神力
「血…………そうか、自分から出ているのを見るのは久しいな」
「そうか、今から嫌って程見ることになる。六道―――モデル・ランス」
着地―――背後の円含め、見に纏う全ての炎が槍へ。
ゆっくりと歩き出して、次第に加速。
マティアスが間合いに入ると同時に、槍を突き出した。
「八千七十五人、お前が破壊した街の死者数だ。思い入れはないが、責任は取らせるぞ」
槍は回避されるが、即座に転移で離れる。
レイはルークのと修行で、天天羅蘇と転移魔法の両立を可能に。
また、炎操作の精度を格段に上げている。
「六道―――モデル・ウィング!」
槍を羽へと変えて、剣を抜き突進。
マティアスは地面から、先の尖った太い木の蔓の様なものを生やしてレイへの攻撃兼進行の妨害。
旋回しながらそれの隙間をすり抜ける様飛んで、幾度か攻撃を仕掛ける。
しかし既に生えている蔓の側面から新たな蔓が延びて、それらを撃ち落とす。
この蔓の森に潜り込む危険な突進を諦める事なく続けるが、結果は依然変わらず。
魔力の消費が激しいので一度羽を解いて、蔓から出た。
「そう何度も上手くは行かぬと知れ」
声が聞こえた。
瞬間―――マティアスを護る様に集まってレイを攻撃していた蔓が全開放。
マティアスは完全に姿を晒して、代わりに超攻撃対戦を取った。
「六道―――モデル・ガーディアン」
レイが言うと、炎は両腕に纏わりついて硬質化、強固な鎧となって、更に炎で盾を作り出した。
内部は腕と繋がり硬質化、表面には燃え盛る炎を纏っている。
「さて―――我慢比べと行こうか、神様よ」
「面白い、敢えて乗ってやろう」
言って、全ての蔓を収束させた巨大な一撃が放たれた。
盾と蔓の衝突は辺りに衝撃を放ち、足場の芝に炎が燃え広がる。
レイは足元から炎を勢い良く噴射して踏ん張るが、少しずつ押されている。
踏ん張る為の炎の火力は、既に人が触れれば骨も残らず燃え尽きる程。
レイの背後には噴き出される炎の形、扇状に地面が抉れている。
「耐えるか―――では、少し強くしよう」
「…………最初からやれよッ!」
攻撃の威力は倍増、一度勢い良く背後へと押されたものの、十メートル程の位置で踏み止まる。
「お前みたいな神様に支配される世界じゃ生きたくないからな…………まだ、負けるわけには行かないんだよ!」
炎噴射の勢いが激増―――力を込めて一歩、レイは踏み出した。
靴は燃え尽きて、裸足だ。
一歩一歩進み、少しずつ蔓の力が弱まり始める。
「どうした、疲れたか?」
「ほざくな、人間」
一度息を吐き、それから大きく息を吸って、炎によって熱された辺りの暑い空気を吸い込む。
それからレイは腕に力を込める。
そして右腕、義手に込めた炎を盾へと込めた。
すると盾の両脇から炎を吹き出して、それに加えて自身の腕力で蔓を押す。
歯を食いしばり全力で盾を押し出す、確実に、今現在レイの力が優っている。
力一杯、全ての魔力を炎へと変換して盾を押した。
「思い上がるなよ…………神、如き!」
己を鼓舞する様叫んだ。
そして蔓を押し出し、弾き返す瞬間―――蔓でもレイでもなく、盾が限界を迎えた。
「――――――ッ!」
盾は中心から粉砕。
少し軌道の逸れた蔓はレイの体の中心からズレて左足を根こそぎ破壊して、地面を抉った。
「私に疲れを問うたな? 思い上がるなよ、人間。力が抜けたのではない、不要と判断し力を抜いたのだ」
マティアスは言う。
蔓は残っており、いつでももう一撃放てる状態だ。
「全く、お前らは…………俺をダルマにするつもりか…………」
無くなった左足を見てレイは言った。
地に這って、一眼見れば戦えない状態であることは明白だ。
「今の一撃を防いだ褒美だ、抵抗しなければ楽に殺してやろう」
「馬鹿言ってんじゃねえよ………俺が頷くと思ったか」
