だと言ってくれ
「押しつぶされた」
:何それチート?私チート嫌いなんだよね。チート持ってポジショントークしてるんじゃーねーよ
:魔女狩りバルバトス
:ソロでそんな簡単に魔女狩りできるなんてヤバくない?
:バルバトス最強!
:人事ー!早く彼女捕まえて!早く―!
:ドロップアイテム何?
コメントの音声を聞いて、クレーターの中心に落ちているアイテムを拾う。
「魔女杖落ちた」
『孤毒の魔女箒杖』―――お値段なんと3000万円。
魔女武器は完全な女性限定である為、値段は少し低くなっている。ただ、この3000万円はあくまで目安、高いときは10倍になる事もある。
:は?何その豪運?私豪運嫌いなんだよね。
:いきなり魔女シリーズとか……さすがに釣りだろ
:ドロップ運が高いミノ姫だぞ。普通にあり得る。
:見えないからって嘘はダメだぞ
:まじか……萎えた寝る
「今日の配信終わり。バイバイ」
そう言って通信を切り転移ゲートを潜る。
もう考えるのが面倒だ。今日は帰って寝よう。
――――――――――――――――――――
配信が終わり、ため息をつく。
授業を聞かずスマホをいじりながら今の動画の反響を調べる。
開設して数日ですでに50人を超える視聴者がいるのは、単純にすごい事だと思いつつ、自分の努力のおかげだとも少し心で自慢する。
俺、坂本 泰平はグループチャットを開き、今日も親友の宣伝をする。
:今日もライブで動画出してたぜ
すると、すぐに既読が付いていき返信も返ってくる。
:あれって本人なん?
:俺も見てた
:お前ら授業中だろ?何やってんだよ
:顔面レベル高くね?アイドルにも負けねえって
:体も良いな
すぐに話題になったので、他のグループチャットを開きそこでも同じような文面で宣伝する。
:マジヤバくない
:性別変わるってどんな感じなんだろ?
:また男に戻るんかな?
:エッチじゃん
こうやっていくつかのグループチャットで宣伝をしているおかげで、あいつの事はかなり知られるようになった。高校生の情報の発信力は高く、すぐに他の学校にも広まるだろう。
半分以上面白おかしく言うだけで、動画も見ない連中だがそれでも広い情報網は活用できる。
俺なりに親友への手助けだ。
……まあ半分嫌がらせだけど。
◆◇◆◇
俺とあいつ、武蔵 小五郎は同じ中等科からの外部生だ。
都会に住める一部の超金持ちは初等科から入学するが、都会に住めない普通の金持ちは中等科から入学する。金のない受験生は特待生でしか入れず、これがかなり狭い門だ。
俺は金持ちの家で推薦もあり、言うなれば初等科の生徒となんら変わりないと思っている。都会に住んでいる事がステータスだと思っている馬鹿は別だが、金を持っている事は同じなのだ。
そんな中で、数少ない庶民の1人が武蔵小五郎だった。
中等科までは人数が少なく、庶民は全体の20%もいない。
その中でも特に優秀な特待生だったあいつは、入学式以降学校にまったく顔を出さなかった。
当時は所詮庶民の血だとか陰口を言われていたが、理由がハンター活動をしているからだと広まるとそれは悪化した。
野蛮人だなんだと周りが騒がしく、テストだけは出席し成績を残すあいつに周りはますます険悪な雰囲気になった。
だが、1年もすると嫌がらせはピタリとやむ。
中学生の成長期、ハンター活動で日々大きくなる体と威圧感。横に大きくなり、荒事にも慣れた雰囲気を醸し出すあいつに誰も悪口を言わなくなったのだ。
むしろ悪い噂が流れ、話しかけたら殴られるとか目を合わせたら殴られるとか、皆避けるようになったのだ。
それを面白くないと思う奴がいる。
……当時の俺だ。
1年前まで皆で悪口や陰口を言い合っていたのに、急に誰も言わなくなった。カンニングだなんて騒いでいたやつも、庶民は野蛮だって言ってたやつも、不良で喧嘩っ早いって噂してたやつも、みんな手のひらを返してへこへこしていた。
当時反抗期だった俺はそんな奴らを見て鼻で笑った。
情けない奴らだと思った。だから賭け事なんかをしてしまったんだ。
ハンターは命のかける仕事。
あいつがいつ死ぬか、同じような不満を持ってた連中内で賭け事をしていた。
今思えばバカだったのは俺だ。
でも、それに気づけないのが馬鹿な子供ってやつなんだろう。
