入学式(小和編)
「ちょっとおそかったかな?」加藤 小和はつぶやいた。
門の前には、もうすでにたくさんの人がいる。
みんなが私のことを見ている気がする。ただの私の自意識過剰かな?
そうだといいんだけど、、、もしかして私変な格好してる?
スマホで持ち物の表をみる。
★入学式の持ち物★~女子~
入学式に学校で使うすべてのものを持ってきてもらいます。忘れ物がないようにしなさい。
衛生用品
・ハンカチ
・ティシュ
・髪ゴム
(・生理用品)
(・日焼け止め)
(・リップ)
(・汗拭きシート)
(・鏡)
(・くし・ブラシ)
・歯磨き粉
・歯磨きのブラシ
服
・制服
・体操服
・私服
・
・
・(省略)
※なお、入学式には制服で出席し、髪は結んでくること
肩に髪が触れる。
その時はじめて気づいた。自分が髪を結んでいないということに…
周りを見渡すと、誰一人髪を結んでいない人はいなかった。
ああ、だからか、みんなからの視線を感じたのは。
みんなは「なんだこいつ」と思っているに違いない。
入学初日にやってしまった。
今すぐ結ばないと、、、
髪ゴム、髪ゴム、、、
バッグの中をあさる。
もしかして忘れた?
もう一度みる。けれど髪ゴムらしきものは見つからない。
どうしよう???
さすがに入学式に髪を結ばずに行くわけにはいかない。
持ち物の欄にはっきりと、「髪は結んでくること」と書いてあったのだから。
誰かに借りようかな?
私は、近くにいた話しかけやすそうな女の子に話しかけた。
「あっ、あのぅ。」
『ん?』
「あの、髪ゴムかしてくれませんか?」
『いいよ。』
その子はすんなりと髪ゴムを貸してくれた。
「ありがとう!」
私がさっきいたところに戻ろうとしたとき、「待って!」と声をかけられた。
『私、奏。
もし同じクラスになったらよろしくね!』
私は恥ずかしくなった。
まさか向こうから話しかけてくれるなんて。
私は、髪ゴムを借りるだけ借りて、自分の名前も名乗らなかった。
未来の私は、どうやって髪ゴムを返すんだろう?
相手の名前も知らないのに、、、
「あっ、う、うん。
わっ、私、加藤小和!
よろしくね!」
『うん。
ねぇ、門が開いたら一緒に、体育館までいかない?』
「もちろん!」
大きな門が開き、巨大な建物が見えた。
これから、私はこの学園で、どんな青春を過ごすのだろう?