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9,お風呂回


後書き増やしました。






同級生の会話で不機嫌になった妹だが、その後の買い物で機嫌は戻った。

1000円のアイスで機嫌が直るなんて安い妹である。


服以外にも必要な物を買い集め、全部アイテムバックに仕舞う。大量の買い物をするときは便利である。

ちなみに、アイテムバックの持ち込みは制限されており、店に入るときは店員に渡す事が原則となっている。渡さない場合、アイテムバックを使用した事がバレたら盗みなどの行為が無くても罰金になる。


他国では禁止のところもあるが、日本は銃社会じゃないので少し緩く規制されている。

海外に行く場合はアイテムバックを持っていくと捕まるので注意しよう。





買い物を終え家に帰る。

外食後は同級生と会う事もなく、妹も楽しそうに手を繋いで帰ってきた。



「日曜の学校説明会、私もボランティアで参加する予定なんだけど誘われた相手にTSの事伝えるべきかな?」


「それは伝えた方がいいんじゃない?お兄の労働力目当てで誘ったんだろうし」


「いや、ぶっちゃけ力だけなら前と変わらないんだよね」


「そうなの?」


むしろ強くなってる気がした。

最初はてっきりTSの影響で感覚のズレが原因だと思っていたんだけど、それ以外にも原因がありそうなのだ。


簡単に言うと力の制御。

ハンター活動をしていると、技能を覚えた後とかにするコントロール訓練。その前によく起こる力の制御ミス。

これによく似た症状なのだ。


力の制御ミスとは、例えばガラスコップを落とさないように握ったら割れたとかそんな感じ。

コントロール訓練をするか、時間が経てば無意識に慣れて普通に生活できるんだけど、今日の外食の時に力の制御ができていない事に気づいた。


それからと言うもの、物に触れるのが怖くて妹に迷惑をかけまくっている。


原因はおそらくアレだろう。

―――技能の強化。


「……てな訳でして、明日一日はコントロール訓練をしようと考えております。つきましては今日の一日はお手伝いをお願いします」


「了解。書類とかも私が代筆するね」


「お願いします。あ、お風呂も手伝って」


「バイト代」


「日給3万」


「ふふ、なんかヤバい仕事みたい」





――――――――――――――――――――





妹と一緒にお風呂の時間です。



私は全裸、妹は水着。


……あれぇ?


「私も水着着たい」


「一人で着れるようになったらね」


試着の時に裸見られてるけど、家族でも恥ずかしいんだからね!


そこそこ広い浴室は2人で使っても狭く感じない。

妹に全身を触られ、もはや私に羞恥という言葉は存在しない。むしろ悟りを開いたような境地である。



「お姉に聞きたい事あったんだけど、内部生と外部生ってどう違うの?」


「違いは特に無いよ。教室も同じだし、勉強の内容も同じ。あーでも、内部生はお金持ちとか有名人が多いかな。中等部からの外部生もお金持ちが多いよ。高等部からは普通の生徒の比率が多くなるかな」


同級生の会話で気になった事を聞いたのだろう。

同じ人間なんだから気にしなくていいと思うんだけど。


内部生とは初等部から内部進学をしている生徒を指す。ゲートが現れ世界の平和はいつ崩れるか分からないモノとなっている。

日本の戦力もまた全地域に均等に分ける事はできず、自然と都市部に集中するようになった。その為お金持ちが安全を買うために引っ越す、あるいは子供を都市部に進学させる親がいる。


そういったお金持ちをターゲットにした学園が私立東立岡学園なのだ。


今や都市部の土地は金を積んでも買えない黄金となってしまっている。

それに対し地方の土地は暴落し、地方経済は救済無くして回らないところもある。当然私の住むマンションも家賃は高く、両親には負担をかけた。



次に外部生だが、これは中等部と高等部で大きく変わる。

中等部からの入学生は半分が推薦による金持ちの生徒、半分が試験による実力者だ。ちなみに倍率は200倍以上という狭き門となっている。

これに受かっても高い入学金があり、中等部からの入学組も金持ちと捉えられがちだ。

それに対し高等部からの入学組は完全な実力で入学してきた生徒しかおらず実力が高い。倍率は15倍ほどだが、高等部からは寮があり入学金も他の高校より少し高い程度で済む。


