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15,トライデント本部





ダンジョン配信を終えて動画の編集を妹に任せる。

15分の短いライブ配信だったが、すでに登録者が倍になった。

……まぁ、6人なんだけど。


SNSも似たようなもので、たぶん知り合いが登録してくれたんだろう。



ちなみに、ダンジョン攻略前に技能検査を受けようとした。

『発動言語看破』という技能を持った人に依頼する形で見てもらうのだが、看破できなかったそうだ。


聞くとこの技能には階級があるらしく、依頼した人は中級で上級の人にお願いする他無い。

ただ、上級の人はハンター組織に属している事が多く、今のところ手詰まりとなっている。


そんな時にSNSへメッセージが届いた。



桐島:

うちのハンター本部に来い。発動言語を調べてやる。

ただし、情報漏洩は禁止だ。とりあえず契約書を読んで、良いなら連絡をくれ。



成り済ましじゃ無いなら桐島ハンターからだ。

そして、もう1人メッセージを送ってきた相手がいる。



坂本 泰平(さかもと たいへい):

お前、女になったってマジかよ!?とか送ってみたけど、俺の知ってる武蔵でいいよな?



坂本は同級生で数少ない学校で話してくれる1人だ。

……成り済ましじゃ無いなら。


そう言えば伝えてなかったなと思い、電話をかける事にする。

たぶん学校だけどお構いなし。



『……も、もしもし』


「あーオレオレ」


『女声になってる!?つうか、オレオレって……』


「私武蔵よ、キラーン」


『嘘だろ!?なんか人格変わってね?』


「電話画面に名前表示されてるだろ。お前の知る武蔵は誰かに携帯を取られてパスワードまで知られてる間抜けか?」


『そう言われればそうだけど……その声で言われると違和感がすごい』


「あ、TSの事学校に広めといて」


『それは大丈夫。もう広まってるから』


広まっていると言われ数日前の事を思い出す。

そう言えば同級生がSNSに気づいていたな……。


『写真はまだ……お前配信してた?今グループから送られてきたんだけど』


「してた」


『おう、そうか……おう。普通に可愛いな。もっとゴリラを想像したわ』


もう写真が出回ってるらしい。

ライブでしか配信してないから、SNSの告知を見て授業中に録画してた人でもいたんだろう。


―――どうせ面白おかしく、話のネタにでもなってるのだろう。



報告も終わったしとりあえず切る。

まだ桐島ハンターにも返事をしていないのだ。


桐島ハンターへの返事は当然OK。

規約を話してからになるけど、技能が十全に使えないでは話にならない。


さっき魔物を瞬殺しただろってのは無し。

切札が無い状態で戦ってるようなものだ。もし勝てない相手だったなら死んでもいてもおかしくない。


なら低いレベルでとも考えたが、その場合はDランク以下は人が多くて行きたくない。

ここ数日で分かったが女に声を掛ける男は思いのほか多いのだ。ダンジョンならなおさらだろう。


もし危険なダンジョンで女性1人だけだったら声を掛けるだろ?そういうモノだ。


それにダンジョン内には時にイレギュラーが発生する。本来のランク以上の敵、特殊個体などが極まれに生まれるのだ。

その点、さっきのダンジョンは魔物が強化されているが特殊個体は現れない。敵も決まっていて、倒されていたらその日は復活しない。


もし倒されていたら、1層で武器の具合を調べるだけのつもりだった。



戦ってみた感想としては、ボス以外なら問題ない。

ただ、3層目はゴーレムがボスで、土があるフィールドでは仲間を作るのだ。本体を倒すのに時間が掛かるだろうし、倒すのを諦めて帰ったのである。

ちなみに4層目はマジシャン・リッチ、5層目がナイト・リッチだ。


4層目の敵も空を飛ぶので、3層4層をクリアするためにも金剛明王がいるといいのだが、召喚できないので仕方ない。

召喚できていたらスカイビーも楽に倒せたのに。



桐島ハンターに返信を送ったところ、すぐに日程の話になった。


まだ学校の書類ができておらず今週いっぱいは学校に行けない。

なので今週か、その次の土日にと送る。



桐島:

今日来い。俺もそいつも暇じゃねえの


武蔵:

いいけど、トライデントの本部?


桐島:

本部だ。遅くなってもいいけど、今日中な



と言う事で行くことになった。



ドロップ品はハンター協会で換金し、いったん家に帰る事にする。

流石に初心者防具でトライデントの本部に入るのは馬鹿だ。絡まれるのは御免である。


ちなみにハンターカードはすでに更新され、名前も性別も変更されている。書類一枚とハンターカード、TSポーションの入手経路を書くだけでその日のうちに再発行してくれた。

