アルスのテスト
言い忘れていましたが、十万文字突破しました。
これからもよろしくお願いします!
「まず―――簡単な倒し方としては、海に師匠を放り投げる」
「愛弟子、私泳げないよ!」
皆で机を囲む。
リヴァイアサンの対策会議だ。
倒し方をヴァイオレットに聞きはしたが、知識範囲外らしい。
「水の中で濡れない魔法とか、息できる魔法とか、無いんですか?」
「ある、あるとも。でもね愛弟子…………水の中はね、よく分からない生き物が多いんだよ」
「それ川でも池でも言ってるじゃないですか」
ヴァイオレットは魔法で、世界の半分を知っている。
世の中に存在する全ての生物、事情、それらの五割を完璧に知り尽くしているのだ。
だからこそ、生物が多すぎて五割に収まらないものが多い海に対して、強い恐怖心を抱いている。
「それじゃあ次に、アリスが上からバカほどレーザー撃って、起きる前に倒しちゃう」
「申し訳ございません―――私のレーザーはいわば、とても小さな粒子の集合体。ドラゴンの硬い鱗を削り取るためのものでして、水中戦闘には余り…………」
「と、言うことはつまり…………」
「はい、水中だと水により分散してしまいます」
初耳の情報。
レーザーがダメとなると、アリスを戦力として含めるのも少し難しくなった。
「今私達ができる無難策は、私と愛弟子が基本的に攻撃を。リヴァイアサンが水上に顔を出したらアリスちゃんも攻撃に加わって、アルスちゃんが後ろで避難誘導兼、回復役だけかな?」
「なあ姉さんよ、俺の事も忘れちゃあ困るぜ」
レオンが言った。
レオンは住居の提供だけだと思っていたレイは、少し驚く。
「おや、レオンくん。私達としては大喜びだけど、君も戦ってくれるのかい?」
「ああ、条件一つ、飲んでくれるからな」
「聞こうか。金なら愛弟子が大量に持ってるよ」
「いや、ちげえよ姉さん。姉さんはこの国見て、どう思った?」
「土地に救われてるね。例えばこの国が貿易に適した海沿いでなければ、王の無能に三日で崩れる」
「そうだ…………だからこの国良くしてくれ。あんたの噂なら知ってる。救国の一つや二つ、出来るんだろ?」
「まあ、三時のおやつ前だよ。了解した、この国治してあげる」
新戦力、確保。
レオンが盾として動けば、戦闘中の市民に対する被害を大幅に削れ、戦闘により集中出来る。
「それじゃあレオンくんには街の人と、回復役のアルスちゃんの護衛を――――――」
「私、自分で逃げれます!」
ヴァイオレットの言葉を遮って、アルスが言った。
それにアルス以外の全員が驚いて、目を向ける。
視線が一斉に集まるという緊張にも耐えて、アルスは言葉を続ける。
「私は、私を護るのに戦力が寄せられるのが嫌だからレオン様の元で鍛えました! 戦うのはまだ無理でも、自分で自分の身ぐらいなら護れます!」
鍛えたレオンが、誰よりも不安そうな顔をしている。
自分で教えたからこそ、教えられた本人異常に、アルスの力量を理解しているからだ。
「おい嬢ちゃん、それは流石に無理が――――――」
「じゃあいいかな」
今度は自分が言葉を遮って、ヴァイオレットが言う。
じゃあいいという言葉の真意は、未だヴァイオレット以外理解出来ていない。
「じゃあアルスちゃん、テストをしようか。合格なら自己防衛、不合格なら、お守り付きだ」
「の……望むところですっ!」
ヴァイオレットはレイの肩に触れた。
それを見たアリスも、今から何をするのか察してもう片方の肩に触れる。
ヴァイオレットの手招きに寄せられて、レオンとアルスもレイの背中に触れた。
「愛弟子、転移お願い。場所はそうだな…………この前二人でやったところ」
鬱憤晴らしをしたところ。
そう覚えた位置への座標を大雑把に予想して、転移した。
この野原ならば街から少し離れており、人が少なく、そして広い。
「アルスちゃん、武器は携帯してるね?」
「はい、小さいのでっ!」
そう言って、ナイフを二本取り出す。
持参した護身用の物と、レイから貰った伸縮自在の物だ。
「それじゃあ、そうだな…………愛弟子、素手でやって。手加減しちゃダメだよ? それ見て決めるんだから」
「俺ですか? それじゃあ師匠、剣預かってください」
理解した、今から何が行われるのか、どう試されるのかを。
レイは軽く体をほぐして、アルスはペン回しの様に手の周りでナイフを回す。
手首をほぐすのと、この少しの時間に少しでも扱いなれる様に。
せめてもの用心だ。
「それじゃあアルスちゃん―――愛弟子を殺すつもりで、頑張るんだよ」
その言葉が、テストの幕開けとなった。
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