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産まれたあなた

今回は全員読んでいただける内容となっています。

 転移後、ヴァイオレットは魔物に一度も襲われていない。

 しかし、しっかりと敵の気配は感じていた。


 遥か上空、太陽と重なる位置。

 翼腕の魔物、ハーピーだ。



「降りて来なよ、いい加減さ!」



 ヴァイオレットが叫ぶ。

 瞬間―――一つ暴風が吹いた。


 その風に乗ってハーピーは急降下、しなやかながらも、鉄の様に重い羽でヴァイオレットを叩きつけた。

 ヴァイオレットは背後に跳んで、衝撃を殺す。



「ああるえ? お腹、破れてない?」


「残念だけど、魔法はまだまだ残っていてね」


「ふうん…………じゃあ、しっかり殺さなきゃ」



 ヴァイオレットの奪われた魔法は、凡庸性に秀でた物を十六程。

 一時的に未だ使えないものもあるが、既に六十を超える魔法を使用できる様になっていた。



「せいっ!」



 ハーピーが魔法で風を起こし、それに乗って上昇。

 翼を振るい、羽を五本飛ばした。


 ヴァイオレットは地面の土を操り、即座に壁を。

 壁は簡単に砕けるも、ほんの少し出来た時間差でヴァイオレットは羽を回避した。


 砕けた土の壁を伸ばして、巨大な槌の様にハーピーへと。

 だが、ハーピーはそれによって巻き起こされた風に乗って、寸前で回避。


 土の槌の周りを回転しながら進み、再びヴァイオレットを翼で打つ。



「ん……今度は手応えが…………」


「残念、ダミーだよ」



 声が聞こえた―――今しがた翼を打ち付けた物を見るが、そこには砕けた土の塊が。

 土で人型を形成し、魔法で色付けされている。


 芝を伸ばして折り重ね、攻撃のために地上へと近づいて来たハーピーの足に結びつける。



「べふっ!」


「何だい、そのコメディでも聞かない声は」



 足を捕まえられたハーピーは、顔面を地面へと打ち付ける様に落ちた。

 ぐぬぬと、現実では聞かない様な言葉を本当に漏らしてから、ハーピーは風を発して、自身を飛び上がらせた。



「簡単だって、聞いたのに!」



 ハーピーが叫ぶ。

 瞬間―――足に結ばれた草が切断される。

 手も触れず、武器も触れず、突如吹き荒れた、風によって。



「風の刃―――それが君の、人間部分の能力ってわけだね?」


「そうよ…………私はハーピーの亜人アマリリス。体はハーピーに、身体機能として風も起こせる様になったし、この刃も持ったまま。そんな私にこんな惨めな…………もう、絶対許さないんだから!」


「襲って来たのは君だよ……………」



 ハーピー、アマリリスは叫ぶ。

 それを見たヴァイオレットは困り顔だが、対処法が見当たらないわけではなかった。


 風の刃は鋭いが、耐久性は数ある魔法の中でも最低の部類。

 百メートルより先に進めば大気に散り、刃の横から衝撃を与えれば、子供の拳でも破壊できる。


 しかし、速度と視認の不可は脅威である。

 風故に、速度は風速―――それが目には見えず、四方八方から襲いかかるのだ。


 ヴァイオレットは多少の手傷を覚悟して、歩み出した。

 放たれた風の刃を自身の操る風で相殺。

 空中の至る所で、風がぶつかり弾ける音が聞こえる。



「いくら魔法が優れていても、狙いが安直。これくらい目を瞑っていても対応出来るよ」


「なっ…………この優秀な私を、煽ったわね! 絶対に泣かせてやる、泣かせてお腹破ってやる!」



 放たれる風の刃。

 数が増え続け、一つの刃が浅くだが、ヴァイオレットの頬を切り裂いた頃―――アマリリスはとある事に気づく。


 ヴァイオレットの足跡が残る位置の芝が、全て萎れているのだ。

 妙だと思い、少し距離を取ろうと風を起こすが、すぐ様真逆の方向からの強風。

 ヴァイオレットの起こした風によって阻止されてしまった。



「…………この魔法は、強いけど相手を苦しめてしまうからね、本当はあまり使いたくはないんだ」


「やめ、やめろ、何をするつもりだ! この私に、何を!」



 嫌がるアマリリスを、ヴァイオレットが重ねて放った風の檻にて包み込み、動けない様にと。



「私に近づくな、やめてくれ! 頼む、何でもするから!」


「悪いけど、敵の話を信用出来るほど余裕はないんだ。私と会って残念だったと、諦めておくれ」



 言って、ヴァイオレットはアマリリスに触れた。

 現在ヴァイオレットが発動している魔法は、生命力の吸収―――草に触れれば枯れ、生き物に触れれば息絶える。

 自身の持つ魔法の中で、ヴァイオレットが最も嫌う魔法だ。



「嫌だ、死にたくない! まだ産まれたばっかりなんだ! 嫌だ、嫌だ!」


「さようなら、アマリリス」



 アマリリスは自身の力が徐々に吸われていくのを確かに感じ、最後には叫ぶ力も失って、静かに苦しみ生き絶えた。

読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思ってくださった方は、レビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!


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