親友
「…………っクソ」
目覚める―――新設されたテントの電球が放つ光に、覚めたばかりの目が眩む。
「テント………ここは…………」
所々痛む体を動かして簡易ベッドから起き上がって、テントから出る。
すると、破壊される前よりも多くのテントが並んでいた。
その間を、鏡の様に磨かれた鎧を着た兵達が闊歩している。
「ん…………来る戦場間違えた?」
「間違えてないよ―――おはよう、レイ君」
「ロッソさん!」
ロッソが背後から、戸惑うレイの肩を叩く。
それによって、ここが元々自分がいた戦場だと確信。
「いやあ、到着は遅れたけど初日にね。不味いと思って王都に応援要請を送っておいたんだよ」
「そうですか…………それは………」
「君の思ってる通り、遅すぎる。国の対応が遅かっただの言い訳はしない。僕の見通しが杜撰だった。本当に、すまない」
言って、深々と頭を下げる。
レイはそれを止めもはしない。
確かに今回の対応は遅かったと、頭の片隅で思ってしまったから。
「到着した兵達の捜索によって君は見つかったが、ロムニス君は見つからなかった。それもすまないと思っている」
「ロッソさん、それは…………」
言葉を詰まらせるレイに、ロッソが違和感を。
それに気づいたレイは、少しずつ話した。
ロムニスの、真の姿について。
●●●●●●
話を終えると、自身の体には小さな傷があるものの、戦えない程では無いと判断。
即座に戦場へと戻る決意をした。
ロッソ曰く、レイが寝込んでいたのは丸四日。
その期間身の回りの世話をしていた兵達は心配したが、炎噴射で前線まで飛んでいったレイを見て、それが杞憂だったと知る。
四日の睡眠で、体力も魔力も完全回復している。
レイは上空で魔力を集め、手元へ集約。
炎へと変換して、五つに分割。
最奥にてこちらを威圧し続ける巨人へと、一斉に放った。
「まずはお前らだ―――くたばれッ!」
巨大な槍の形となり、真っ直ぐ飛ぶ炎。
全てが頭へと当たった瞬間、凄まじい爆炎を放ち爆発した。
巨人は爆発により頭半分が弾け飛び、轟音を立てながら倒れる。
それによって巻き起こされた土煙の奥に、はっきりと人影が。
「よお、ロムニス。四日も暇させて悪いな!」
「レイ…………やはり逃げはしなかったか」
レイは手に炎を纏わせて、そこからの噴射で身を回転させる
その勢いをつけたまま、ロムニスへ向かい突撃。
ロムニスも手に雷を纏わせ、炎と雷、互いの魔法が、激突した。
「ッ―――なんで騙してた! 応えろ、ロムニス!」
「言ったであろう、命を受けたのだと。己はただ、それを遂行する!」
鍔迫り合いの様になる双方の間に、飛竜が迫る。
レイは手の炎を爆発させて、その勢いでロムニスから一時離れ、間を飛竜が通過。
通り過ぎる瞬間を狙い、手に残る炎を噴き出させて、飛竜を骨の髄まで焼いた。
「なんで潜り込んできた、何で俺と会った!」
着地してから、身を低くして足払い。
ロムニスは足元から磁力を発生させて、背後に浮遊する様回避。
「偵察によって偶然だ。今となっては暁光だがな」
雷光―――レイの顔面真横を、一筋の光が通過した。
浅く頬を切り裂いていったその光は、次の瞬間にはもう二筋。
脇腹と足を浅く切り裂いて、通過して行く。
「騙していたとはいえ楽しかったぞ、レイ」
「ッ…………なら!」
腹を、電撃が通過した。
内臓を痺れさせ、レイの息つく間もなく続く攻撃を止めた。
「総員、下がれ」
ロムニスが言うと、レイの背後より忍び寄っていた魔物が全て動きを止める。
「これより問答は無用―――己はお前を殺したく無いと言ったな、思い上がりだった、訂正しよう」
「じゃあ、どうするつもりだ…………」
「どうもこうもない、決まっていよう。己はお前と、死力を尽くして死合いたい!」
声高らかに、ロムニスは言った。
それにレイは、電撃の痛みも忘れて小さく笑う。
まさか敵に、喜ばされる日が来るとはと。
「じゃあ、これについては答えようと無視しようといい。俺達は、敵同士でも友か」
「当然だ」
それだけ聞ければ、時間経過で四日前、体感で数分前のあの衝撃は、意味を失った。
全快したはずの体力が更にみなぎり、嘘の様に心躍った。
レイは覚悟を決める。
自分を鍛えたのは、今この瞬間のためかもしれない。
ならば、今終わっても良いと。
「炎とは、再生の兆し――――――」
「雷鳴轟き、明日空の快晴を――――――」
互いに、静かに詠唱を始めた。
死力を尽くすのだ、いきなり攻撃しては即興の攻撃しか出来ない。
詠唱中の攻撃など、無粋なことは二人とも考えやしなかった。
「炎とは繁栄の証、炎とは希望の灯し、暗がり暴くは我が涯の御手!」
「全ての天下は我が手中―――世の水は我を伝え、世の空は我を産み落とす糧である!」
「聖火、百景、獄炎―――千の伊吹を妬いては身を焦がし、錬の合間に静閉ざす! 賽は投じられた―――我が身投じ、熱筋を導こう!」
「千景―――見渡す曇天踵を返す。制裁下すは我が矛先!」
同時に詠唱を終える。
炎と雷で再現される、同じような魔法。
レイは発せられる熱で、ロムニスは発生する磁力で浮き上がる。
「超級魔法―――天天羅蘇!」
「超級魔法―――雷光神慧!」
炎を纏い、雷を纏い、地上から見た二人は、二つの星の様に眩く光り輝いていた。
「レイ・イグニス―――お前は俺の、唯一の親友だ」
「ロムニス・ロッチェロ―――お前は己の、唯一の親友だ」
レイは生まれてこの方、魔法の鍛錬ばかりに没頭し、気づけば今まで友人と呼べるものは居なかった。
だから、嬉しかったのだ。
互いに騎士の如く名乗りを上げて、渾身の一撃を放った。
単に自分の炎を、雷を、超高火力で撃ち出すだけの一撃。
「「死合おうか、友よ!」」