俺は1年以内に死ぬと思ってそんな賭けをした。
それからだいたい半年くらい何もなく、賭けの事なんて忘れていた。賭けをしていた連中とはそのままつるんでゲーセンとかカラオケで遊ぶ日々。反抗期の連中と馬が合ったのだ。
そんな中学2年の冬、俺が変わるきっかけになった事件が起きる。……いや起こしたのは俺で、加害者の俺に被害者は武蔵小五郎だ。
新年の短期休みで俺は実家に戻って、ぐーたらな生活をしていた。その頃にはもうあいつの事は頭の隅っこで見かけたら睨むくらいの印象だった。
入学してから約2年も同じような生活をしているあいつに、もう誰もとやかく言う奴はいなくなっていた。そもそも2学年になって悪口を言う奴が減ったせいで、話題にもならないのだ。
むしろ俺やつるんでた連中の方が柄が悪く、陰口をたたかれていた。
俺の実家は首都の隣の県で、そこそこの金持ち。
地元では悪い事をしても親が何とかする奔放息子だった。そんな俺には当然学校でつるんでいるような連中に似た子分がおり、休みの間はそいつらを使って悪さをしていた。
そして、俺たちは地元にあったゲートに入った。
……始めは誰も入ろうなんて言わなかったが、俺が無理やり従わせて入ったのだ。猟銃を勝手に持ち出し、子分たちにはうまくいけば金がたくさん手に入るとそそのかした。
―――たぶん、心のどこかでハンターなんて楽な仕事だと思ってたんだろう。
俺の地元に出現したのはDランクのゲートだった。
Dランクのゲート、ダンジョンは雑魚敵ならE~Fで一般人でも強い銃があれば倒せる。……だが、猟銃なんかで倒せるほど弱くはなかった。
俺は初めて手にした猟銃に興奮して、自分が強くなった気になっていたんだ。
そうやって子分たちとゲートに入って、俺は思い知る。
ダンジョンの中がいかに危険で、この中では命がいかに軽いのかを。
俺にとって幸運だったのは、ちょうどこのゲートが攻略を進められていた事だ。
場所と資源の関係でさっさと攻略して閉じる事が決められていた。その攻略のパーティーの荷物持ちとして、武蔵小五郎は自分より上のダンジョンに入っていた。
そして、先に入っていた俺とそのハンター達が合う。
子分を失って冷静でない俺はハンターを見つけて助かると思った。でも、ハンターたちは武器を構え、止まれと言ってくる。冷静でない俺はパニックになり、大声で叫んでしまった。
普通に冷静に考えれば、ハンターたちの行動は当たり前の事だった。
子供がダンジョン内にいる。たまにゲートに興味を持った子供が入る事故は起こる事なのだ。その時の対処法はハンターに委ねられ、場所やダンジョンの内容によって変わる。
そのDランクのダンジョンはフィールド型で、ボスが徘徊しているダンジョンだった。
徘徊していると言っても、奥に進まないとボスには会えないが、ボスが追いかけて来る事もある。最悪な事に、俺と子分たちはボス部屋近くに行き、マーキングされていた。
ハンターたちは気づいていたのだ。
俺の背後にボスがいる事を。
それを知らずに俺は叫んだ。
「助けてくれよッ!ハンターなんだろッ!」
身勝手に頼って、ボスにハンター達の位置を教えてしまった。
次の瞬間には巨大な蜘蛛の化物が、ハンターたちを襲う。奇襲に成功して、何人ものハンターがやられた。
でも、彼らは攻略する為に来たハンター達で、その場はすぐに逆転する。
徐々に追い詰められる化物は、逆転の為に獲物を定める。
狙われたのは俺だった。
家みたいに大きな蜘蛛が紫の血をまき散らして近づいてくる。
それはとても怖く、その場を動けずにいた。逃げない俺に近づく蜘蛛、巨大な前足は鎌のように鋭く、振り下ろされる瞬間、自分の死を悟り目をつぶった。
でも、体に感じる痛みは来ず、目も自分の意思で開けられた。
そして目に映るのは、血を流している武蔵小五郎だった。
その時初めてそいつが武蔵小五郎だと気づいた。
あいつは俺なんかを庇ってお腹に穴をあけたんだ。
貫かれた蜘蛛の足を掴み、逃げられないように固定し言う。
「撃てぇ……ッ!」
それが誰に言った言葉なのか最初は分からなかった。
でも、その気迫に押されて、俺は手に持っていた猟銃を撃った。
バンッ!バンバンッ!
