挫折ヶ丘の人びと
永い人生挫折は付き物
挫折無くして人生運ばない
挫折を経験しない人なんて一握りいや
一摘みの割合だろう
みんな挫折を経験する
勉学での挫折
恋愛での挫折
人生での挫折
そんな挫折した人を迎え癒やし社会へ
送り返してくれる街がある
その名も挫折ヶ丘
人は挫折した時、自然とその街へ足が向かう
何が原因か突き止めるとか、克服トレーニングとか
そんなプログラムは一切存在しない
普通の街で普通に暮らし身も心も回復した際に
一般社会へと帰してくれる自然リハビリテーションみたいな
夢の街だ
その街唯一の定食屋「ごはん」がある。愛嬌も叱咤激励も
板に付いた通称お袋さんの作る定食は至って普通
味も値段もみんな普通。これじゃ我が家と変わらない
じゃないかってレベルで普通。そこにこの店の魅力がある
まるで我が家に居る様な
まるで実家に居る様な感覚にさせてくれるその空間は
社会で疲弊した社会人のオアシスそのもの
何時間いたって怒られない。でも人の悪口陰口を
発すればすかさずお袋の雷を喰らう事になる
そんな話誰も聞きたくないと。他のみんなだって
聞きたくない
みんなお袋さんに話をしたくて集まってくる
勉学での悩み、恋愛での悩み、人生での悩み
お袋さんは全てを聞いてくれる
お袋さんは変わらない笑顔で話をしてくれる
みんな一度は涙を流すのが常だ
心に引っ掛かっていた何かや
思い悩んでた何かが涙となり流れる事で気持ちを
落ち着かせ、気分をスッキリさせてくれる
また、おいで
お会計の際に掛けてくれる言葉ひとつとっても
お袋そのもの
挫折も悪い事ばかりじゃない
そんな前向きな気持ちが芽生えた頃にみんな自然と
社会へ戻ってゆく
私もそれを経験した一人だ
そして最近、「ごはん」にしか居ない筈のお袋さんを
街なかで見かけ驚いた
本人か確認したい気持ちをギュッと抑えすれ違った
だって、もしも本人だったり、もしかしたら他人
だったりしたらあの魔法が解けてしまいそうで
怖いじゃない。
人は1人じゃ生きていけないってチョクチョク耳にするけど全くそのとおりだなって時々痛感するのです。
皆誰かに支えられ誰かの支えになってるんだなと。まさに「人」の字そのものじゃないかと。