ミノタウロス
次に向かう国は、リデラント。
海に沿う形で出来た国で、なんと街一つだけ。
世界最小国家と呼ばれているが、海の魔物を操る国王の魔法で、絶大な戦力を得ている。
アルマーニ教国では見つからなかった、ヘルメイルに対する魔物の襲撃の犯人がその国王なのではないかと、レイは考える。
「ではマスター、犯人はその国王以外あり得ないのでは?」
「いかんせん、魔物の操作されてる位置と、国王のいる場所が遠過ぎるんだ」
アルマーニとリデラントの距離は遠く、国と国との間にヘルメイルが挟まる形となる。
現在レイ達はヘルメイルの中の小さな町にある宿屋に泊まっているが、この場から王城のある街、魔物の襲撃があったマリッサムまでは、馬でも五ヶ月はかかる。
その長距離で、魔物を操作し続けるなんて、魔導王の全盛期でもない限り不可能だ。
「レイ様―――次の国へ、リデラントへと着くのは何時ごろでしょうか?」
「そうだな…………これから街によらないで移動すれば、早くて二週間ってところかな」
「なら、荷物の補充は必要ありませんね」
「ああ、一ヶ月はもつよ」
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町を出てから、四日ほど馬車を走らせていた。
すると途中、道の真ん中に、人が倒れているのを発見する。
巨大な盾を持った、自身も大柄な男。
面倒事の匂いがしたので無視して通り過ぎようとするが、不運な事に、レイとその男の、目が合ってしまったのだ。
「っ―――! 生き返った! 命の恩人だ、恩に切るぜ、大将っ!」
「いや、大将じゃない」
水を与えると、一息でそれを飲み干して、男は言った。
着ているものは、厚手の下着のみ。
本来鎧の下に着るものだ、この男がヒョロい金で成り上がったような騎士ならば納得だが、鎧を着ずとも既に筋肉が鎧の役割を果たしている様なこの男が、追い剥ぎにあうとはとても思えなかった。
つまり―――何らかの強い敵がいる、面倒事だ。
「俺ァ冒険者やってる、レオン・バーバルドってもんでな、この近くのダンジョンで近頃魔物が溢れるってもんだからァ、それを退治しにきたって訳でさあ!」
「分かった、止めない。どうぞ」
「もう行ったんでさァ大将!」
そう言って、レオンは地面を強く殴った。
それだけで地面は揺れ、少し馬が怯む。
「行ったけど、負けた。リーダーも仲間も死んで、俺だけが逃げ果せたんでさァ」
「仲間? まさか…………見捨てて逃げたのか?」
「俺だって! 逃げたいなんて思いやしねえよ! でもリーダーが、拾ってやった恩を返せと、その為に生きろと命令したんだァ!」
レイは眉間に皺を寄せる。
これだから、嫌だったのだと。
アリス達へと視線を向けると、二人揃って小さく頷いた。
「なあレオン…………そのダンジョン、もう一回行こう」
●●●●●●
「ここでさァ、大将」
「確かに、嫌な瘴気が出てる」
苔の生えた石階段を、森の獣道を進んだ先で見つけた。
奥を探ると、魔物特有の魔力、俗に瘴気と呼ばれるものが漏れ出している。
「アリス、探知」
「既に完了しています。最奥の間までのルート、確認しました」
「じゃあアリス後ろ俺前で、アルスを挟む形で」
「了解しました、マスター」
そう言うと、レオン含めた四人はダンジョンの中へと進む。
レオンはレイの横で、盾を構えている。
「さっきも言ったが、敵はミノタウロス。巨大な人型の牛でございやす。異様に力が強く、並大抵の人間なら防御してもその腕がへし折れやす」
「パワータイプか…………一応聞くけど、レオンはミノタウロスの攻撃防げる?」
「三発目までならなんとか。それ以上は盾が砕けやす」
「一度防げれば充分だ。後は手でも足でも首だろうと、好きに斬れると思う」
「そりゃあ心強い」
そんな話をしていると、一つ足音が。
話をすればなんとやらの、ミノタウロスだ。
「さて、やろうか」
レイは剣を抜いて、ミノタウロスへと歩み寄る。
ミノタウロスが持っている武器は、巨大な棍棒。
それだけで、人の丈ほどの大きさがある。
それを持つのはさらに大きなミノタウロスと来た、直撃しては、溜まったものではないが――――――。
「試しに俺一人でやる。不味そうだった援護をお願い」
「了解しました、マスター」
軽い足取りで歩み寄るレイに狙いを定めて、ミノタウロスは持ち上げた棍棒を振り下ろした。
しかし、レイは避けない。
剣を頭上に構えて、勢い良く切り上げた。
「ドラゴンよりは軽いとなっ!」
棍棒を切断してから、ミノタウロスの懐へと潜り込む。
脇腹から刃を侵入させて、腕を含めて切り上げ。
刃がミノタウロスの体から飛び出したところで刃の向きを切り替えて、首を斬り落とした。
「十体までなら、魔法なしでいける」
四章、開始です