万全な状態の敵なら猟銃では傷1つつかなかっただろう。
Dランク以上の敵は普通の銃弾を弾く。戦車の砲撃でも無傷だった姿を動画で見た事がある。
でも、俺が撃った弾はボスモンスターの顔に直撃し、蜘蛛は怯んで倒れた。
もともとハンターに斬りつけられていた傷に弾が当たったのだ。
その怯んだ隙に1人のハンターが止めを刺し、化物は一瞬でアイテムとなって消えた。
穴を防いでいた敵の足が消え腹に大きな風穴が空いた状態で倒れる武蔵、普通なら助からないような傷を、上級のポーションで何とか重症まで回復する。
上級ポーションを使っても回復しきれない傷。一歩遅れて居たら死んでいたし、攻略後すぐに病院に運ばれた。
病院での治療も、いつ容体が急変するか分からないほど深刻だったが……技能の回復効果ですぐに回復したらしい。3週間で退院し、その日にダンジョンへ向かったと知ったときは心配を超え怒りが湧いたものだ。
俺はあいつが入院している間に、子分たちの親に殴られ、両親に殴られ、あいつの両親や兄弟たちにも殴られたというのに。
まあ、それは俺の責任だから甘んじて受けるが、俺が謝罪しに行ったときの第一声が“誰?”だったからな。俺の事なんて眼中にないとは思っていたが、仮にも同級生で何度も嫌がらせをしていた俺の顔ぐらい覚えているだろう普通?
結局謝罪を受け取ってそれで終わり。
俺は殴られる覚悟だったのに、あいつは興味ないと一貫してさっさとダンジョンに向かった。
―――それから学校が始まるまであいつとは接点がなく、久しぶりの学校でつるんでた奴らに囲まれた。
「お前、賭けの為に小五郎のヤツを撃ったってマジ!?」
「ダンジョンで殺そうとしたんだろ!?凄げぇな!」
「次俺行くわ!」
その話を聞いて一瞬頭が真っ白になり、冷静な俺がこいつらの言葉を理解した。
こいつらの中で、俺は賭けを成功させるためなら何でもする凄い奴になっていたらしい。……なんだそれは?ふざけているのか!?
一瞬の怒りは、またも冷静な俺の心が沈める。
“そうだったな。こんな奴らと同レベルだったんだ”
人の命を賭けにしていた自分、それを冷静な目で他人と重ね嫌悪する。
変わったなんて言っても、過去は変わらない。これが、こいつらが俺だ。
「……ッ」
俺にこいつらをとやかく言う資格はない。偽善ぶって止める事も、やめろなんて言葉も出てこない。
何も言わない俺を見て、不審な顔をする馬鹿共。
俺はどうすればいいのか分からず、下を向いた。そんな俺の横を通り過ぎる風。
「邪魔」
その声は俺の前にいた馬鹿共に浴びせられ、その男は俺の横で止まる。
「武蔵……ッ?!」
その男、武蔵小五郎は前にいたやつらを威圧すると“どけ”と低い声で言う。
その声にビビって馬鹿共は霧散し、そのまま何事も無かったように教室に入っていった。
後から聞いたがどうやら俺が虐められているみたいに見えたらしい。
その時の俺は見られているんだって、自意識過剰にも思った。
俺が変わるのを見ているんだって勝手に思って、それに応えようと無駄な努力とアピールをした。
結果、俺の評判はがらりと変わり多くの同級生と関わるようになった。
そして意を決し、俺が変われたのかを武蔵に聞いた―――
「……誰?」
……そんな返答が返ってきて、むしろ変な笑いが出た。
肩の力も抜け、変に美化されていた武蔵小五郎ってやつのありのままを直視できた。
そうだった。
こんな奴だったな。
◇◆◇◆
それから、なんやかんやあって友達になった。
まあ、一方的な友達宣言だ。
どうせあいつの事だ。
俺の事なんてたまに思いだすくらいで、友達甲斐の無い奴なんだ。
だからいつも小さな嫌がらせをする。
次学校来るときに思い知るといい。たまに思い出すくらいの友達がいかにお前の嫌がる事を熟知しているか。
次からは真っ先に俺に報告してくるくらい思い知らせてやるぜ。