閑話 いつかの休み
PV一万達成しました!
しがない学生の話をここまで、ありがとうございます!
アリスがレイの居る島へと向かう少し前、息抜きに復興した街に出ようとヴァイオレットが言い出した。
街の復興は、元々が様々な職人と集まる国だったからか、街を破壊した木があったので、素材には困らなかったからか、あまり時間がかからなかった。
職人の損失を恐れた各国からの支援もあって、資金も困る事は無く、むしろ手伝いに来た人々を受け入れるために道は広くなり、通りには幾つかの店が。
今までの職人作業のみに特化した街から、工芸品の売買をその場で行ったり、少し疲れたら喫茶店に入れるような、旅行客の訪れやすい街へと変貌したのだ。
「いやあ、少し見ただけでも大分違うね」
「そうですね―――通りの脇に薬屋も発見したので、後で行ってみたいです!」
「アルス様は普段魔法をお使いになられますが、薬もお使いに?」
「世界には病気を魔法で治す方も居るみたいですけど、私のは怪我専門ですから」
少し歩いてから、ヴァイオレット、アリス、アルスの三人は喫茶店へと入って一休み。
窓から見える街の景色は、以前の隙間なく建物が敷き詰められた街並みとは違い、真っ白の石を敷き詰めた大通りで二つに割られた建物の並びが。
外灯も以前の倍以上に増えており、あのような悲劇の後だというのに装飾まで施されているのを見ると、なにか職人の執念めいたものを感じた。
「そういえばアルス様は、すでに例のものを習得なされたと聞きましたが、本当ですか?」
「はい、まだ完璧ではありませんが」
最極を習得したアルスだが、成功回数は未だ少ない。
修行を始める前に言われた、世界樹戦までに完璧に仕上げなければならないと考えると、少し先が心配だった。
例えば敵と一人で戦うなんて状況で最極を使うときに失敗すれば、自分一人の命が潰えるだけではない。
自分が倒し損なった敵が他の者の元へと行き、総崩れになる可能性があるのだ。
百回試して、百回成功するまで鍛えなければ、実戦では使えない。
しかも戦闘中ならば、悠長に集中している間はない。
寝起き一番で、欠伸をしながらでも使える様にならなければいけないと、アルスは知っている。
この後も三人は、頼んだ飲み物がなくなるまでの小一時間を、店での雑談に費やした。
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「通りが少し騒がしいな…………」
「綺麗になりましたからね〜ニーライナ様、俺達も少し出かけませんか?」
「出るわけねえだろ、ヤマ。んな暇がありゃあ武器の一つでも作るんだよ」
新設された工房で、出来上がった部品をハンマーに付けながらニーライナは言った。
ヴァイオレットら女組が出かける中、ニーライナと山野の男組は薄暗い工房に籠り続け、武器の製造を続けている。
一応ヴァイオレットに誘われはしたが、騒がしい街よりも武器弄りの方が楽しいと、ニーライナは歳の割には男子らしい返事を。
ニーライナが残るならと、山野も残った。
山野の修行は、現在最極の成功確率二割。
アルスよりは低いものの、産まれた頃から魔法を使っていたわけでもない異世界人としては異例の速度。
こちらもまた、天才であった。
「国の上の奴らはここを観光地にでもしててらしいが、いい迷惑だな。外がうるせえと、集中が途絶える」
「でもいい事じゃないですか。街が栄えれば、国からの資金も増えますよ。確かニーライナ様、貰ってましたよね?」
「………………まあな。年に一度武器を一つ下ろせと、面倒だが、それで一年分な」
「そしたら、栄えればその資金上がるかも知れませんよ?」
ニーライナの武器作りの腕は、世界でも指折りのものだ。
年に一つ手に入るという確実な補償のみで、国は一年間他の職人が喉から手を出して欲しがる量の資金を、嫌な顔一つせずに差し出す。
山野の言葉を聞いたニーライナは、顎髭を摩りながら少し考え込む。
「なら、この戦いが終わった後に店でも出すか。失敗したもんなら、国も口出しはしねえだろ」
「それはいい考えですね! ニーライナ様の失敗作は、俗に言う大成功だと僕は思ってたんですよ!」
「そうかよ。お前、手伝えよ」
「勿論です! でも、開けば客は多いでしょうし、人を雇いましょうね」
「それは…………お前がやれ」
「じゃあら頑張って人探しますよ!」
このときは誰も、この約束から十年後に山野が世界をまたに駆ける大商人になる事を、誰も知らない。
伝説の鍛冶師、ニーライナ・アグリチャスの武器を扱う、ただ一人の商人として。
ニーナとヤマは、二人とも男子的な趣味を持ってて好き。




