完全勝利
街を出て、快適な空の旅。
アリスは夜寝はするが、本来機械のため睡眠は不要。
アルスはお姫様抱っこされたまま眠るので、本人曰く城のベッドよりも至高だそうだ。
一日と一晩休まずに飛び続けると、馬車よりも早く国境を越えて、以前イルマーニに出会った地点へと辿り着く。
「あれ、居ませんね」
「…………少し上昇します」
より高い位置へと飛んで広く見渡すが、イルマーニの姿は愚か、霧すらも見当たらない。
所々小さなクレーターがあり、レイの戦いが激しかった事がよく分かる。
「レイさん、勝ったんでしょうか?」
「それだと望ましいのですが………………」
流石のアリスも少し不安を覚える。
相打ちになった可能性は、決してゼロでは無いのだ。
「アリス様、下に人が」
「まさか、マスター!」
アリスは急降下した。
アルスの言った人の顔も姿も確認せずに、真っ直ぐに。
「自分で降りてくるとは、思い上がり…………」
「貴方は…………早かったですね」
街に居た男と、聖騎士、それと同じく自動人形の馬が居た。
「俺はアルマーニ戦闘部隊隊長のミルゲー。大人しく、捕まってもらう」
瞬間―――男は剣を抜いて、それと同時に放たれたレーザーを回避した。
「俺は司教とは違う―――読み誤るなよ?」
「…………ッ!」
突然ミルゲーは距離を詰めて、アリスへと斬りかかった。
馬に乗っているわけではなく、徒歩で、ただ走ったのだ。
アリスはレーザーを放つが、ミルゲーは一歩も引かずにそれを回避。
更に反撃を繰り出す。
「その攻撃、薄鈍以外には当たらねえぞ」
「何故私達を狙うのですか」
「お国の指令だからな、諦めろ」
そう言ってミルゲーは、アリスの意識が剣に向いたところを、意表を突いて蹴り飛ばす。
「お前のその見た目、斬り難いな。兵器を女の形に作って、命乞いも想定に入れてんのか? それなら、今が使い時だぜ」
背後からレーザーを放っても易々と回避。
まるで隙が見当たらないのだ。
「仕方ないですねっ!」
倒れた状態から跳ね上がって、アルスを抱えて上昇。
即座に逃走を図る。
「二度は無いのですよ―――聖騎士よ、放て」
聖騎士は槍を持って投擲の構え。
自動人形の仕掛けで、槍に電気を纏わせた。
そしてそれを、投擲。
「―――っああああああああああ!」
「鈍らが…………」
刺さりはしないが、機械の体は良く電気を通して、アリスに千年ぶりのダメージを与えた。
「無傷…………いや、体内は焼けているのか?」
「アリス様!」
咄嗟に投げられたアルスが駆け寄ろうとするが、戦闘力は皆無。
あっという間に聖騎士に捕らえられる。
「っ…………離しなさい…………さもなければっ…………」
「さもなければ、どうする? 何をする? 何が出来る?」
レーザーを放ちはするが、当然回避。
一発どころでは無い。
人一人に対して、十発同時掃射。
前にドラゴンと戦った際も、五発だった。
にも関わらず、男は易々と全てを回避する。
アリスは力尽きて、男は剣を振り上げる。
聖騎士に捕まったアルスは叫び声を上げるが、辺りには誰も居ない。
正に、絶体絶命であった。
「さらばだ、千年前の古き戦乙女よ――――――?」
刃を振り下ろそうとした瞬間、不審な物が現れた。
霧の塊、異界への道。
突然現れた、大きな霧の塊からは、二人の生き物が現れた。
一人は緑色の髪で、長髪。
皇帝の様な豪華な服を着た、若く美しい男と――――――。
「導火線――――――ボム」
「――――――っ!」
瞬間、緑色の髪の男がアリスを抱えてミルゲーから離れる。
ミルゲーの足元には炎が伸びて、即座に爆発した。
「――――――マスター」
「あと少しだけ、待ってて」
レイは言った。
爆煙からは、無傷のアルゲーが出てくるが、レイは炎剣と呟いて、炎の剣を二つ作ってから、駆け出していた。
「ッ―――レイ・イグニス、死んだのではなかったのか!」
ミルゲーが剣を振るう。
それを回避して、細い火の糸で繋いだ炎剣を投擲。
糸をミルゲーの首に引っ掛けてから、糸を引いて剣を手元に戻す。
「糸引き―――ボム」
言うと、火の糸が爆発。
そこまでのダメージは無く、あくまでも目眩し、時間稼ぎ用の魔法だ。
目がチカついて、ミルゲーの視界は真っ白だが、近づけば音だけにでも反応されて斬られる。
だからこそ、ここは油断せずに両拳に炎を纏わせて、地面へと打ち付ける。
「あれは、お師匠様との手合わせで使おうとしてた――――――」
アリスが言う。
レイの拳の炎が地面へと広がり、円を描いた。
「八星―――炎の領域踏めば前進。後去る者は救われよう」
「目が見えなくともっ………………!」
「超越魔法、領界炎海!」
炎の円は壁となり、内側の空間、敵を焼き尽くす。
敵を焼いた炎は無駄な熱として外へと放出され、その形は敵を弔う十字架となった。
「みんな揃って、十字架が好きなんだろ?」
頭は仕留めた。
しかし聖騎士は止まらない―――別に操縦者がいるのだ。
聖騎士達は十字架の長剣を抜こうとするが、体が動かない。
「関節を溶かした。次からはもっと丈夫な素材にして貰うんだな」
肩より先を切断して、アルスの救助も完了。
完全勝利である。