他のもこれくらい簡単に手続きが終わればいいのに。





――――――――――――――――――――





別にフラグを立てたかった訳ではないのだが……。



「ここはガキが来るところじゃねえ。帰りな」


トライデントの本部でハンター3人に囲まれる私。

警備員のハンターだ。


有名なハンターが居るとファンとパパラッチが入って来るらしい。その対策にハンターを立てるのだが、見事に引っかかった訳である。

まさか、こんな罠があっただなんて。


これならハンターの格好でハンターカードを提示した方が良かった。


「私ハンターです。ほら、これがカード」


「……Bランク?そんな恰好で何しに来たんだ?」


私服の私を見て首をかしげる男。

ハンターがハンター組織に来る場合はほとんど防具を付けてくるからだ。


「知り合いにお願いして技能言語を調べに来たんです。話は通ってませんか?」


「少し待て。確認する。……動くなよ。あとカメラを出すのは禁止だ。お前ら見張っとけ」


囲まれたけど、話の分かる人で良かった。

待つこと数分、受け付けと話していた男にエレベーターから降りてきた男が話しかけ私の方を指さす。


降りてきた男、西ハンターが私を見つけて手を振る。


「ごめんごめん。待たせちゃったすね。さ、行こうか武蔵ちゃん」


「触ったらセクハラで訴えます」


「え、怖いっす」


馴れ馴れしく話しかけてきたので牽制する。

こういう軽い男は女性に対しても遠慮しない。紳士とはかけ離れた陽キャなのである。


「なんか性格変わったっすか?」


「男女の距離は重要です。馴れ馴れしく触らないよう気をつけてください。それからちゃん付けも止めてください」


「うす。了解っす」


これから会う人を待たせているようなのですぐに移動する。

警備員のハンターに一礼し、西ハンターと一緒にエレベーターに乗る。目指す階は最上階のようだ。



「そう言えば桐島ハンターは来られないんですね」


「なになに、明人さんに惚れちゃったすか?うんうん分かる。俺も明人さんに憧れてここに来たっすからね」


「違います。ただ呼んだ本人が居なかったので」


「明人さんは次の攻略準備に忙しいから来れないっす」


そう言えばそんな話を聞いた気がする。

たしか、Aランクゲートの攻略に行くとか。


Sランクゲートがこれまで攻略できていない為、実質攻略可能な最高ランクはAランクゲートとなる。

Aランクゲートは氾濫まで10年の猶予があるとはいえ、すでに氾濫間近のゲートも多くある。日本でも琵琶湖に出現した『湖のダンジョン』が氾濫間近となっている。

その攻略に名乗りを上げたのがトライデントだ。


このダンジョンは過去3度の攻略に失敗している危険なダンジョンだ。



「なら契約について簡単に教えてくれる?桐島ハンターに聞くつもりだったの。ちなみにトライデントには入らないから」


「明人さん説明してないんすか……。まあ、簡単に言うと3つの事を守ってくれれば大丈夫っす。1つは技能を鑑定する人の情報を漏らさない事。2つ目は技能強化が特殊個体な事を話さない事。3つ目は強化技能について明確に話さない事っす。2つ目と3つ目はまぁ……先日のテレビで噂が回ってるし、使うと一部バレるので仕方ないっすけど」


「なら1つ目だけ守ればいいの?」


「明言しなければ問題ないっす」


どうやら技能所持者の情報以外は特に問題ないらしい。

まあ、2つ目についてはもともと噂がされているし、3つ目も含め、今日配信して洩れているから問題ないとしてくれているのかもしれないけど。


「そう。契約書はちゃんと読むわ。Bランクなのに私の案内を頼まれるなんて申し訳ないわね」


「主力が行って当分攻略に行かないんでこういう雑用を頼まれたって感じっす。まあ、ある程度事情を知ってて説明役も任されたんでしょうけど」


「なに、誘ってほしいの?チラチラ見ないでよ」


「女の子の声だから辛辣な言葉が心に痛いっす……」



雑談をしている内に最上階の17階に着く。


「到着したわね」


「無視っすか」


西ハンターの言葉を無視し、エレベーターを降りる。

ガラスの壁が道を作り、部屋の中が見えるが誰もいない。最上階で人がいないなんて人払いをしたのか、もともと人を置いていないのか……。

部屋があるのに勿体ないと思う。


「どこに向かえばいいのかしら?」


「そこっすよ」


ガラス張りの部屋を見ても人が居ない為どこに行けばいいか聞くと、西ハンターが目の前の大きな扉を指さす。

その扉の上には社長室と看板が掲げられており……。


「社長室で調べるのね」


「鑑定者が社長っす」


「それを先に言いなさいよ」


私の言葉は届かず、気軽に扉をノックして開ける。

そこには髪をオールバックにしてタバコを噛む、熊のような男が居た。眼光が鋭く睨みつけるようにこちらを見る。


「ノックしたら返事するまで待てって何度言ったら分かるんだこのドアホ!」


「パワハラ反対っす!」


「常識だボケ!」


まるでヤクザの親玉みたいな男とチンピラのやり取りに、唖然としている私。そんな私に構わず急に始まった説教と換気。

どうやら未成年に配慮してくれたらしい。


扉が閉まり15分ほどたった頃、西ハンターが出てきて入室の許可が下りた。

怒鳴り声が外まで響いていたのでかなり怒られたと思うが、その本人である西ハンターはケロッとしていて私と入れ替わる形でエレベーターの方へ向かった。


鼻歌交じりにスキップする姿は、あいつどんな神経してるんだと恐れを抱くほどだ。


上位のハンターは精神が壊れているというが、なるほどと見せつけられる気分だった。





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