これらの違いにより内部生と外部生で衝突が起こるのだが、そんな騒ぎを起こす奴なんてほとんどいない。

そもそも住む世界が違うのだと早々に気づくはずだ。


「まあ内部生から絡む事なんて無いから、気にしなくていいと思うよ」


「ふーん」


「そういうのは受かってからね。受かったら1年あるし、その都度教えるよ」


「了解」


内部生の特に金持ちが集まるクラブがあるけど、まあ気にする必要は無いよね。悪い噂も聞かないし、近寄らなければ相手も絡んでくる事は無いだろう。

そのクラブの筆頭とも言えるのが生徒会長で、完全に学園を支配していると言える。


「……やっぱ学校説明会は行かないとな」


まだ2日あるし妹も手伝ってくれる。

書類も明日には終わるだろう。


それらを提出して、女性用の制服は流石に間に合わないだろうから男性の制服を袖合わせして、あとは……。


「すること多いなぁ……春休みにすればよかった」


「ほんとそれだよ。私が帰った後に1人で生きていけるか心配」


妹に心配される姉。

もはや姉としての威厳は皆無である。


「お姉ちゃん頑張るからね」



お風呂につかり、妹はスマホをいじる。


「……そういえば、オークションがトレンドに入ってるよ。ミノタウロスのアイテムがいっぱいだって。お姉の倒したやつ?」


「私はほとんど倒してないよ。火力不足だった」


「へー、まだ落札始まってないのに凄い賑わいだね」


「数が数だからね」


普通のBランクゲートではBランクの魔物がそこまで多く出る事は無い。種類もバラバラで素材もまとまって手に入る事は少ない。

いくら複製の特性を持つミノタウロスでも、今回は特別多くドロップした事で値段も上がっているのだ。

例えば武器防具の4セット。これらがいっきに集まる事は少なく、それぞれ別々で買うと高くなる。今回は多くドロップした事でそれぞれの値段が抑えられ、必然的にオークションだが安く手に入れられるだろう。