「魔力が残っていないのは知っている…………それでも尚争うと言うのか?」
「ああ、争って見せる。なんせ俺は、マスターらしいからな」
そのとき、世界樹の方から大きな音が。
アリスが倒したロック鳥が転倒した音だ。
レイはそれを分かっていないが、誰かが勝利したということは理解した。
そして、今自分が倒れていてはダメだと腕に力を込め、這う状態から体を丸め、片足で立ち上がった。
「押し負けるつもりはなかったが、魔力は元々使い切るつもりだったんだ。そうすれば、見つけやすいからな」
「見つける? 死を前にしておかしくなったか」
「なってねえよ…………俺はただ、一度掴んだ体内のこれを、探してただけだ」
瞬間―――レイの全身から炎が溢れ出した。
確かに魔力は残っていない、空っぽだ。
しかし炎は確かに存在する。
「それは何だ、人間」
「知らないのか? 火だよ」
レイは溢れ出した炎を手元へと寄せる。
「曰く―――神とは信仰対象、神として産まれようと、人として産まれようと、猿として産まれようと、物として産まれようと、崇めちゃえば神なんだ」
対象の善悪は関係ない。
大衆が神といえば、小石ですら神なのだ。
「自慢じゃないが、俺は国によっては炎神なんて呼ばれてるらしい。じゃあ、俺が嫌がろうと何だろうと、俺は神なんだそうだ。だから、俺も使えるんだよ」
戦火を見た者達、魔導史上国家でレイは、一種の信仰対象になっている。
他にも今回の旅で戦った土地で、一部レイの炎を神聖視する人間も居る。
「俺はお前程上手く使えないが、それでも今度は立場が逆だ。防げよ」
言うと、手に集まった炎がレイの体を巡る。
それを見たマティアスはレイから大きく距離を取った。
炎は傷が出来た事実を焼き、疲れを焼き、自身の攻撃の反動に踏ん張れる肉体を作り出す。
つまり、レイの足は破壊された事実は無くなった。
腕は既に義手をつけたという事実の上塗りがあるので戻らないが、既に馴染み、元の腕以上の仕事をしているので問題ない。
しかし少し残念がりながら、レイは手元へと炎を戻し、そして名を呼んだ。
今、使うべき力の名を。
「天譴―――火領戦武!」
「天譴―――木可蓮壁!」
放たれた炎、現れた木の壁。
炎は辺りの草を燃やして、触れてない位置の草にまで火を燃え移らせた。
壁はある大きく、分厚く、通常の攻撃ならば表面に傷すら付かない耐久性。
それらが衝突―――炎は壁の表面を燃やしてすり減らしながら突き進み、壁は焼けた面から後方へと回されて再生。
前が焼ければ前に押し出しと、回転によって長時間の耐久を可能としている。
「言い忘れてたけどな、マティアス」
レイが言って、放つ炎の尾を離した。
放出を止めて、今出ている炎の全てが壁へと激突している。
「言い忘れてたが師匠曰く、俺は無駄に炎を爆発させ過ぎらしい」
言うと同時に、放たれた全ての炎がマティアス目掛けて爆発。
少しずつ焼くのを止めて、一撃で壁を破壊した。
二人の間、遮る物は無い。
マティアスは地面から木の剣を生やす。
木剣だが、鉄の剣とは比べ物にならない程斬れる剣だ。
「認めよう―――確かにお前は、強いと!」
魔法は魔力を消費、天譴は神の力、神力を消費する。
そして神力は、神の力の全てを支える力であり、それは天譴から五感、そして腕力などの身体機能にまで至る。
「これで終わりだ、勝負ッ!」
振り下ろされたレイの剣には、神力が込められていた。
ドラゴンの骨に魔力ではなく神力を、魔力でさえ世界樹の壁を斬るのだ、それが神力となれば、神の両断など、容易い。
更には一部神力を炎へと変換。
神力を込め、爆炎を放つドラゴンの骨で作られた剣が、マティアスを腹部から切断。
この一撃で、勝敗は決した。
はりきりました




