頭痛
「どうだ、違和感はねえか」
反対の肩に紐を掛けて、義手を固定。
不思議と動く、確信があった。
「全くないてます…………前からあったみたいっていうか………」
「お前の体に流れる魔力と繋がり安いようにした。因子と会うように調整しようと思ったが……もう一度弄ってるな? これなら必要なさそうだ」
新しい右手を握って、開いて。
目を向けて、以前の腕の見た目をしていない事に違和感を感じる程の親和性だ。
「掌、光ってんだろ。そこに適当な魔法でも込めとけ」
「魔法をって…………まさか」
いうと、二人の様子を隣で見ていたヴァイオレットが自慢げな表情を浮かべる。
何か言いたいのだろうかと二人揃って目を向けると、ヴァイオレットははち切れんばかりに胸を張って言う。
「実はだね愛弟子くん! この世界にあるありとあらゆる魔道具の八割が、彼の手によって作られているのだよ! 世界最後の魔道具の作り手とは、他の誰が何と言おうと彼の事、ニーナの事さ!」
それから、数秒の静寂。
魔道具を作れるという事は、ニーライナの言葉で考えが浮かんで、ヴァイオレットの表情で確信に変わった。
そして、意気揚々としたヴァイオレットの言葉で、驚きは現実へと引き戻されたのだ。
「それって危ないんじゃ…………」
「危ない? 俺がか?」
「だって、そんなのいろんな国がほっておかないんじゃないですか?」
「ああ、そのことか。それなら問題ねえよ。戦力になる魔道具を俺が作ってんだ、俺が使ってねえわけねえだろ」
納得。
自分で好きなだけ魔道具を作り、好きなだけ使う。
きっとその中には、ヴァイオレットの魔法も多く入っているだろう。
そしてその戦力は、無理矢理にでもニーライナを連れ去ろうとしてやって来た者程度容易に返り討ちに出来るの程なのだろう。
「それじゃあ、俺は寝る。お前らは出て行くでも残るでも、勝手にしろ」
そう言うと、ニーライナは自室へと戻って行く。
新たな腕を摩りながら今後の予定を考えていると、少し頭が痛んだ。
痛みに思わず声を上げた瞬間、ほんの一瞬だがおかしな光景が見えた。
「杭…………いや、槍? 何だこれ、壁? いや、土、地面か? 速い、移動してる?」
突然見えた光景に驚きながらも、レイは頭を抱えて見えた情報を整理。
幻覚を見るほど疲れてはいない。
頭痛との関連性、見えた光景の正体。
それらの情報がまとまり切らない内に、一つの答えが頭をよぎった。
「まさか、こっちに来てる…………?」
「どうしたんだい! 大丈夫かい! 愛弟子!」
言葉を漏らすと、レイが頭痛が続いているような体制でいる事に気づいたヴァイオレットが、レイの元へと寄って声をかける。
それによって少し落ち着いたレイは、この感覚を伝える為に、顔を上げ、言った。
「嫌な予感がします、師匠。戦いの準備を」
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予感とは、馬鹿にならない。
今までの記憶や経験の結果、脳が自身の意識せぬ間に導き出した答え、或いは未来こそが予感なのだから。
レイは即座に腕へと魔法を込める為と砂漠の街から離れた場所にアリスを連れて転移して、街へと天馬で戻る。
移動の途中、二度目の頭痛と共に再びあの攻撃が見えた。
「どう、何か居る?」
「いえ、一見何も………」
ニーライナの家に戻ってから、アリスの千里眼で街付近半径十キロを捜索。
しかし、街に向かって移動するものなど、普通に旅をする旅人や商人、あるいは動物しか見当たらない。
「マスター、疑うわけではないのですが……その……移動する光景というのは、本当に見たのですか?」
「ああ、見たよ。こう……何かと繋がる感じっていうか……」
その後も捜索を続けるが、何も見つかる事は無い。
広がる限りの砂漠に飽き飽きし始めた頃、ヴァイオレットが夕飯の時間だと二人の居る部屋に訪ねて来る。
「ちょうど良いや師匠。さっき聞いたやつ、何か思い当たる事ありませんでしたか?」
「いや、悪いけど何にも」
「そうですか…………」
仕方ないので、ひとまず夕食。
早く仕事に戻れるようにと、味を気にせず量と栄養のみに特化した食事とは言えない食事を、少しの悶絶を乗り越えながらも完食。
捜索に戻る前に、アルスに診てもらったが、頭に異常どころか疲れてすらいなかった。
そして、元の部屋へと戻る途中、三度目の頭痛と光景。
今回は光景が途絶える最後、硝子に罅が入る音が聞こえた気がした。
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家事を餌に師匠が出来て、最初に感じた事は喜び。
そして次が、悔しさだった。
師匠との鍛錬を繰り返す度に、今までやって来たアレは無駄だった、コレも無駄だったと、自分の考えたものは意味がないものだったと思い知るからだ。
だから、同じ思いをする者達を一人でも、少なくしたい。
たとえ自分が教えることが下手だろうと、相手より少しは知っているのなら。
たとえ相手が、十歳にも満たない子供程度の実力だろうと。
もし相手が、教えてくれと願うなら、強くなりたいと願うなら。
きっと今より強くしてみせると、人を強く出来る程の実力を身に付けてみせると、昔考えたのを覚えている。
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