置き土産
二度目の帰国は、余裕に満ちていた。
王宮へと戻り、アリス達に戻ったと報告してから、小一時間部屋で休みがてら記憶を整理する。
図書館にはアリスが一人で行って、良い本は見当たらなかったらしい。
レオンは公務が忙しく、レイ達に手伝える事は無さそうだ。
もうこの国で、出来ることは無い。
国を出ようと、レイは決めた。
思い立ったが即行動と、レイはアリスの部屋へ。
話をすると、アリスは静かに一度頷いた。
続いてヴァイオレットの部屋へと向かうが、変わらず参戦。
最後にアルスの部屋へと向かう。
「そんなわけで、そろそろこの国を出ようと思うんだ」
「それなら、レオン様に挨拶しなければいけませんね。丁度お休みの時間でしょうし、そろそろいらっしゃると思いますよ」
「いらっしゃる? 行くんじゃなくて」
「ええ。ほら、足音が聞こえて参りました――――――」
瞬間、勢いよく扉が開かれた。
よう嬢ちゃんと、勢いのある声と共に。
「あ? なんだ、大将も居るのか。話の途中なら帰ろうか?」
「いや、ちょっと、そろそろ国を出ようと思ってね。レオンに挨拶しなきゃって話だから、居て大丈夫」
「あーそうか。まあそうだよな。大丈夫は旅人だからなあ…………」
少し悲しそうに言うが、レオンは自分の顔を両手で叩き、意識を切り替える。
「よし、大将っ! 今そんな体で悪いが、置き土産を一つ頼みてえ」
「よし分かった。いつ欲しい?」
「出来んなら、今だ」
●●●●●●
王宮付属の訓練所、そこに男二人と、医者一人。
ランズは盾と槍を持ち、レイは剣一つを握る。
「それじゃあ、手加減はしねえぜ大将」
「手加減する暇はないよ…………本は読まないのか? 隻腕のヤツは、大体強いんだ」
「そりゃあ、楽しみだッ!」
瞬間、レオンが盾を前に押し出して駆ける。
猪突猛進、それを横に飛んで回避してから、ガラ空きの背中に剣を振るう?
「―――単純ッ!」
レオンは叫び、片脇に挟んでいた槍を回転させて後方へ。
レイの手ごと剣を弾いて、盾の底を床へと強く押し当てて突進を停止。
盾を振るって、レイを後方へ回避させる事で距離を取る。
レイの間合いの外から自分は槍を長く持って、勢いよく突く。
少し身を仰け反って、眼前一ミリ差でレイはそれを回避した。
「見切ったってか、大将ッ!」
レオンは言って、更に槍を突き出した。
握っていた手を離して、槍の底―――石突を指だけで押し出す。
「ッ――――――!」
力目一杯押し出したタイミングにピッタリ合わせて、レイはバク宙。
自分自身が槍の動きに合わせて回転する事で、槍は回る自分の眼前を通り過ぎようとする。
しかし、そこで槍を放置せずに、レイは足で槍を掴んで、片手で床を押して跳ね上がってから、空中で槍を持ち直して投擲。
レオンはそれに臆して引く事無く、飛来する槍を置いてある状態から拾うように掴み取る。
「導火線―――ボム!」
「単純だって、言ったろうが!」
槍を使って、棒高跳びの様に跳ね上がり回避。
空中から盾を放り投げて、回避するレイの動きを読んで槍も投擲。
槍が髪を掠るが、レイはギリギリでそれを回避した。
着地と同時に、投げた盾を拾い、再度突進。
途中、地面に突き刺さった槍を拾って、前へと突き出した。
「炎剣っ!」
レイが叫ぶ―――すると、空中に炎の剣が。
それは勢いよく進むレオンへと飛んで、盾へと激突。
剣はレオンの動きを止めて、盾との激突で火花を散らす。
「開火―――百火繚乱!」
剣が爆発。
飛び散った火が、新たな小剣の形を作り出して、レオンへと降り注ぐ。
「雨霰、上等ッ!」
レオンは頭上で槍を回転させて、少剣を弾く。
全て弾いても回転を止めずに、そのままレイへと襲い掛かろうとするが、それと同時に、レイがレオンの背後を指差している事に気づく。
「…………次はなんだッ!」
振り返る―――しかし、何もない。
振り返った瞬間、レイの指先延長線に、ランズの槍が重なった。
「簡易―――モデル・ガンナー」
瞬間、レイの指先から炎が放たれた。
六道程の威力も速度もないが、それでもただの放火よりは強い。
炎は先端一部のみ硬化。
突き進んで、槍を弾き、レオンの手から落とした。
炎を放った途端、レイは駆け出していた。
槍を弾かれ、レオンがそれに反応する瞬間には、盾を蹴りで飛ばして、足でレオンの手を固定。
剣を首元へと、添えていた。
●●●●●●
「それじゃあ、またいつか」
「おう! それまでには、いい国作ってるぜ、大将!」
レオンとレイの手合わせから二日。
港にて、何故か馬車。
天馬の引く馬車に乗ったレイ達を、レオンが見送りに来ていた。
「それじゃあ、気をつけて帰れよ、王様」
「大将こそ、気をつけて渡ってくれよ!」
「ああ、気をつけるよ」
レイが言うと、アリスが手綱を打って、天馬を歩かせ始める。
「またなあ! 大将ッ!」
レオンは叫ぶ。
それを聞いたレイは、馬車から少し身を乗り出して、手を振っていた。
「しっかし、本当に渡れんのか…………」
レイが遠ざかると、レオンが呟いた。
馬車が進むのに合わせてヴァイオレットが魔法で作り出す、氷の道を見て。
「よし、仕事に戻るか〜!」
背筋を伸ばす。
時間は未だ昼前―――レオンは王として、職務を全うしに王宮へと戻る。
これにて、リデラント篇終了です!
明日からは新章、よろしくお願いします!




