亜人
誤字報告いただきました、ありがとうございます。
知っている相手―――メルヘイルにて出会ったドラゴンの亜人。
名を、マニュ・レニ。
肘より先がドラゴンの鱗に包まれており、鋭い爪から放たれる一撃は射程など関係なく相手を切り裂く。
「ん〜久しぶりだ」、英雄君」
「今回は逃げないだろうな」
「正真正銘、今回が決着だよ」
マニュと向き合うレイは、静かに剣を抜いた。
炎を纏わせ、魔力を通し、切れ味を増加。
「なんか、変わったねえ」
「そうかよ」
「なんか、つまんない」
言うと、マニュが勢いよく腕を振るった。
飛翔する爪の斬撃―――それに合わせて、レイは駆け出した。
タイミングを見て飛び上がり、足元からの炎噴射で飛行。
爪の斬撃の間をすり抜けて回避すると、勢いよく間合いを詰めて、一撃。
最も容易く、マニュの左腕を切り飛ばした。
「なっ…………私の腕が」
想定外―――以前マニュが見たレイは、魔力回路の移植直後であり、ドラゴンとの対決直後。
つまり、極限まで疲弊した状態だった。
そして今は、ベストコンディション。
以前の力量で考えていると、戦いはそう長引かない。
マニュの背中からドラゴンの羽が生え、羽ばたく。
一度引いて体制を整えようとするが、そうはいかない。
即座に背後へと転移し、マニュの背中を蹴り、体制を崩した所に炎噴射。
炎を使い空中で姿勢を整えると、右手に炎を纏わせて正面へと飛行。
勢いがついた状態で、マニュの背中の焼き傷に、右手の炎を叩き込んだ。
「――――――爆抱」
「なに……それ……」
瞬間、叩き込まれた炎が爆発。
肉を焼き、突き破り、内側から爆ぜた。
肉が焼ける煙と、嫌な匂いが立ち込める。
山野の攻撃で大分減った魔物達が、その匂いに寄ってくるほど。
「さて、あと一体。どこに消えた…………」
●●●●●●
レイがマニュを倒すのとほぼ同時刻、山野は危機に瀕していた。
何故か―――亜人の、襲来である。
ある程度の魔物がやって来る事は想定していたが、亜人レベルの相手をレイ達がみすみす素通りさせるとは思いもしなかった。
「誰っすか、アンタ」
「私…………私はアゼリア。貴方を、食べに来た」
「食べにって、死ぬじゃないですか」
アゼリア、彼女は声が小さく、少し聞き取りにくいものの、確かに敵対と取れる言葉を放った。
山野は銃を作り出して、大地の牙を一度停止―――自身の戦闘体制へと入った。
「僕は山野、貴方を倒します」
言って、銃を向け引き金を引いた。
そして次の瞬間、アゼリアの姿は消えていた。
駆けたわけでも、飛んだわけでもない。
足跡も飛んだ跡も残さず、消え失せたのだ。
山野は警戒しつつ、アゼリアの居た位置を観察。
ゆっくりと近づいた。
「いただきます」
突然、すぐ後ろから耳元に温かい息がかかる。
放たれたのは脳が蕩けてしまいそうな、甘い声―――身を委ねてしまいたくなる、魔性の声だ。
「―――ッッ!」
山野は思わず震えるが、即反応して振り返り発砲。
放たれた銃弾はアゼリアの肌に当たって止まり、傷一つ付けられていない。
「嘘………私の声が、効かない?」
「その手の声は、ASMRで聴き慣れてるんですよ。久しぶりだから震えたけど、一秒も有ればわけない」
「な……なにそれ…………」
アゼリアが涙目になりながら理不尽だという苦情の様な視線を山野へと向ける。
山野は拳銃を捨ててショットガンを―――いくつかの銃を試すつもりだ。
「おかしいな………おかしいな…………」
「なんも、おかしくない!」
叫んで、弾を放つがやはりダメージは皆無。
まるで効いていない。
アゼリアは駆け出した。
一歩一歩地面が抉れ、銃の使用のために取った距離を簡単に詰めて、ダッシュで勢い付いた状態の蹴りを。
銃を盾にした山野だが、それでも弾き飛ばされて、空中で二転三転した。
「ッたく、この世界の人達は!」
空中で腕より少し長い程度の、細いランチャーを作り出して、即放つ。
威力は控えめだが、光は尋常ではない。
放たれた閃光は、山野の影を色濃く地面に焼きつけた。
「なるほどぉ!」
「なに、なに?!」
山野が叫んだ―――アゼリアの身体能力、耐久性の理由に気づいたのだ。
着地と同時に、山野は一つ息を吐く。
「貴女には、影がない―――だから、他のものの影に依存する。それは地上に出来た大地の牙の影でも、僕の背後にできた影にでも。影が無く、影を使い、そして僕を、食べようとした。それなら、貴女の正体は一目瞭然だ」
日の元に出ているので、考えていなかった。
人を惑わせる声と、首筋を狙う影移動。
答えは、決まっている。
「貴女は、吸血鬼の亜人だ」
人の要素に魔物の要素が加わり強化される様に、魔物の要素に人間の要素が加わる事も。
アゼリアは人として、吸血鬼の弱点を克服したのだ。
「弱点を一つ一つ試していく―――流石に漏れなくは、克服してないでしょう」
「や、やめ―――!」
山野は新たに銃を作り出す―――銃身の長い、銀の弾丸を放つ銃だ。
焦って走り出したアゼリアに向けて銃を構える。
自分へと向かうアゼリアは、必死の形相で、以前の山野なら発砲を躊躇していた。
「これは、戦争だ」
躊躇など、今は出来ない。
だから山野は、自分を鼓舞する様に呟いた。
そして、引き金に指を掛けて引こうとした瞬間、アゼリアは倒れた。
未だ発砲していない―――転ぶ様に、突然全身の力が抜けた様に倒れ込んだ。
アゼリアは、命の危機に対する恐怖で、気絶した。
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