再会のお知らせ
今後のアリスの戦い方は、レーザーの使用と黒鍵による高速移動から繰り出される蹴りが主軸となる。
千里眼の装着が不安視されていたが、そこは流石の機械の体。
本来の眼球に仕込まれた機能を、全て千里眼へと移してから、装備の手入れをするように、眼球を取り替えてしまったのだ。
「アリス、楽しいかい」
「はい! マスター!」
心なしか、アリスの声のがいつもの三割り増しで弾んで聞こえた。
ヴァイオレットより貰い受けた装備を、レイの部屋で全て装着して披露している。
昔兵器として使われていたならば、これは人として成熟しきっていないアリスの幼い部分なのかもしれないなどとレイは考えながらも、その姿を眺めていた。
そんな考えの傍、魔道具の仕組みに関心する。
例えば―――羽の魔道具である、完全に不完全な世界軸。
これはアリスの背中から拳一つ分離れた位置に浮かんでいるが、羽一枚一枚に貯められた魔力が背中と魔道具を繋いでいるから一定の距離を保っているのだ。
「マスター、一つお願いがあるのですが――――――」
●●●●●●
世界と世界の間には、無尽蔵の魔力が存在する。
世界同士が衝突して砕けないよう、クッションの役割を、世界同士がうまく噛み合うよう、関節の役割を。
その世界同士を生き物が通過すれば、その生き物はスポンジが水を吸うように、大量の魔力を吸収する事が出来る。
その生き物は―――或いは優秀な魔術師となり、或いは優秀な魔力タンクとなり、或いは優秀な餌となり、或いは優秀な信仰対象となり、或いは優秀な囮となり、或いは優秀な犠牲となる。
どう使おうと優秀なその素体を手に入れるために、各国は知恵を絞った。
そして千年前に、とある計画を成功させた国がある。
その計画は、世界規模の誘拐事件。
空間の神を共犯者にして、別の世界から一人の人間を誘拐した。
ただの青年が、大人しい、十代後半の少年が、この世界に現れたのだ。
青年は一日で状況を理解して、三日泣いて、十日文句を垂れた後に、世界の半分を沈めた。
その際の衝撃で、世界の大陸は二つに割れた。
西の大陸と、東の大陸。
主に青年の怒りに触れたのは、東の大陸だが、どこの国かは分かっていない。
「――――――マスター」
「ん? 呼んだ?」
「あ、その……いえ。この本、間違いなく、間違いなく前マスターの事が記されている本なのです…………!」
魔道具を手に入れた翌日、レイとアリスは本屋へとやって来た。
そこでアリスは、時間潰しの為に一冊の本だけスキャンする事なく、手に取り読み始めた。
その本を読み始めてすぐに、アリスの様子が変わったのだ。
「マスターが昔、話してくれたのです。自分は最初、攫われたのだと」
そう言ってから、食らいつくようにアリスは本を読み込む。
四時間かけて、しっかりと。
しかし、次第に表情が暗く。
レイも大体の成果を察した。
「もう何も無かった?」
「はい…………残りはこの国がどのようにして割れた大陸の隅の土地で栄えたかなどの、言ってしまえば初代国王の武勇伝のようなものでした」
「そりゃ災難な。まあ、少しは分かったんだし、まだ足掛かりが途切れたわけじゃあ無い」
「そうですね、イルマーニ様から聞いた方が、こちら方にいらっしゃる筈です」
「そう、今日から探し始めようか」
「私は早ければ早いほど…………」
「分かった、取り敢えずじゃあ、十二時だしお昼食べてからにしよっか」
ちょうど正午、皆一度食事に出たのか、一時的に図書館内の人口が激減する。
昼はレイが、昨晩の見張りの兵からオススメの店を聞いていた。
図書館近くのレストランで、安いが味が良く、店内の雰囲気も落ち着いているとのこと。
レイはその店に行くのを楽しみにしながら、午前中を過ごしていたのだ。
●●●●●●
「レイ…………!」
「っ、こんな所で、奇遇というか、何というか」
レストランに入ってすぐ、レイは固まって言った。
それをアリスは不思議そうに眺めている。
レイの名を呼んだ男は、ランズ・バルガルド。
アリスに出会う前にレイが所属していたパーティーの、リーダーである。
「よおランズ、久しぶり」
「ああ、そうだな…………まあ久しぶりついでだ、少し話そうぜ。こっちの席座れよ」
ランズに誘われるがまま、レイとアリスは席へと向かう。
他のパーティーメンバーの姿は無く、ランズ一人だ。
「他のメンバーは?」
「この国に新しいメンバーの実家があってな、今は全員そこだ」
「てことは、女か。俺居なくなると、とうとう男のメンバーはバルドだけだもんな」
「ああ、そのバルドと新メンバーがちと面倒なことになっててな、逃げて来た」
「あの色男、何をやってんだか」
最後話したのはパーティーをクビになったとき。
にも関わらず、二人の雰囲気は悪くない。
話についていけないアリスを置いて、二人は世間話を続けた。
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