最初の街
さて新章
「少し懐かしいですね、マスター」
「ああ、もう出て二年か」
リルラント、レイとアリスが出会った土地。
辺りにはあまり強い魔物がおらず、なりたての冒険者が多い街。
嘗て側で戦争が起き、一時は戦禍に巻き込まれるかと思われたが、寸前で終戦。
その事から、一部では厄除けの街として扱われる事もある。
レイはヴァイオレット以外を宿へと待たせて、ロッソの元へと向かう。
「来ましたよ、ロッソさん」
「久しぶりだね、レイ。いつぶりか、調子は前ほど悪くなさそうだね」
ロッソ・ベリーニ―――リルラントのギルド支部長であり、レイの炎魔法を預かっていた男。
そして自他共に認める、胡散臭い男だ。
「今日はどうしたんだい? そんな美人さん連れて」
「こいら、俺の師匠です。魔法を奪われたので、見てくださいよ」
「なるほどね、それなら僕が適任だ。いいよ、友達のよしみだ」
言ってはロッソは、ヴァイオレットに対して手を出す様に。
その手を握って、目を瞑った。
ロッソの使う魔法は、貸し借り。
相手の任意の上で魔法を借りて、場合によっては貸し出す。
その際どの様な魔法を持っているのか探るので、ヴァイオレットの魔法が今どの様な状態になっているのか探れると思ったのだ。
しばらく探ると、ロッソは納得した様に頷いて目を開いた。
「君の師匠は、人じゃないね?」
ヴァイオレットは静かに頷く。
少し緊張しているのか、今日は無口だ。
「大方、ハイヒューマンだろう? 珍しいね。残念な事に、失われた魔法は再生しない。でも、失われていない魔法は確かに存在したよ」
あからさまにヴァイオレットの表情が明るくなった。
それを見たロッソは、しかしと言って話を続ける。
「ハイヒューマンの魔力回路は面白くてね、通常人が肩から肘にまで伸びる筈のものが、脳から全身へと広がってる。そしてその魔力回路の先に、ジャガイモの根の先みたいに魔法の根源、魔法因子が繋がってるんだよ。今の貴方の状態は、それを幾つか、無理矢理引き千切られた状態。それに連れて、周りも傷ついて一時的に機能停止していると言うのが正しいだろう」
「それじゃあ、私のまほあは…………」
「まあ、半年もあれば全快とまでは行かなくとも、戦闘可能にまでは戻ると思うよ」
半年―――普段ならばヴァイオレットが自堕落に過ごせばあっという間に流れる時間だが、今は少し、長く感じた。
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「と、言う事で―――これから当分の私は魔力タンクになるから、消費したら教えておくれ!」
宿に戻って聞いた話を伝え終わると、ヴァイオレットが言った。
「どうやら、もう平気そうですねマスター」
「そうだね、良かったよ」
小さな声で二人は話す。
ヴァイオレットの事は見ずに、二人で窓から外を見ながら。
「二年ですか―――この街はあまり変わりませんね」
「そうかな? 新しく店とか出来てるけど…………やっぱり、千年の変化を知ってる人は違うなあ」
「あれは驚きました。千年経つと、海が透き通っているんですから」
「千年前でも、血みどろの海は正常じゃないと思うよ?」
最初にこの宿に二人で泊まったときでは出来なかったであろう、気の抜けた会話をしながら辺りを見渡す。
「明日、二人であのダンジョンに行ってみようか」
「いいですね、念のため話を通しておきましょう」
今日は日が暮れ始めて、宿を出るには少し遅い。
明日の予定を簡単に決めて、早めに眠りについた。
そして夜の内―――レイが泊まる部屋に一人、来訪客が現れた。
学業が忙しくなりますので、不定期更新にして、中身を多くするor毎日更新を続けるけど少し中身少なめ。
しばらくはこのどちらかになると思います。
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