転移者
「頼んだよ、ニーナ」
「……………………嫌だ」
「ん?」
ニーライナはハッキリと、嫌だと言った。
それには流石のヴァイオレットも、少し驚いた顔をする。
「厳密に言えば、タダではやらねえ。貸し借りは作らねえタチでな」
「最初っからそう言ってよニーナ、一瞬焦ったよ」
「腕程度、渋るわけねえだろ俺が。必要なのは対価だ。ちと物を運んでさえ来れれば作ってやるよ」
「分かった、行ってくるよ。場所は?」
「馬鹿か、お前じゃねえよ」
言うと、ニーライナはレイを指さす。
この時点で全員、やるべき事を理解した。
「腕を使うのはお前だな? それならお前が取りに行くのが道理だ、違うか?」
「いや、違くないですよ。俺はどこに行けばいいんですか?」
「肝が座ってやがる…………面白味がねえな」
それを聞いたヴァイオレットは自身ありげな顔、俗に言われるドヤ顔で胸を張っていたが、誰一人それに反応する事は無い。
「場所はめんどくせえな…………案内にヤマを付ける。お前今疲れてるか?」
「いえ、結構元気です」
「じゃあ今行け。ヤマ! 手紙は後で良い、コイツ案内しろ!」
ニーライナの声に反応して、再び山野が駆け寄る。
ニコニコと、楽しそうに微笑みながら。
●●●●●●
「ダンジョンじゃないですか…………」
「そうです! あと、自分にはタメ口で結構です!」
「分かった」
ヤマに連れて来られたのは、砂漠地帯の遺跡の様な建造物。
入り口から発せられる魔力が、そこがダンジョンだと強く主張している。
「武器を持ってくるなって、酷いな…………」
「僕は持っているのでお構いなく!」
「持ってるって…………俺のが無いのよ」
文句を言いながらも、ダンジョンへと侵入。
石造の壁も床も天井も石造で、どこか冷たい。
「ここの魔物は自動人形の原種、または見本でして、私達はゴーレムって呼んでます。元はただの石塊なんですけど、そこにダンジョンの魔力が動力として宿って、魔物になるんです」
「じゃあその動力源を壊しちゃえば倒せる?」
「はい! でもダメですよ。今回はこのダンジョンのボスの動力源を取りに来たんですから」
「それって難易度高いよね?」
「まあ、石を斬れる武器でもあれば余裕ですかね。聖剣エクスカリバー! みたいな」
「その、エクスカリバーってのは分からないけど、石を斬れる剣はあるよ。置いてくる様言われたけど」
「それは、残念ですね」
少し腹が立ちながらも、レイはダンジョン内を進む。
「じゃあ取り敢えず、他のは壊していいよね?」
「はい!」
それならば先ずは武器の用意だと、レイは詠唱して天天羅蘇を発動。
発動時何故か、それを宝石でも見るように山野が見ていたが、レイは一度流す。
「獄炎球―――|後光六道輪連華《 ごこうろくどうりんれんか》」
「おお!」
あまりの熱気に、少し離れた場所へと避難した山野が声を上げた。
「六道―――モデル・ランス」
言うと、全ての炎が左の手元へと集まって、巨大な槍を作り出す。
炎を硬化させた、熱を発する槍だ。
「何ですかレイさん! それ!」
「え、槍」
「じゃなくて、じゃなくて! 急に火が出て、燃えたと思ったら詠唱とかしちゃって、ロマンじゃないですか!」
「え…………?」
火が出たこと自体、別に珍しい事ではない。
世の中火の魔法を使う者は少なくないからだ。
「ケルニストって魔法とかないの?」
「あっ……まあニーライナ様のお知り合いみたいだし話しても大丈夫かな…………」
突然、山野は小さな声で呟いた。
そして、よしと、何かを決心してレイへと視線を向けた。
「実は僕、この世界の人間じゃないんですよ」
「…………裏の世界的な?」
「いや、じゃなくて。ケルニスト以外にも国ってあるじゃないですか。そんな感じで、ここ以外にも別の世界があって、僕は先月、そこから急に飛ばされて来たんですよ」
「あ……なんかそんな話読んだことあるかも。敵に刺されたと思ったら生き返ったけど、法も言語も土地も何もかも違う事だらけの世界に生まれ変わる〜みたいな奴」
「そんな感じです! こっちの世界にもその手の話はあるんですね」
「あるよ。確か…………そうだ、異世界転生」
「転生は生まれ変わりなのでちょっと違いますね。僕の場合は、異世界転移ってやつです」
「転移…………転移か」
レイが自分の転移の魔法と何か似た現象かと考えていると、道の奥から足音が聞こえた気がした。
「ゴーレムだ、下がって」
「はい、応援してます!」
「いや、静かに」
言って、レイは槍を構えた。
道の先から、影が見える。
曲がり角から柱のような足が見えた瞬間、レイは走り出して勢いつけて、槍を振るった。
簡単に足は砕けて、ゴーレムは体制を崩す。
全長三メートルの巨体の割には早い動きで手を突き出して倒れない様にするゴーレムだが、両腕を槍で砕いて完全に転倒。
人間ならば心臓がある位置に槍を突き立てると、ゴーレムの体を作っていた石ブロックがバラバラに崩壊。
引き抜いた槍の先端には、うっすら光を放つ硝子玉が突き刺さっていた。
「つっっっっっっ!」
「ん?」
「つっっっよ! レイさん、ヤバいぐらい強いじゃないですか!」
山野が叫ぶ。
レイは大袈裟だと思いながらも、少し照れていた。
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