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13,学校案内……騙された!





生徒会長に呼ばれ2人で……なぜか佐藤さんがついて来たので3人で空き教室に入る。



「急にお呼びしてごめんなさい。少し話したい事があったの」


「その話、私も聞いて良いのかな?」


「ご心配なく。佐藤さんが思っているような事はありませんので」


「なんだ。楽しいイベントが見れると付いて来たのに」


残念そうに言いながら、結局部屋から出る様子はいない。

それを見て東岡さんは佐藤さんに耳打ちをするが……。


「……これは武蔵さん個人の―――」


「武蔵小五郎くんの事好きなの?」


「な、何の事ですか?」


「目逸らしたらダメだよ。認めたようなものだから……ふふふ、可愛い後輩を持つとついイジメたくなる」


「……本当に違いますから」



―――と言うやり取りを小声で聞かされる私。

技能で五感が強化されているから小声でも十分聞こえるんだよね。


「ふーん、彼がこんな美人にね」


「もう行ってください。今日は事情を……」


「今日は、ね。……ふふふ、じゃあ戻るよ。もう一人可愛い後輩が待ってるんだ」


話の流れ的に2人とも私が小五郎って知ってるようだ。

……東岡さんにはバレてる気はしたけど、佐藤さんにもバレるとは……。


たぶん男として過ごしてきた時間が男臭さに繋がったのだろう。

これからは何気ない仕草にも気をつけないと。


「……お待たせしたわね。彼女は前生徒会の書記をしていたの」


「へーそうなんですね」


「彼女の事は置いておいて、まず武蔵さん……いえ、武蔵くんの事情を聞きに来ました。……TSポーションで合ってますか?」


「はい。合ってます」


もう話すしかない……と言う事でジェンダー症なのは言わず、ダンジョンの報酬でTSポーションが手に入り、使った事を話す。

事情を話しているとき、ふと先ほどの会話を思い出したので聞いてみる。


「そう言えば佐藤さんが言ってた私の事好きって」


「あれは勘違いです!気にしないでください。いいですね?」


「あ、はい」


有無を言わせない迫力に押され、とりあえず事情を話し終わる。

一応は納得してくれたけど、何か不満そうな顔で睨んでくる。


「事情が事情ですし、仕方が無い事とは言え埋め合わせが必要だと思うのですがどうでしょう?」


「はい。がんばって―――」


「では!今度の休みを一日私にください。それで許します」


「―――働き……え?」





◇◆◇◆





「……と言う事で解散になった」


「ほう、彼女にしては大胆な提案だ」


「え?ええ?えぇ?」


クッキーを食べながら佐藤さんがいなくなった後の話をする。


……うん、我ながら素晴らしいできだ。


解散した後に東岡さんが勧めたお菓子を購入し、妹のお土産にしてご機嫌取り。

困惑した顔の妹もこれで機嫌が直るはず。


「なんでそうなるの!?」


「え、気に入らなかった?」


「そうじゃないよ!ああもう」


「私は気に入ったよ。君たち二人をね」


どうやらお土産に買ってきたお菓子は気に入らなかったらしい。手を付ける様子が無い。

いや、これは体重を気にしてるのかな?


「そうだ、この後は私が案内役を務めよう。これでも私の顔は広い。一般人お断りの場所でも入れるよ」


「おー」


「お姉ちゃん騙されたらダメだよ。何か裏があるから」


「いやいや、騙すなんて考えてないよ。ちょっと知り合いの所に行くだけさ」



そう言って先導する佐藤さん。トワは嫌がっていたが断っても付いてきて案内するので、結局佐藤さんに先導してもらう事となった。


案内を買って出ただけあって、私よりも学校の事を良く知っている。

それに知り合いの所は顔パスで入場でき、景品や商品を無料でくれる所もある。本当に顔が広かったようだ。



「まあ賄賂みたいなものだね」


「賄賂って……」


「言い方は悪いが、彼らは私の顔色を窺っているのさ」


と、そんな風に言っていた。

たぶん上流階級だとこういった事がよくあるのだろう。



「―――さあ着いたよ。ここが一般人お断りのサロン『ロイヤル・マルガリテス』さ」


「……本当に連れてこられるとは思ってなかった」


「私何も知らないんだけど、ここってどんなところなの?」


「簡単に言うと、会員制のサロンだね。この会員と言うだけで一種のステータスであり、上流階級では一目置かれる。……本来会員ではない者は入れないが、私はここの前副会長でね。知人を連れてくる事も許されている」



