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リヴァイアサン

 国に戻って二日、魔力は回復した。


 いい加減時間がないので、アリスとレイは海辺へと向かった。

 アルスは相変わらずレオンの家へと出向いており、ヴァイオレットはヤンの尋問に当たっているらしい。



「そういえば、何気に海来てなかったね」


「ええ…………しかしこれは、海なのですか?」



 何の異常もない、透き通った海を見てアリスは言った。

 とても不思議そうに言ったのだ。



「海というのは、もっとこう…………血みどろと言いますか、死屍累々というか…………」


「違う、違うから。やめようよ、そういうのは」



 なんとも対応し難い言葉を海に投げて、自分も海に視点を向ける。

 本当に何の異常もない、ただの海だ。



「アリス、海の中見れる?」


「では、見てきます」


「いや、見てこないで。千里眼とかで」


「了解致しました、マスター」



 (しばら)くの静止―――その後眉に皺を寄せて、アリスは口を開いた。



「底に、大きなドラゴンの様な、蛇の様な、魚の様な、大きな生物が………!」


「一番厄介なのが…………」



 海のドラゴンと恐れられる魔物、リヴァイアサン。

 水を操り海を割り、国中に大暴雨を降り荒らす。



「恐らく王の切り札だ―――リヴァイアサンが暴れればこの国は沈む。仕方ないな…………直接話を聞きに行こう」


「はい、マスター!」



 今朝、ここ数日問題を起こすとヴァイオレットに伝えた。

 その合図は、空中での爆発。



「手榴―――一弾」



 空へと手を向けて、火の球を飛ばす。

 レイの手と細い火の糸で繋がっており、手を引いて糸を抜いた瞬間火の玉は膨張、爆音を鳴らして大爆発した。


 港はその爆破に騒ぎ、レイは足元からの炎噴射で飛び上がり、アリスは黒鍵を使用した高速移動でそれを追う。


 屋根伝いに駆けるアリスを確認して、レイは加速。


 城の最上階、王の居る部屋まで飛び続ける。


 途中に一度大きな地震が発生したので、ヴァイオレットが移動を開始したのだと理解する。



「アリス、行ける?!」


「はい、お任せを!」



 王の間の窓辺から外を覗く兵を見て、アリスはレイに応える。



「黒鍵、解放」



 言うと、黒鍵が急激に風の放出を始める。

 アリスの足回りは、竜巻が凝縮された様な状態だ。


 その力を利用して飛び上がり、空中で身を回転させ、窓を蹴り破ると同時に剣を構えた兵も蹴飛ばす。



「敵襲! 王を護れッ!」


「有事です―――静かに」



 鎧の上からでも気を失う様な打撃を浴びせ、一人一人倒していく。

 蹴りと同時に相手を足場にして跳ね上がり、六人蹴散らした後に一度着地すると、背後から一人の兵が。


 高く掲げた剣を勢いよく振り下ろそうとした瞬間、室内を視野に捉えたレイが転移。

 剣を蹴り弾いてから、兵の頭に炎を浴びせた。



「今のは緩いから死んじゃいない。髪が焦げた程度だ。次誰か寄れば、今度は脳を焼くぞ!」



 兵の動きが停止。

 レイは部屋の中心から伸びる階段の上、王を見る。



「王、ちゃんとした形を取りたいところだけど仕方がない、諦めろ。二日後、お前の指揮下にあるリヴァイアサンが暴走を始める。何とかしろ」


「何とか………か」



 王は言った。

 尊大に、傲慢に。



「王たる俺、ユニルカ・シェヘラザードに、民如きに心を砕けと言うのか?」


「そうかユニルカ、ゲスか。ならいい………お前はリヴァイアサンを失う事になる」


「させると思うか?」


「お前のさせるさせないが必要だと思うか?」


「ああ、俺の国だ」



 ユニルカが言った瞬間、どこからともなく蝶が現れる。

 淡い緑の羽の蝶だ。



「今火を出すなよ? これの鱗粉は特殊でな、急激に熱されると小さく破裂。それが連鎖して大爆発を引き起こす」


「そうか……ところで、アリスは多少の爆発じゃ傷もつかないし、俺も今なら、自分の火から起きた爆発の炎ぐらい操作できる。お前はどう対処する?」



 それを聞いたユニルカが舌打ちをする。

 不機嫌そうに、忌々しそうに。



「まあ、今ここで爆発起こして城崩すつもりはない。お前が動かないなら用は無いよ。俺の知らせに感謝して、切り札のリヴァイアサンが倒されるのを見てろ」



 リヴァイアサン、水中の魔物ならば最強とも名高い相手に、後先考えてはいられない。


 レイは窓辺から飛び出して、アリスもそれに続いた。




 ●●●●●●




「そりゃあ大将、面白えこと始めたな」



 王宮から抜け出して、ヴァイオレットと合流。

 その後アルスを迎えに、事前に場所を聞いていたレオンの家へと向かう。

 アルスにも何かやらかすとは伝えたが、あまりにも突然の事なので説明をした。



「それじゃあ行く当てはねえんじゃねえか?」


「街から少し離れて野宿の予定。アリスが荷物とかは全部仕舞ってくれてるし、問題は無いと思うよ」


「リヴァイアサンなんかと戦うんなら、その前野宿じゃいけねえ。恩を返す、俺んち泊まってけよ大将!」



 レオンは、家の中を親指で示して言う。

 奥でレオンの出した菓子を頬張るヴァイオレット、アリス、アルスの三人はそれに反応する事なく、話が続く。



「多分ユニルカは俺を追うし、見つかれば面倒だけど、いいのか?」


「シャルルの旦那ならきっとこうした。俺はあの人の信念を継いで、命を継いでんだ。ここで日寄ってちゃあシャルルの旦那に笑われる」


「そうか……それじゃあ数日、世話かける」


読んでくださりありがとうございます!

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