一般脱獄者
最極―――自分の保有する魔力の小出しにする無常の魔法とは違い調節不可の、自分の魔力を全て絞り出す、究極の一を作り出す魔法だ。
倒れてそのまま寝てしまったレイは、それの習得のためにルークに連れ去られてしまった。
残りの者たちは、ヴァイオレットが教える事に。
アリスは魔法を使えないので、ニーライナとひたすら組み手だ。
「最極は当然、人によって内容はそれぞれ。こうやればどうとかは教えれないから、私が教えるのは感覚だけ。出来るかどうかは、努力しだいだからね」
「はい!」
山野は元気に応えたが、アルスは少し静か。
一晩ずっと、ヴァイオレット達の間近で戦いを見ていたアリスだからこそ、その人物らが奥の手として使う技を自分が覚えられる自信がないのだ。
「自信なさそうだね、アリスちゃん」
「あんな戦い見た後で、アレより強い魔法となれば、誰だって…………」
それを聞いたヴァイオレットは小さく笑って、それからアルスの髪型が完全に崩れるまで、頭を撫でた。
「アルスちゃん、魔法は誰に?」
「…………独学です」
「そっか、それじゃあ平気だよ。私は愛弟子を育てた訳だけど、私に会ったばっかりの頃、愛弟子は言っちゃえばね、雑魚だったんだよ」
「雑魚……ですか?」
少し驚くアルスと、目を見開いて驚く山野。
そんな二人を無視して、ヴァイオレットは話を続ける。
「雑魚も雑魚、今のアルスちゃんでも余裕で勝てるぐらいには雑魚だった。まあ―――鍛え方を間違えてただけで、二週間も経てば火の操作は大体出来上がったんだけどね」
「そんな時期が…………知りませんでした」
「そりゃあ、面影がないからね―――そんな時期があったけど、今やアレだ。そしてアルスちゃん、君には才能がある。愛弟子以上…………いや、下手すれば私以上に」
「レイ様ヴァイオレット様以上だなんて! 流石にそれは、お世辞だと分かりますよ! 分かりすぎますよ!」
「お世辞なもんか―――当然努力もしているだろうが、未だ経験も大してない君が、神様相手に一晩逃げ回りながら私達のサポートを、一切邪魔にならないで行うなんて、凡の所業じゃないのさ」
少し熱のこもったヴァイオレットの言葉に、アルスは何も言い返せない。
諦めて自分が天才だと認めてから、自分が天才だと認める事に恥ずかしさを覚えた。
「それじゃあ早速始めようか! まずはそうだね――――――」
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「本当にやる気があるのか!」
「なかったら、とっくに帰ってますッ!」
言って、レイはルーク目掛けて剣を振るう。
レイが目を覚ますとらそこは未知の孤島であった。
最初は困惑したものの、すぐに状況を理解。
最極の訓練へと打ち込んで、半年が過ぎた。
最極の習得は単に才能との戦いらしく、今まで習得したもの達は皆、突然出来る気がしたと言った。
過酷な修行の末に、ある日気づく。
今なら使えると。
その感覚を、レイは掴めずにいた。
最初こそ、同時に灯す炎の数を増やしたり、転移と炎の魔法などを同時に使うなど様々な修行をしていたが、全てダメと分かったらあとはひたすら戦い続けている。
通常の敵とは比にならない実力のルークとの戦いだからか、ただ強くなっている実感はあった。
炎の火力も転移の速度も、軽く倍以上に。
しかし、一向に成功の兆しは現れない。
「ッ…………」
「よし、一度休め」
レイの拳を止めて、ルークが言った。
肩で息をしながらレイは今を下げて、そのまま砂浜に横たわった。
今頃アリス達は何をしているのかと考えながら水平線を眺めていると、一つ小さな影が見えた。
海の魔物かと思ったが違う、船の影だ。
小舟と、それに乗る人物一人。
しばらくルーク以外の人を見ていなかったレイが目を凝らすと、ソレは小舟から飛び出して水面を駆け、勢いよく跳ね上がったかと思えば空中で回転しながら、騒ぎながら、レイの側へと現れた。
「じゃんじゃじゃ〜んっ! 変な魔法が解けたので脱獄して馳せ参じた、ヤンだよっ! 旅人さん、元気してた?」
ヤン、一般連続殺人鬼。
魔力が尽きたレイを襲い、アリスに妨害され、ヴァイオレットに捕縛された女。
相変わらず派手に着崩した和風と剥き出しの刀と、聞く人話す人を置き去りにする喋り方は変わらない。
「どうしちゃったんだい旅人さん、剣なんて構えちゃってさ? ヤンはが弱き乙女だよ? 剣を向けるなんて、花束に除草剤を撒くのと同じ行動なんだよ―――花束は、私みたいなか弱き少女に捧げなきゃ」
「脱獄して海渡って遠路遥々やってくる奴はら世間一般でか弱くねえよ」
レイは指先へと炎を灯して、ヤンへと投げる。
当然ヤンは避けるが、これは未だ攻撃にもなっていない、準備段階だ。
「開火―――百火繚乱」
瞬間、炎は膨張して爆発。
それによって飛び散った火花が小さな硬化して、小さな短剣の様になってから、末尾に残る炎の噴射で方向転換。
一斉にヤンに向かい降り注いだ。
この魔法は、半年の続く修行によって強化されたものの一つだ。
「ん〜イマイチ! ヤンはね、逃げたらあの女に会ったんだよ。あの邪魔する、白髪女だよ。殺そうと思ったら、丁度いいって居場所教えてくれて、感謝感激のヤンさ!」
短剣を全て回避したヤンは言った。
少し離れた場所から、砂を握って放る。
通常ならば目潰しにもならない距離だが、ヤンの魔法によって強化された筋力によって、ただの砂に威力が宿っていた。
それの対処として、レイはただ炎の灯った指で縦に線を引いた。
その線から噴き出す爆煙が、砂を一粒残らず落とした。
「アリスから聞いたんなら返さないけど、とりあえずルークさんに許可を………………」
今、すでに五時間ほど戦闘をしていた状態。
体力尽きながら、レイ言った。
投稿しようとして寝てました