『ロイヤル・マルガリテス』

それはこの学園の部活の1つでありながら、会員制で3つの条件が存在する。

1つ、一定額の献金。このお金のほとんどがこのサロンで使われる。

2つ、推薦者がいる事。

3つ、初等科から在籍している事。

この3つの条件をクリアして選ばれるのがロイヤル会員で、いわば上流階級の中から選ばれた精鋭である。


当然家具一つとっても高級品。

外と中で雰囲気がガラリと変わり、まるで城の中に入ったような感覚を覚える。ここの備品1つでいったいいくらするのだろうか……。


その前副会長を務めたという佐藤さん、普通に東岡さんレベルの雲の上の人間である。


ヤバい人に目を付けられたと、思わず顔を背けてしまう。

それをニヤニヤと眺める彼女は唐突に告げる。


「そろそろお茶会の時間だ。君たちも参加するといい」


「お茶会?」


「ああ、マダムたちも参加するロイヤル・サロンさ。一応、ここも部活だからね。参加状が必要だが、ちょうど渡していない参加状がある。ここに君たちの名前を書けば完成だ」


「えっ……?無理!ムリムリムリッ!」


「私も断る。もうマダムはいい」


マダムの話を聞くだけで、どれほど心労が溜まるか。

ダンジョン攻略の方が簡単まである。


「ふふふ、君たちが断ると思ってある者を用意した。さあ、出てきてくれたまえ現副会長」


「……さっきぶりですね武蔵くん」


佐藤さんに呼ばれ現副会長、東岡さんが現れる。

いつの間に打ち合わせをしていたか知らないが、間違いなくグルである。しかもサロンの扉は閉められており、扉の前には佐藤さんがいる。

ムリに押し通る事もできるが、なんとなく嫌な予感がするのでできない。


具体的に言うと、大げさに押されたふりをして倒れるとか、怪我をするとか。

私の罪悪感を利用されそう。


「という事で私と東岡くんの頼みだ。断らないよね?ああ、安心してほしい。マダムも参加するとは言ったが、私たちは別の席で会話しよう。さっきも言ったが、君たちの事が気に入ってね。もっと話を聞きたいと思ったんだ」


「案内役を買って出るなんておかしいと思ったよ!」


「……嵌められた」


「嵌めるなんて心外な。別に断ってくれてもいいんだよ。あとで埋め合わせさえしてくれれば」


と条件を提示してくるが、埋め合わせの方が怖い。


マダム達とは別の席だと信じて、彼女達と一緒にお茶会に参加するか、逃げるか……。

この2択しか無いなら、私は前者を選ぶ。


ただ、トワが参加するかどうか……。

ここは言わばエリート上流階級の溜まり場。そこに外部の人間が居るだけでも目立つし、受験に影響したらと思うとトワだけでも返した方がいい気がする。


受験生の数が増えた現代、面接の点数がかなり重要になる。

受験人数が増えて高得点の同点が横並びになっている為である。

流石にボーダーより低い子は選ばれないが、逆に面接結果次第でボーダーギリギリでも合格する事があるのだ。


面接官は礼儀作法に厳しく、上流階級とも繋がりを持っている。

つまり、マダムに睨まれると厳しく採点されるという事だ。


「君の懸念も分かるよ。だが、その心配は無用だ。私達と居るだけでむしろステータスになる。こういっては何だが、向こうから媚びてくる」


「それで受かっても、なんだか裏口入学みたいで」


「そもそもボーダーの点数が取れているなら誰でもいいんだよ。それこそ君みたいな面接でハンターになるって言う奴を合格にするくらいには」


そう言えば面接のときに受験理由を聞かれて、そんなこと言ったな……。

でも、あの頃はハンターかっこいいって思ってたし、私たち世代の認識ではヒーローだからね。仕方ないよ。


ちなみに面接でハンターになりたいは、完全に減点項目だったりする。


ただまあ、小学生のハンターになりたいは英雄願望かなんかだと思われたのだろう。

普通に合格して中学生からハンターになれた。


まあ中学生からハンターになれると言っても、学校側からしたらリスクがあるので非推奨だろう。

そもそも親が反対すると考えて客寄せと政治の為の制度だったのだから、


「君も兄の学校生活の話を聞きたくないかい?と言っても話すのは彼女なんだけど。兄の色恋なんてどうだろう?」


「聞きたいです!」


「こら、懐柔されない」


「そうかそうか。それなら君からも彼の話を聞きたいな」


トワが懐柔された事で、とんとん拍子に私の参加も決まった。

3人が席に座り、私だけ棒立ちである。



―――あれ?妹にも裏切られてないかこれ……。







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