そして、今回の目玉商品の数々はダンジョンの商品を扱うオークションでも稀にみる多さと言える。

目玉商品なんて1つあれば客が集まるのに、それが複数ある今回のオークションは話題性が高い。


「おかげで報酬も増えたよ。なんと現金1億円だって」


「うん……すごいんだけど、ダイヤモンドがもっと凄いから感覚マヒしてるよ」


「Cランクハンターを1年雇うのにだいたい1億円かな」


「それって……どのくらい凄いの?」


まあハンターじゃなきゃ伝わらないよね。


企業と契約するCランクハンターは年収1億前後だ。

この1億は多いように見えて少ない。契約の内容次第だが、ドロップアイテムを安く企業に売るため、普通に活動していた方が儲けられる可能性がある。

もちろん安全面や安定性と言う意味では企業に所属するのは正解だが、ブラックな企業だとこの二つも怪しいところはある。


それでも、1億と言うのはCランクハンターにとって魅力的な額であり、飛びつくハンターは多い。


「一般人の感覚で言えばプロになりたての選手が稼ぐ額かな?つまりハンターはCランクからプロと呼べる」


「Bランクのお姉からしたら……?」


「お姉ちゃんはまだBランクなりたてだからね。まあBランクのハンターにとっては1回で稼げるならそこそこ高いけど、今回のダンジョンに見合った追加報酬では無いね」


企業側も契約していたハンターを失ってるだろうし、立て直しにお金が必要な事は分かる。でも、追加報酬をケチったと思われたら企業側に悪いイメージが付くのは仕方がない。


普通なら1億も貰えるのスゲーってなるけど、Bランクハンターからすれば命の対価に合わない金額だ。

これからあの企業がハンターを募集しても、Bランクのハンターが集まるかどうか……。


「経営難からブラックに走らなければいいけど……。まあ大きい企業だから心配いらないか」


「もしかして誘われたの?」


「……誘われたけど断ったよ。広告塔になるつもりは無いし」


「あはは、お兄に広告塔は無理だよ。まあ今なら絵になると思うけど」


妹がそんな事を言ってるが、私は知っている。

妹が集めているポスターの半分は筋肉マッチョのハンターだって事を。


さっきもやたら私の腹筋を触ってきたしね。


TSして体は小さくなっても筋肉が無くなる事は無かった。

ゴリマッチョから細マッチョくらいの筋肉量になっているが、女性にしては多い筋肉量だろう。


「絵になるか?」


「うん、めっちゃ美人だし胸大きいし筋肉あるし、きっと女性にモテる。いっそダンジョン配信者になったら?」


「配信者か……」


ダンジョン配信者は今回のようなテレビ企画を個人で配信する動画投稿者の事だ。

生配信は禁止されているが、ダンジョンアタックの他にもいろいろなコンテンツがある。


協会が管理するダンジョンでよく見かけるが、あまりいいイメージは無い。

特にひと昔前に炎上系と呼ばれる部類の配信者が現れ、ゲートのコアを壊す事件もあった。危険なダンジョンならコアを壊すのが普通だが、壊したダンジョンは協会に管理されているGランクのゲート。

この事件の後、ダンジョン法で管理ダンジョンのコアを破壊すると罰則が課せられる事となった。


そのハンターが未成年であったため、未成年ハンターの再講習なんかが課せられたりして、私にも迷惑が掛かっている。


つまりあまりいいイメージは無いのだが……。


「考えとく」


……別に褒められてその気になった訳じゃないから。






学校見学について


『今の世界の高校について』



1,戦力不均一による安全性の違い。

2,大氾濫による一時的な子供世代の不足

3,人口爆発によるリソース不足


今の高校形態はこの3つにより説明されます。


まず戦力不均一による安全性の違いについて。

ゲートが出現する今の世界では、Gランクのダンジョンでも一般人からしたら危険なダンジョンです。簡単に説明すると、Gランクは数匹の狼が、Fランクは数十匹の狼が群れます。Eランクからは数歩歩くとヒグマに襲われる感じです。

地方では特に、ゲートの発見に遅れて氾濫が起きると甚大な被害がでます。理由はハンターの不足。首都には多くのハンターが居ますが地方には少なく、また国の戦力も均等に分配できません。

都会と地方では安全性に違いがありその結果、地方の土地は価値が下がり、都会の土地は値上がりする一方です。

これがどう現代の高校形態に関係するかについて、高校も運営されています。2つ目の大氾濫による一時的な子供世代の不足、これは親世代に安全性を重視するきっかけも与えました。

大切な子供を安全な場所で暮らせるように、都会の高校は昔の何十倍も倍率が高くなっています。

では、地方の入学者が少ない高校はどうなるでしょう?結論から言うなら合併で廃校、運営難から取り潰しになる高校が増え、数が減っていくのです。

これがだいたい10年続き、地方では高校の数が減少しました。


そして、波のように沈んだ人口が爆発的に伸びる第三世代、ベビーラッシュによって生まれた第三世代の子供たちは数の減った高校数から溢れる事になった。

これが3つ目のリソース不足である。


この3つの段階で今の受験生は溢れ、高等教育を受けられない子供が溢れています。

新しい高校を建てるにも、都会の土地は高く、地方では人は集まるが安全性に欠ける。これらの要因が今の受験難関期と呼ばれる要因になっています。


それは受験だけでなく学校見学や受験時期にも影響します。

あまりにも受験生が多い高校では学校見学を認可制にしており、一部の生徒は学校見学を一度もできない事があります。

これは受験でも大きな影響があり―――――――





……と言う事で、この時期に学校見学をするいい訳。



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