救国
ヴァイオレットの言葉が開始と判断して、レイは駆け出した。
そこで、アルスが叫ぶ。
「アリス様、何か上に羽織る物とか貰えますか、忘れてました!」
「今出します!」
急停止して、レイは様子を見守る。
アルスは、体全部を隠すようなマントを羽織ってから、レイに一度頭を下げる。
「中断してしまいすいません。準備整いました!」
「了解、それじゃあいつでも」
レイが言った。
瞬間、マントの正面、切れ目から刃が延びる。
「っ!」
「行きますよ、レイ様!」
言ってアルスは駆け出した。
レイが間合いに入り次第、ナイフを一振り斬り上げて、紙一重で避けたところを、ナイフの刃の方向を変えて振り下ろす。
もう一度避けようとしたが、頬に刃先が擦り、血が滲む。
数ミリ単位で気づかれないよう刃先を延ばしたのだ。
「始めたばっかりにしては、嫌らしい真似をっ!」
叫びながらも、冷静に足払い。
それによって地面に倒れたアリスだが、即座に転がって距離を取り直し、体制を立て直す。
即座に走り直し、距離を詰め、先程と同じ右のナイフ。
少し大きく避けた途端、ナイフを見て気づく。
こちらはただのナイフなのだ。
伸びも縮みもしない。
ならばともう片方の手に目を向けた瞬間、既に刃は延び始めていた。
身をのけぞって回避して、眼前で延び切った刃を蹴る。
延ばしすぎて重くなった刃を蹴られて体制を崩したところを、レイが攻める。
アルスがナイフを縮めるのを待たずに、もう片方のナイフを空高く蹴り飛ばす。
武器がナイフ一つへと減ったアルスは、縮みきったナイフを、刃先が地面に当たった状態で延ばし、再度距離を取る。
落ちてきたナイフを空中でキャッチしたレイは、そのまま大きく振りかぶって、ナイフを投擲した。
「あっ、誰か!」
ナイフを投げてから、やり過ぎたと気づく。
レオンは走り出し、アリスはレーザーを放ち、ヴァイオレットは反射の円盤を出し。
レイも炎を放った。
しかしナイフの方が早い。
転移も距離の計算が間に合わない。
刺さる、そう誰もが思った瞬間、アルスは頭に向かって進むナイフと自分の間に、手を差し出したのだ。
ナイフは手を貫通、眼球に僅かに刃先が触れている。
しかし、叫び声一つ上げないのだ。
それどころか、もう片手でナイフを抜いて、魔法で傷を治癒。
ナイフを投げ返しまでしたのだ。
レイはそれを、軽く転移で回避。
次の瞬間テストは、ヴァイオレットの拍手によって幕を閉じた。
●●●●●●
テストの結果は、合格。
それに伴い、リヴァイアサンとの戦い方は大方決まった。
レイとヴァイオレットが主な攻撃担当で、アリスはリヴァイアサンが水辺に上がった際に攻撃に参加。
それ以外の時は、アルスと共に避難誘導だが、戦いが始まれば殆ど、リヴァイアサンは頭を出しっぱなしと予想されている。
レオンは戦闘の流れ弾から人々を護る役割だ。
アルスを護らなくて良い分、他の人々に集中出来る。
「それじゃあ今日、リヴァイアサンが暴れ始めるよ。時間は分からないから、朝かも知れないし、昼かも、夜かも知れない。一日気を抜かず、気張っていこうっ――――――」
深夜十二時、日付が変わった時間。
一日の激励にとヴァイオレットは語った。
そしてそして話を終える直前に、突然騒音が鳴り響いた。
突然大量の雨水が屋根を叩くような音だ。
まさかと思い、全員慌てて家を出る。
そして、それは居た。
海から体を出して、口元に水を凝縮。
「師匠、飛ばします!」
そう言って、レイはヴァイオレットをリヴァイアサンの側へと転移させて、すぐに反射の円盤を出す事で、次の瞬間放たれた水を防ぐ。
ジェットの様に放たれた水は、リヴァイアサンに当たり次第身体中に広がって、薄い膜となった。
「割れるかと思った…………嫌だな」
屋根に立って、リヴァイアサンを見上げる。
ヴァイオレットが宙に掌を向けると、突然そこに槍が現れた。
黄金に輝く槍だ。
それを握って、振りかぶり、勢いよく投げつけた。
槍は空中で分裂して数を増やし、槍の雨となる。
しかし、リヴァイアサンは海の水を操って壁を作り出し、槍を防いだ。
「師匠、遅くなりました!」
「二年待った気分だよ」
天天羅蘇を発動した状態のレイが、少し遅れて到着。
その後に付いて、アリスもやって来た。
「アルス様は避難誘導を開始、レオン様もリヴァイアサンの攻撃を見やすい距離に位置取り完了しました」
「そっか、ありがとう」
レイは大きな炎の球を用意して、アリスはレーザーの狙いを定め、ヴァイオレットは新たな槍を持つ。
「それじゃあ愛弟子、アリスちゃん―――国でも救おうか」
手に自分で刺すの怖いなあ。
何この子




