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開戦

「アルブレヒト王、昼の三人組から、何か分かりましたか?」


「ああ―――装備品の一部に、特定の地域のみに生えているサクミアの木が使われていましたので、そこからは靴底の土の質や、胃の中に残っていた保存食の制作方法などの情報の統計で、北西の隣国、アルマーニ教国の諜報員だと特定出来ました」


「胃の中まで…………」



 夕飯を食べたばかりなので、胃の中の話はあまり良い気がしない。

 もし諜報員をやるのたらば、装備も食べ物も一新しようと心に誓いながらも、レイはアルマーニの評判を思い出す。


 国民の幸福度世界一の国であり、脱国者の数も世界一位。

 国から逃げ出した者曰く、二度と近付きたくも、名も聞きたく無いと。



「じゃあ今回の魔物騒ぎは…………」


「恐らくは、直接的にアルマーニ教国が関わっているでしょう」


「厄介な…………」



 メルヘイルで千年前の情報が見つからなければ、神話などで歴史に造詣が深く、更に距離が近いということで、次の目的地はアルマーニ教国だとレイは決めていた。


 悪評は多いが、自分とアリスの二人ならばある程度の危機は解決出来ると思ったのだ。


 しかし、一気に行く気が失せた。

 自分達を始末しようとしていたのだ、行っても歓迎はされないだろうし、言ってしまえば萎えた。


 しかし、情報を探すためならば向かわねばならないのも事実。

 理性と感情で食い違ってしまった。



「厄介ですが、今は放置しか出来ませぬな」


「はい―――ひとまず今は目の先の、魔物の大群を倒さなきゃですからね」


「その通りです。魔力回路を渡してしまったため、私に出来る事は少ないですが、出来る限りの援護は致します」


「はい、よろしくお願いします!」



 魔物の進行速度は増している。

 明日の昼にはマリッサムに到着するだろう。


 開戦と同時に終戦させる。

 その様な意気込みで、レイは部屋に戻り眠りにつこうと――――――。



「マスターーーー!」


「―――?!」



 レイが眠りにつこうとした直前、アリスが泣きながら部屋へと突然してきた。

 本を読み過ぎて、影響され過ぎて、性格がおかしなことになっているのだ。



「どうしたの、アリス」


「ありました、あったのです! 前マスターのお名前が、あったのです!」


「本当! おめでとう!」



 まさかまさかの大宿願。

 泣きながら入って来たのでまたダメだったかと思いきや、嬉し泣きの様だとレイは思う。



「おめでたくは、無いのです!」


「ん? 見つかったんじゃないの?」


「間違っているのです! 前マスターば邪智暴虐なければ、世界に終焉をもたらさないし、世紀の女好きでもないのです!」


「情報がどこかで変わってるってこと?」


「その通りですマスター!」



 そう言ってアリスは、寝ようとしてベッドに横になっていたレイの胴体にしがみついたまま、咽び泣く。


 それを見たレイは慰めの言葉の一つでもかけようかと思ったが、今日は疲れたので何も言わずに、気にせず寝た。




 ●●●●●●




「戦線、こちらへ近づいています!」「あと五分足らずで目視可能!」「魔導隊、準備完了いたしました!」「まだ矢の数が足りてないぞ!」



 兵達が叫び声にも近い声で報告をしながら戦いの準備をする中、

 街の女子供は家に籠り、男手は兵の手伝いで荷物を運んでいる。



「彼ら魔導隊が魔物の進行を食い止めますので、その間に詠唱、殲滅という単純な作戦ですな」


「話には聞いてましたが、やはりこの国の戦略とも言えない戦略は俺好みです」


「それは良い! 私達は細々とした動きを好みません! 最大の一を持って群を穿つ―――それこそが我が国のやり方で」



 アルブレヒトは上機嫌だ。

 今日で不安の種が消えるからか、戦いが好きだからか。



「さて、そろそろ魔物共がこちらへやって来ますな」


「じゃあ、自分も壁の外へ向かいます。アルブレヒト王は、壁の上へ」


「どうか、ご健闘を」



 レイは一度頭を下げて、それから駆け足気味で壁の外へと向かう。



「お疲れ様です! 魔物の進行状況は?」


「はっ! もう姿を見せるであります!」



 嫌な地響きが鳴り響く。

 聞き覚えのある、地響き。



「――――――ドラゴンだああああ!」



 一人の兵士が叫んだ。

 レイはあの、不審な三人との戦闘に夢中ななり忘れていたのだ。

 そういえば、ドラゴンと一言、聞こえたかもしれないと。



「ごめんなさい、あれは焼けないかも」



 五万を超える魔物と、その最奥には真っ赤な甲殻のドラゴン。

 改めて、これを焼くと考えたレイは身震いをして、拳を握りしめる。


 魔導隊が掌の先に魔法を溜めて、敵群へと向ける。


 威力を高める為に溜めて、溜めて、溜めて。

 魔物共が射程範囲に入った瞬間、レイがこの街に来た時出会った大柄で豪華な鎧の男。


 兵士長―――キルケー・ダンガンが叫んだ。



「敵群射程範囲内侵入! 魔導隊一斉掃射構え、放てえええ!」



 その声が響くと同時に、掌の先に溜められた魔法は一斉に魔物へと向けて打ち出され、それが開戦の狼煙となった。

この後一時投稿の回に、ほんの少し人によっては気持ち悪いシーンがあるかも知れないので、無理な人はそのシーンだけ読み飛ばしていただけると幸いです。

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