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未知の男

 マティアスの上半身と、焼け焦げた野原。

 レイは纏う炎が少し残っているのを確認して、マティアスへと歩み寄る。



「そうか…………負けたのか。ならば仕方あるまい、諦めるとしよう」


「潔いんだな、マティアス」


「目の前に無傷で立たれてはな…………諦めもつこう」 


「外面だけだ、魔力は空っぽだし、限界だよ」


「そうか…………だとしても、この戦いに先が無いのは明白だな」



 血が流れている、息も言葉も絶え絶え。

 マティアスは既に、虫の息だ。



「お前、誰に従ってるんだ?」


「従う? 神である私がか?」


「そうだろ? そうでなきゃ、守護神のお前が態々人形作ってまで俺を攻撃して誘ったりなんてしないだろ? 世界樹の根だって、入る前に見たが魔力があまり残っちゃいない。師匠も言ってたが、世界中に根を広げる余力なんて残っちゃいない」


「そうか、あの女…………全て分かっていたのか。だとしたら、惜しい事をした」


「惜しい? お前何を言って…………」



 マティアスは妙な事を言った。

 話し合いの余地がないなどの言い方じゃない、ヴァイオレット自身に何かが起きていると言いたげな。



「あの女を送った階層に…………主人は居る。今からあの炎を持ち向かえば、或いは――――――」



 言い終える寸前、マティアス目掛けて大量の槍が降り注いだ。


 ヴァイオレットの使う、魔法で生成された黄金の槍。

 それがレイの背後、世界樹の方向から放たれた。



「――――――師匠!」



 振り返る、ヴァイオレットは居た。

 しかし傷だらけ、脇に立つ白髪の男に首を掴まれて、世界樹に空いた穴からレイを見下ろしている。



「誰だ、お前」



 敵か、人か、神か、何故ヴァイオレットが傷だらけなのか、何故黄金の槍を男が持っているのか、あれが主人か、何故マティアスを殺したのか。


 突然現れた男に対する情報で混乱しながらも、レイは剣を改めて強く握りしめる。


 神力の操作は未だ出来ず、炎に変換して放つのみ。

 ただ一度だけ足元からの噴射で近づけば、ヴァイオレットの奪還は可能かと考える。



「誰だか知らないが、師匠を離せ! そうすれば攻撃はしない!」



 言うが、男は応えない。

 代わりに手に持つ槍を振り上げて、投げ放った。


 瞬間―――レイは足元から出鱈目( でたらめ)な炎噴射。

 進む方向に合わせた火力の集中なんてあったものじゃない。


 空中で体を捻って槍を回避。

 ヴァイオレットの元へと辿り着き、掌から男へ向けて炎を放ち、攻撃と同時にヴァイオレットを連れて離れる。



「師匠、傷は…………気絶、師匠が…………?」



 返事のないヴァイオレットを連れて着地すると、炎を浴びた男は視線を。

 しかし、男は居ない。


 代わりに眼前に、レイより先に飛んで着地していたのだ。



「―――ッ! お前、マティアスの主人か、何がしたい!」


「何って、何だろうね」



 男は応える。

 まるで緊張感のない、木の抜けた声で。



「強いて言うなら、下剋上」



 男が言ったそのとき、男が現れた穴から更に二人の人物が飛び出した。


 アリスとニーライナだ。


 ニーライナは気絶するヴァイオレットを見て即状況を理解したのか、男へ向けてハンマーを振り下ろした。



「退け、小僧ッ!」


「ニーライナさん!」



 レイはヴァイオレットを連れて後退。 

 地面を砕く一撃に男は直撃するも、血だけ残して完全に元通り。

 傷口から皮膚が、肉が、骨が現れる、再生したのだ。



「やあアリス、僕は君を迎えに来たんだ」


「迎えに……? 貴方、誰ですか?」



 男の言葉にアリスは警戒しながら、レイの元へと。

 二人を護る様に構える。



「そうか、暫く隠れるために改竄の魔法を使ってたんだ。それ、今に思い出すよ」



 男が言った。

 その瞬間―――アリスの表情が変わった。


 そして、構えが解ける。



「…………マスター」


「そう、君のマスター、アステラさ。さあ戻っておいで、そんな弱い偽物のマスターからは離れて、僕の元にさ」



 マスターと、アリスは男を呼んだ。

 アルテラとは以前レイがアリスから聞いた先代マスターの名に間違いない。


 先代マスターはただの人間だと聞く。

 千年前の人間が、この時代に。


 明らかな異常事態。


 男―――アステラが手を伸ばすと、アリスは後ずさる。

 自分がどうすれば良いか分からないのだ。



「さあアリス、この手を取るんだ。戻っておいで」


「マスター、何故、千年前に…………私、何で………」



 困惑するアリスを見て、アステラは一つ溜息を零した。

 そして、差し出した手を戻す。



「そうかアリス―――兵器の癖に逆らうなんて、面倒くさいね。じゃあもういいや、廃棄処分決定―――あ?」



 アステラが言い終える寸前、衝撃が放たれた。


 アルスと山野を連れたルークがやって来た―――メンバー勢揃いだ。



「全員退避! アリス、馬車を出せ」


「は……はいっ!」



 ルークの声に反応して、アリスは天馬と馬車を。

 ニーライナとルークを除いた全員が、急いで乗り込んだ。



「ニーライナさんも、ルークさんも、早く!」


「先に行け、俺達はこいつと、あと一人。こっちに向かってるやつを足止めする!」


「そうだ! 魔力切れのお前が居てもただの邪魔、消え失せろ小僧ッ!」



 二人に言われ、レイは天馬を走らせた。

 アリスは馬車の後ろから、アステラを見ている。


 ヴァイオレットの様子を見るアルスの横で外を見る山野は、今二人を残してはいけないと根拠のない不安に襲われながらも、この未知の状況に何も言えずにいた。


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