土塊
「どるぁ!」
振るわれたニーライナのハンマーが、八体のコボルトを弾き飛ばす。
一度振るう度に五体以上は飛んでいく勢いだ。
ニーライナが飛ばされた階層には特殊して強い個体は見当たらないが、数が多い。
大量のコボルトが溢れており、全員棍棒を所持。
ニーライナの屈強な筋肉が全て弾くが、小さなダメージが少しずつ、蓄積されている。
「頭は、どこだッ!」
床に一撃。
罅が広がり、床が砕けた。
真下の階層まで、貫通だ。
甲高い叫び声が聞こえた。
長いものでは無く、きゃっと、短く。
辺りのコボルトを蹴散らしてから覗くと、下には瓦礫をレーザーで破壊しながら上を覗くアリスの姿が。
「ニーライナ様! 大変です、この迷宮の床、かなり劣化している可能性が!」
「気にすんな、俺がぶち抜いた! それより上がってきて手伝え!」
言うと、手伝いの内容を伝える様に、アリス目掛けてコボルトを一体放り投げる。
アリスはそれをレーザーで撃ち抜くと、黒鍵を解放して跳ね上がり、三階層へと移動。
手始めにニーライナへと襲いかかる二体のコボルトを蹴飛ばして、言葉も交わさず戦闘を開始した。
一度下の階層で死んでいるロック鳥を見て、つくづく相性が良い相手には強いのだなと考えながらニーライナも戦闘へ戻る。
ニーライナとアリスは、ヴァイオレット組が再極を習得している間にひたすら戦闘を続けていたが故に、互いの癖を実戦で知っている。
互いが互いの邪魔にならない様に敵を減らし続け、直ぐに百体は討伐。
しかし、一向に数が減らない。
むしろ、増えている。
「ニーライナ様、これは何か…………」
「ああ、増えてやがる。一度一気に減らして様子を見てえが、出来るか?」
「おかかせくださいっ!」
言って、 完全に不完全なる世界軸の二翼目を発動。
大量の小さな火の玉がいくつも飛び出して、敵へと当たった瞬間爆発した。
「これで事足りるでしょうか? ニーライナ様」
「ああ、充分だ。それ、居たぞ」
ニーライナがハンマーを持ち上げて、何かを指す。
先には、自身の掌から溢れ出す粘土からコボルトを生成するコボルト。
コボルトは基本的に魔法など使わないが、ごく稀に居るのだ。
希少個体のコボルトは生捕が望ましいとされるが、今はそんな事をしている場合ではない。
「それでは、排除します――――!」
言うと、アリスは駆ける。
一、二、三歩と床を蹴って勢いをつけてから、その勢いに身を委ねて床から足を離す。
空中で体を柔らかく回転させて、踵で一撃。
コボルトに当たる寸前、粘土で出来た盾に防がれた。
この年度は異様に硬く、通常の物ではない事を容易に理解できた。
そんな盾を、ニーライナはハンマーの一振りで破壊。
続いてもう一振りし、コボルトに撃中したように見えたが、身代わり。
コボルトだと思っていた体は柔らかい粘土となって崩れ、全くの別方向から二体のコボルトが襲いかかった。
「ニーライナ様、後ろです!」
「気にすんな、知ってらあ!」
ハンマーを振らずに、背後を見ずに、肘打ち。
直撃したコボルトがもう一体に当たって道連れとして、弾き飛んだ。
「それじゃなくて、ニーライナ、後ろ槍がっ!」
突然アリスは言った、背後に敵の気配は無い。
瞬間―――振り返ったニーライナの眼前に粘土の槍は迫っていた。
もはや回避は不可能な距離、威力は、筋肉で弾ける次元を超えている。
槍の奥に見える、粘土で出来た槍の発射台がある。
気配の無さを理解して、納得したと同時、ニーライナは蹴飛ばされた。
アリスによって、緊急回避だ。
「悪い、ちと油断した」
「いえ、それよりこれは…………」
言うと、アリスは絶句する。
床や壁や屋根を埋め尽くさんばかりに用意された粘土の槍。
「全部壊せるか?」
「…………流石にこの数は」
「なら任せろ」
言うと、ニーライナはハンマーの柄を回して外し、放り投げた。
すると、空中でほんの一瞬停止してから、爆散。
破片の全てが山野の銃弾の様な形となり、それぞれ槍の発射台へ。
直撃すると同時に二度目の爆発を引き起こし、一つ目の爆発と同時に他も連鎖的に爆発。
爆煙の中から、巨大な影。
発射台の中に紛れていたコボルトの奥の手だ。
「巨大なワン公、お前の敵だな?」
「はい、お任せください」
全長五メートル程のコボルトが粘土で作られており、その肩には通常のものよりも痩せこけたコボルトが。
それに狙いを定めて、レーザーを三つ発射した。
まず二つは巨大コボルトの両膝に、もう一つは希少個体の頭部へ。
レーザーは一撃で完全に、本物のコボルトの頭を破壊。
巨大コボルトが崩れ落ちる音と共に、この戦いは幕を下ろした。
生牡蠣に当たりました




