表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/107

取り戻された威厳

「アリス、匿って!」


「マスター! お目覚めになられたのですか」



 部屋に飛び込んできたレイに、着替え中のアリスが言った。

 何かの作業で汚れたのか、メイド服からメイド服へと着替えるアリス。


 肌はあまり見えず、代わりに肌に張り付く、着る魔道具―――鎧裸( がいら)が見えた。

 肌とは違うが、これも背徳的。


 ノックもせずに飛び込んできたレイを見て、敵襲だと察したアリス。

 即座に靴を黒鍵へと履き替えて、ヴァイオレットが魔力を込め直した、完全に不完全ワールド・フル・オブ なる世界軸(・ディーフェクツ)を装備する。



「マスターはそこのベッドで寝ていてください。即刻終わらせますので」


「分かった、ありがとう……」



 アリスの部屋で、アリスのベッドに潜って、レイは再度眠りにつく。

 魔力の回復には睡眠が最適だ。


 普段ならこの状況で眠る事はないが、この様な状況のアリスには、有無を言わさない様な強さがあった。


 レイがベッドに横たわって十秒後、アリスが扉を蹴破った。

 その際のヤンごと、思い切り蹴ったのだ。



「あれえ? 女の子?」


「私は機械です、性別はございません」


「ふーん…………じゃあまだ、二人っきりだっ!」



 蹴りを両手で防いだヤンが言う。

 アリスの事を、人ではなく個で数えたのだ。



「マスターは休息を必要としていますので、お引き取りをっ!」



 蹴りを放った、安定しない体の状態からの、黒鍵による風噴射を利用した変速移動。

 人の力だけでは不可能な動きで、アリスはヤンを蹴りつける。



「お掃除ロボットは、黙ってゴミの多い廃品置き場に行って欲しいな!」



 通常では考えられない力から放たれる斬撃だが、鎧裸はその刃を通さない。

 黒鍵を使った姿勢の高速変更からの、後ろ蹴り。

 レーザーの追撃でヤンに距離を取らせてからの、黒鍵の風噴射掛ける、完全に不完全ワールド・フル・オブ なる世界軸(・ディーフェクツ)からモデル・ウィングを一瞬解放する事による超高速移動。


 (またた )きの間に距離を詰めて、ヤンの腹に掌底を叩き込んだ。



「どうか、ご帰宅願います」



 掌底を腹に打ち込んだ直後、腰を捻り体の向く方向を移動。

 廊下へと一度引いたヤンを更に、窓の外へと叩き出した。



「マスター、(しばら )くお待ちを」



 アリスは、自分の言う事に即従い眠りについたレイに向かい言ってから、自分も窓から飛び出した。



「蹴って叩いて、随分と行儀の悪いメイドがいたものだとヤンは驚愕さ。ガクガクブルブル、ぶるって足腰立たなくなるかと思ったよ」


「戯言に付き合うつまりはありません。即刻お帰り頂くか、ここで息を止めるか、二つに一つです」


「いやあ、違う。不良品のメイドを捨てに行ってから、旅人さんを殺すんだ」


「戯言と云うよりは、夢物語ですね」



 千里眼で地中を見る。

 小さな空間を見つけて、その場にレーザーの発射口を出現。

 即発射した。



「それは愚策だよ、ロボットちゃん」


「っ…………」



 レーザーが地面を(えぐ)る音を聞いて、態々余裕を大きく取って大袈裟に、アクロバティックにバク宙で回避。


 ヤンの体が宙に浮いた瞬間、アリスが距離を詰めて蹴りを放つが、それを待っていたと言わんばかりにナイフを投擲。

 鎧裸以前に、元々機械の為皮膚の奥が硬いアリスには通じなかったが、蹴りは弾かれた。


 アリスのレーザーで地面を砕き、ヤンの足場を不安定に。

 ヴァイオレットの何かしらの魔法で修復できるだろうと願っての作戦だ。


 どんどん地面を破壊して、足場をでこぼこに。

 立体的な、黒鍵での戦いに向いた戦闘空間を作り出した。



「黒鍵―――解放許可する」



 アリスが呟いた。

 瞬間、駆ける。


 先程とは比べ物にならない速度で走って跳んで、攻撃のタイミングを察知されない様に。

 特別力を込めて一っ飛びして、充分に加速された全身と、更に振われ加速された足から、凄まじい威力の蹴りが放たれた。


 蹴りは脇腹へとめり込んで、ヤンを軽々弾き飛ばす。

 ろくに受け身も取らず、着地もせず、地面に転がり倒れた後に、ヤンは少しふらつきながらも立ち上がった。



「今日は旅人さんを最初にするつもりだったのに…………いいや、あなた前菜にしてあげる」


「まだ分かりませんか…………なんのつもりですか?」



 ヤンが、刀を投げ捨てた。

 そして次の瞬間、地面が砕けた大きな岩を、片手で持ち上げてアリスへと投げた。



「っ無駄です!」



 レーザーで破壊。

 しかしすでに次の岩が飛んできており、破壊しても破壊しても投擲は続く。


 千里眼を使って、背後から攻撃したいところだが、岩の数が多すぎて別のことに集中すれば撃ち漏らす。



「そこまでだよ!」



 突然、高々と発せられた声に二人揃って一瞬硬直する。

 ストーカーをしていたヤンにも、直接話していたアリスにも、聞き覚えのある声だった。



「はいおしまい」



 硬直の次の瞬間、光る謎の輪がヤンを捕らえる。

 魔法で強化された筋力で破壊しようとするが、上手く力が入らない。



「魔法で拘束されて、魔法を使えないのは常識だよ」


「それって、世間の常識じゃないんだけどなあ」



 ヤンは強がるが、無駄だ。

 相手が相手、たとえ拘束を解けたとしても、次の瞬間には新たな方法で拘束される。


 メイス・フォン・ヴァイオレット、彼女の手からは、逃れられない。


あんた、強いのか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