【Introduction】
見渡す限り雪に覆われた平原の中で、ハイイロオオカミの群れが休息を取っている。
柔らかな雪の上で1組のカップルが重なるように身を寄せ合う。
互いに脚を絡め合い、鼻を寄せ合う。優しく目を閉じ、ただ相手に身体を預け温もりを分かち合う。
互いの毛皮を舐めあい、甘く噛みつく。抱擁するかのように前足を相手の肩に載せ、相手の胸に顔を埋める。
やがて、群れの子供たちがはしゃぎ出すと大人たちもそれに同調して遊びに興じる。
しかし、しばらく経つと、はしゃぎすぎた子供を制するように大人が唸り声を響かせる。子供はすぐに目を逸らして争いを避けると、やがて群れは落ち着きを取り戻す。
日が暮れ始めると何処からともなく群れの一匹が遠吠えをし、それに共鳴するように遠吠えが重なり合う。
共鳴する遠吠えに何かを感じ取り合うように狼達のハウリングはいつまでも続いてゆく。
狼たちは独自のシグナルを用いてコミュニケーションを取る。
触れ合い、視線を交わらせ(時に交わらせず)、牙を見せ、吠え合い、遠吠えをして、言葉など無くとも人間がする以上に互いを理解し合おうとし、高度な社会性を築き上げていく。
愛が、本質的に野生に潜むことを象徴するかのように。