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最適解

「これは、魔力回路が著しく破損していますね」



 真面目な少女、アルスはレイの背中を触りながら言った。

 部屋からアリスが居ないと、あまりにも優秀。

 ほんの少し触れて見ただけで、原因を特定してしまったのだ。



「治りますか?」


「ええ、確実に―――二つの条件を満たせば、今週中にでも完治させて見せましょう」



 その言葉を聞いて、アルブレヒトはおおっと、声を上げた。



「まず一つ目、アリス様に合わせてくれる事」



 レイはダメな気がしてきた。



「次に―――誰か一人、優秀な魔術師一人の未来を潰す事」


「―――え?」


「魔力回路を移植します。貴方の魔法に耐えられる、優秀な魔力回路を。魔法の優秀さは魔力回路の優秀さに比例します。一度潰えた貴方の才能を再臨させるには、誰か一人の未来を奪うしか無いのですよ」



 突然の情報が、今日は多い。

 待ってただとか、王様だとか、神様だとか、魔力回路だとか、移植だとか、才能だとか、国の危機だとか。


 疲れたレイは、一筋の光に頼った。



「取り敢えず、国の危機っていうのが何なのか教えてください。それが分からないと、俺も対応出来ない」



 言うと、アルブレヒトは忘れていたとでも言いたげに語り出す。



「実はここ数年、この国付近での魔物、魔獣の発生数が激増しているのですよ。発生源を調べたところ、穴に詰められたウジの様に、大量の魔物の存在を確認したのです。いくら倒しても魔物は減らず、魔物から発せられる特殊な魔力で動物は魔獣化。正に敵の数は無尽蔵というわけなのです!」


「それは………」



 なんとも、最悪のパターン。


 レイの頼る光とは、アリスのこと。


 旅の途中アリスから聞いた話だと、アリスは強力個体討伐用に作られており、群殲滅用ではないのだという。


 現在修復が済んでいる攻撃手段のレーザーは、巨大な個の為に存在するのであって、広範囲攻撃には向いていないのだ。



「その魔物達は、今どうしているのですか?」


「少しずつ、進軍をしているのです…………我が国の兵が足止めはしているものの、今週中にはやって来るかと」



 時間は無い。

 今から大規模な仕掛けを用意するのは難しいだろうし、他の国からの増援も間に合わない。



「奥には、あの場に魔物共が集まるきっかけとなった、強力な魔物もいるやもしれません」



 それはアリスに頼む。

 今、レイの頭に最適解は即座に頭に浮かんだが、つらい。



「………………一晩だけ、考えさせてください」




 ●●●●●●




 話を終えて、王城の借りた部屋で一休みする。

 夕飯は軽く食べたが、あまり味を覚えていない。


 ベッドで横になって、天井を眺めていると、部屋の扉がノックされる。



「マスター、もうお休みになられたでしょうか?」


「あ……いや、まだ起きてるよ。どうぞ入ってきて」



 言いながら起き上がると、盆に二つ紅茶入りのティーカップを乗せて持ってきた、アリスが部屋へと入ってくる。



「両手…………ごめん、開ければよかった」


「いえ、私のバランス感覚は中々の物なのですよ?」


「そっか、よかった」



 机に盆を置いて、その側の椅子に二人は腰掛ける。

 紅茶は暖かく、寝る前にはとても心地よい。



「どうしたのアリス、こんな時間に」


「食事の際、マスターの顔色があまり優れていない様子でしたので…………」


「嘘、うわ………恥ずかしい。ごめん、心配させちゃったよね」


「謝る必要はないのです。長旅をして、ようやく街に着いたと思えば今日の行動内容。機械の身の私でも、少し疲れました。人の身のマスターならば、体調も少しは崩されるでしょう」



 アリスは優しい音色で言った。

 慈しむ様に、優しく。



「少し話を聞いてくれるかな」


「はい、マスターの願いならば、夜が明けるまで聞き続け、相槌を打ちましょう」


「実は今日、少し難しい選択があってさ。最適解は分かってるんだけど、それを俺の口から言うにはあまりにも残酷で―――相手に、今後指を加えたまま物を見ることしか出来ない生き物になれって言うんだ。俺にその勇気は、湧きそうにないんだ」



 言うと、アリスは小さく笑った。

 それに少し恥ずかしくなり、レイは顔を背ける。



「私と初めて会った時、マスターは私に逃げる様言われましたね」


「うん、必要の無い話だったけどね」


「私はあれを聞くまで、マスターを利用するつもりでいました。外に出たら、捨てようかと」


「えっ……怖」


「嘘です。でも、ドラゴンを前に私を逃がそうと出来たのです。きっとマスターならば、正しい選択も出来ます」


「ありがとう、アリス―――少し勇気がついたよ」


「お力添え出来たならば、よかったです」




 ●●●●●●




 翌朝、レイは勇気を振り絞る。

 アリスに貰った、ちっぽけな勇気を。



「アルブレヒト王、解を得ました」


「実は私も、一つ案が浮かびましてな」




 アルブレヒトは言った。

 何かを覚悟したかの様な、眼差しで。



「多分答えは一緒ですね」


「恐らくは――――――アルブレヒト王よ、貴方の魔力回路を、俺にください。未来を、諦めてください」

読んでくださりありがとうございます!

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