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炒め飯

章の名前を変更しました。

「ドラゴンですかな? それはまた奇なことを言う」


「はい、ドラゴンです。運が良いのか悪いのか、ヘルメイス公爵もご存知でしょうが、我が師、ヴァイオレットも討伐し名を上げたかのドラゴンに、俺も出会いまして」


「それはなんとも! 素材が残っているならば、爪だけでも一軒家を買えるというドラゴンに師弟で出会うとは!」


「ええ―――ただあまりにも高価ですから。欲しがる人は多くとも、買える方が少ないのですよ」


「成る程、ならばその話、儂に持ってきて正解ですぞ! 誰にもこの話はやらぬ。儂が全て買い取りましょう!」


「本当ですか!」


「当然ですとも! 以前貴方の師であるヴァイオレット殿が仕留めたドラゴンも買おうとはしたのですが、王側に買い取られてしまいましてな。いやあ、この私歳五十になりましたが、この様に運が傾くとは」



 上機嫌に購入を約束してくれた事に安心していると、食堂の扉がノックされて、食事の乗ったカートを持った使用人が入ってくる。

 ヘルシーな、さっぱりとした食事が並ぶのを、以外な事にヘルメイス公爵は楽しそうに眺めていた。




 ●●●●●●




 翌日、レイはヘルメイス伯爵と昼に会う約束を取り付けて、やって来た。

 今度はアリスも一緒だ。


 事前にドラゴンの運び方を説明していたので、広い庭に連れられて、そこにドラゴンを出す様言われる



「じゃあアリス、お願い」



 レイが言ったと同時、アリスの掌から青い粒子が現れて、次第にドラゴンの体を形成して行く。


 それを見て、ヘルメイス公爵は腰を抜かしながら笑っていた。

 もはや壁を見ても笑いそうだ。



「ドラゴンも凄まじいが、アリス殿、貴殿の魔法も凄まじいな!」


「私ですか?」



 ヘルメイス公爵に突然話を振られたアリスは、キョトンとした表情をしている。



「この魔法さえ有れば、度荷物などを運ぶ手間は必要あるまい! 狩ってから時間が経つというのにこの様な、先程まで生きていたかの様な保存状態! ドラゴン一頭をしまえる容量! 態々国から国へと多くの馬車を送るのに金をかけずとも、貴殿一人の馬だけで事足りると来た!」


「あ、確かに」



 ぽろっと、レイが言葉を漏らした。

 初対面の際はドラゴンを最も容易く撃退してしまった戦力に驚いたが、よくよく考えればこの収納も凄まじい。

 これさえあれば、旅には不向きな大きなテントも持ち運び出来るし、食料だって底無し。

 旅の難易度が、一気に下がるのだ。



「このドラゴンだがの、儂の財布から兆と五千億コル出そう」


「――――――?!」



 ヘルメイス公爵は、当然の様に言った。

 一兆五千億コルとは、この国の王城建設費とほぼ同じ。


 この金があれば、戦争だって起こせる額だ。


 高くなるとは考えていたが、流石にこの額は想定外。

 庶民の中でも蓄えは多い方のレイだが、それでも庶民感覚。

 この額には流石に度肝を抜かれたし、なんなら貴族でも腰を抜かす額だ。


 ドラゴンの素材とは現代において、それ程の価値を持つのだ。



「銀行と現金、どちらが良いかな?」


「現金でお願いしたいです。アリスが居れば安全に持ち運べますからね」


「では、今週中に用意しよう! 楽しみに待っておれよ!」



 あまりにも呆気に取られて、返事をできなかった。

 その日は口を開けたまま、帰宅した。




 ●●●●●●




 家に帰って、やっと口が塞がった。

 時間を見ると未だ正午であり、一日を終わらせるには惜しい時間。

 手早く昼食を用意して、何か出来ないかと考えていると、ガルレナにやって来た本来の目的を思い出した。


 三人で昼食を食べ終えてから、話を振ってみる。



「ねえ、そういえば図書館に行かなきゃじゃん、アリス。今から行く?」


「すっかり忘れていました! 行けるのならば、行きたいです!」



 ヘルメイス公爵に影響されたか、少し喋り方が元気になったアリスが応える。

 ヴァイオレットは自分の積んでいる本を眺めてから、小さく頷いた。


 持ち物は銭袋と、街中での護身用に剣。

 それだけ持って、街に出た。


 十分程歩けば国立図書館へと到着―――入り口で武器を預けたら、レイとヴァイオレットは適当な本を手に取り、読み始めた。


 そんな中、アリスは遠くから沢山の本棚を眺めて、青い瞳を通常じゃありえない様なタイプで輝かせていた。


 青い瞳の中で、一本青く輝く線が上から下へと。

 何をしているのは分からないが、表情は楽しそうなのでレイは放置を選択した。


 ずっと立ちっぱなしで一部本棚を遠目に眺め続けるアリスはあからさまな不審者なので、あまり近づきたくはないが念のために近くの席で読書をする事に。



「ねえ愛弟子、これって私達不審者一行みたいじゃないかい?」


「まあ、そうでしょうね。傍目に見たら、絶対に読み切れないであろう量の本を側に積む師匠と、ずっと立ってるアリスですから。俺まで変人だと思われそうで嫌です」


「こんな沢山の本がある空間に来て、スライムの炒め方全集を真っ先に選ぶ愛弟子も不審ではあると思うけど」 


「いや、見つけたら読んじゃいますよ。スライムの炒め方全集。隣にDX(デラックス)もあったので、興味を惹かれます」


「作者がそれを書こうと思ったきっかけが想像できないよ私には」


「えっと…………天啓が降りて来たと一言、後書きにありますね」


「後書きの正しい使い方というか、様式美のなんたるかがある…………」



 下らない会話を小声でしながらも、アリスの様子を見る。


 すると眺めている棚が変わっており、次第に表情は険しい物となっていく。

 少し眉間に(しわ )が寄り、次に薄っすら涙が。

 最終的には、頬が膨らみ始めた。



「どうした、アリス」


「見つから……ないのです」


「今何してたの?」


「全ての本のデータを読み取り………解析していました」


「ここの本全部見てるって事?」



 そう聞くと、アリスは小さく頷いた。

 そして、より一層表情が悲壮なものに。



「はい、あと一冊なのですが、スライムの炒め方しか書いていないのです!」


「ああ、それは読まなくていいと思うよ」



 こうしてアリスの第一回本漁りは、失敗に終わった。

スライムの炒め方全集、予告しますが、いつか絶対にまた出します。

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