表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/107

聖なる人形

「アンタ、何をしたんだい!」



 早朝に、宿屋の女将であるパーキンが突然部屋へとやって来た。


 青ざめた顔で、慌てた様子で。



「どうかしましたか?」


「どうしたもこうしたも、聖騎士様がアンタを出す様言ってんだよ!」



 アリスは納得して、パーキンが部屋にいる状態で着替えを始める。

 パーキンの慌てたような足音で起きただけで、今の今まで寝ていた。

 つまりは未だパジャマなのだ、仕方ない。



「アルス様、起きてください」


「んっ……母さん、今日は休みだからって、女神! いや、アリス様! おはようございます」



 寝ぼけた発言をしながらも、寝起き直後に目の前至近距離にあったアリスの顔で完全に目が覚める。

 それから深々と頭を下げて挨拶をした後に、場の空気がおかしいことに気がつく。



「私、そんなに寝相悪かったでしょうか?」


「聖騎士が来ました。早く着替えてください」


「はいっ!」



 アルスも人目を無視して着替え始める。


 アリスの場合は人に対する無関心や、羞恥心の欠落から来る行動だが、アルスの場合は人に対する関心も、羞恥心も存在する。


 それら全てを踏まえた上での、露出癖だ。



「着替え終了しました!」


「それでは、パーキン様はこれを」



 一、十、百、千、万、十万、五十万コルを部屋へと残すと、アルスを抱き上げる。



「お姫様抱っこ! 私死ぬときはこの体制がいいです!」


「アルス様、舌を噛んでしまわれない様に、口を閉じてください」 



 キュッと口を結ぶアルスを見てから、アリスはベッドのシーツを持って、抱えるアルスに被せる。



「ではパーキン様、お世話になりました」



 助走をつけて、シーツで防御して、更にアルスの事は自分の腕で守った状態で、窓を突き破って飛び出した。



「出たぞ! 捕らえろおおお!」



 男の叫び声が響く。

 すると、聖騎士、全身輝く鎧で包んだ者達が一斉にアリスへと視線を向けた。



「アルス様、舌をお出しにならないでくださいね」



 地面に着地すると同時、膝をクッションにして曲げた状態から、更に跳躍。


 向かいの建物の屋根へと飛び乗って、家々の上を駆け抜ける。



「逃がすな! あの女が、司教殺しの犯人だ!」


「知っている…………何故?」



 叫び声を聞いて、疑問を浮かべる。

 死体は自分で粒子へと分解して、収納した。

 血液もだ。


 証拠は一つも残っていなかったし、近くに敵の気配も無かった。



「聖騎士、その見た目で身軽なのですね」



 屋根へとよじ登って来た聖騎士へと言うが、誰一人、少しも反応しない。


 ただ黙って剣を抜き、構えている。



「仕方ないですね…………」



 発射口を出して、標準を定める。

 聖騎士がアリス目掛けて走り出した瞬間、撃った。



「なっ! っ自動人形( オートドール)ですか…………」



 楽々と、頭は弾き飛ばされた。

 しかし動きは止まらない。


 古代兵器―――自動人形(オートドール)

 使用者の指令に従って、ただ愚直に行動を続ける。


 昨晩の鏡、無方鏡水(むほうきょうすい )も古代兵器であり、その為に対処法までアリスは覚えている。


 そして自動人形( オートドール)の対処法は、使用者の殺害以外存在しない。


 使用者は自分が逃げてしまったので近くはない。

 ならばアリスはどうするか―――答え、またもや逃走だ。


 聖騎士を数体蹴散らして、道が空き次第逃げ出す。

 今度は路地裏へと入り、鎧は通り難いであろう道を進む。



「アルス様、意識は!」


「ギリギリありますけど! いい匂いがしてやばいです!」



 お姫様抱っこというには力強く、最早全力疾走でも落とさぬ様、胸にアルスを押し当てている状態だ。


 路地裏を走り続け、人の気配がなくなったところで(ようや)く止まる。



「お疲れですか? アリス様」


「いえ、もう逃走は必要ないと判断したまでです。少しここに隠れましょう」



 日が当たらず、雨は防げ、人目も避けられる。

 最高のポジションを見つけた。


 耳をすませば聖騎士が駆け回る音が聞こえるが、近づいてくる様子はない。



「寝起きでの運動でしたが、アルス様の体調は如何(いかが)でしょうか?」


「朝から至福の一時でした! 今死んでも悔いはないです」


「大丈夫そうですね―――それでは、今からやる事を説明します」


「はいっ!」



 アルスは静かに元気良く返事をした。

 人生一の、良い目覚めを体験したからだ。



「取り敢えず街を出て、徒歩でイルマーニを見に行きます」


「それって大丈夫なのですか? 前みたいな事になったら…………」


「平気です。理由としては、まず私達は遠目に様子を見るだけであるのと、マスターが戦闘中だからです」


「マスターって、レイ様がですか?! 大変心苦しく言い難いのですが…………流石にこの日数だと…………」


「いえ、生きてます」



 アリスは食い気味に、間髪入れず言った。

 急りは無い―――あるのはただ、確信だけだ。



「マスターはリュックを持っていかれました。逃げながらの長期戦闘に備えてです。短期決戦な単なる時間稼ぎならば、荷物を極限まで減らした方が良いですからね。マスターは絶対に、イルマーニ相手に勝利するおつもりです」


「そんな理由が!」



 納得するアルスを見て、アリスは微笑む。

 それを見てアルスは胸を抑え、何かダメージを食らった。



「それにマスターは、私にまたねと言って下さいました。きっと再会して下さるのです」


「アリス様――――――?!」



 話していると突然、すぐ側の建物の壁を突き破り、聖騎士が飛び出して来た。



「やっと見つけたぞ、女ども。今こそ制裁の時―――観念して貰うぞ」


「いえ、結構です」



 発射口を自分の足元へと発現させて、それに乗る。

 聖騎士と男を別の発射口で牽制しながら、再度アルスを抱き上げた。



「では、私達は国を出ますので。二度と出会わない事を、神にでも祈ってください」



 発射口を使って上昇。

 槍を持った聖騎士達が投擲の構えを取ったので、レーザーで撃ち抜いてから離脱した。

お風呂入ってきます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