危機的状況
このあと一時にもう一話、私の努力次第で投稿されます
「じゃあ、行きましょう」
早朝、日も登らない頃。
ヴァイオレットの言葉に二人は頷いた。
完全に武装体制で、家の近くの川隅から地下水道へと進入する。
中の空気は湿っぽく、鼻が曲がるほど臭い。
そんな中三人は、昨晩の内に叩き込んだ地下の地図を思い出しながら道を進む。
「師匠、敵は?」
「二人だけ、こないだ見せた場所に居るわよ」
「俺先に向かっちゃっても良いですか?」
「私達が徒歩で向かって大体十分―――それまで一人で戦えるのかい愛弟子よ?」
「勿論」
「よし、それじゃあ待っててね」
「了解!」
瞬間、レイは壁に手を当てて、手に炎を纏わせる。
そのまま通路の向かうべき方向へと手を振るい、通路を炎で満たしてしまう。
「それじゃあ、お先に失礼します」
炎が目的地のすぐ側まで届くと、レイは言った。
炎を掴んで、先の地点まで収束させる。
すると、体は炎に引っ張られて高速移動を可能とした。
所々壁にぶつかりそうになるが、そこは天井や壁などを縦横無尽に疾走して回避する。
そして一分足らず、レイは二人の男の前に辿り着いた。
「よお―――久しぶりだな。ロムニス」
茶色い肌と黒く長い髪。
腰に携える長剣とは、幾度となくレイと打ち合っている。
「貴様か…………久しいな。かの戦場を思い出す」
広い空間、ロムニスの背後には謎の巨大な機械が置いてあるが、しかしレイとの戦いのために用意したとしか思えない。
両者とも、ここでぶつかると知っていたのだ。
「お前、なんでこんな事するんだよ」
「前も言ったであろう? 己はただこの国を、レイング王国を破壊しに現れたと」
「理由は変わらないか?」
「あいも変わらず、己が戦うのは祖国の為に他ならぬ」
「じゃあ今日も分かり合えないと言うことで」
「ああ、そうだな」
「今日も、死会おうか!」
瞬間、レイとロムニス二人揃って自分の魔法で剣を作り出した。
レイは炎で、ロムニスは、雷で。
剣はぶつかり合い、鍔迫り合い。
ジリジリと火花を放っている。
「開火―――百火繚乱!」
レイの剣が爆発。
火花が舞い散り、それらがナイフのように、新たな小剣となり、一斉にロムニスへと降り注いだ。
「雷鳴轟き―――我が名を冠する王よ。摂理と倫理、臨界を統べるかの夢に捧げる御業を今響かせんとしよう!」
「詠唱!?」
「超級魔法―――下り龍!」
言い終えると同時、天井を突き破って、天より光が降り注ぐ。
「――――――ッ!!!」
「以前ならこの程度、瞬時に返したであろう!」
「こちとら魔力の量、半分になってんだよっ!」
新たに剣を作り出し振るうが、ロムニスはそれを回避して、下り龍によって空いた天井の穴から地上へと飛び出す。
それを追うように、レイも手から炎の紐を伸ばして、地上へと飛び出す。
すると聞こえてきたのは、地上からの悲鳴だった。
突然殺傷力のある光の柱が降り注いだのだ。
パニックに陥らない方がおかしい。
「落ち着け! 今のものの原因は俺が叩くから、この場の人達は王城に避難を! 門が開かなければ、レイ・イグニスの指示だと伝えろ!」
そう叫んでからり辺りを見渡してロムニスの位置を把握。
即座に攻撃に移る。
炎で双剣を作り出して、一本を投擲。
柄と手を火の細い糸で繋ぎ、回避されても剣を引き戻して、次の手に移ろうと――――――。
「――――――ッ!」
背中にナイフが、刺さった。
見覚えもあれば、刺されたらどうなるかも知っている。
「離れろッ!」
背後にてナイフを握っていた男の、手首を切断して、そのまま蹴り飛ばした。
男は顔を晒しており、前の街にいた男と同一人物だというのは一眼見れば分かる。
しかし、それに関しては既にヴァイオレットから聞いており、驚き終えていた。
手が自由に動くことを確認して、手を斬るのが間に合ったことに安心する。
「ッ…………たく、もっとまともな治療方法が欲しいな」
傷口を焼いて応急処置し、両手に握る剣をただの炎へと戻して、拳に纏わせる。
足元から炎を噴射して宙に浮き、ロムニスの元へと高速移動する。
防御に構えられたロムニスの雷の剣を殴り破壊して、そのままもう片方の手で殴打。
拳は腹にめり込み、ロムニスは吹き飛ぶ。
しかし、空中に雷で足場を作って踏ん張り、即座に反撃。
足に雷を纏わせて、高速の蹴り。
レイはそれを紙一重で回避するが、振り切った足を踵落としのように振り下ろしもう一撃。
腕での防御はするが、足の火力が足りずに落下する。
地面スレスレにて再点火し、再度飛び上がる。
少しずつ火力を上げて行き、最速に達した瞬間に拳を振るう。
ロムニスは雷で足場を作る要領で盾を作り出し防御するが、それは間違いだ。
拳が当たる寸前、レイはロムニスの背後へと転移した。
「ッこれで落ちているとは…………相変わらず貴様は、己の前に立ちはだかるのだな」
「当然、何度でも邪魔してやるよ」
レイの拳の炎はより一層大きくなり、足の火力も増している。
「群雷!」
「火車、矢走り!」
大量の雷が降り注ぐが、地上からは炎の矢が大量に放たれて、全て空中で命中。
地上に落ちる前に無力化される。
その中をレイは飛んで、手の炎は弓矢へと変形。
ロムニスに向かい、真正面から放って、弓は手の炎に戻す。
「赤の斜塔、獄の番人―――創世の使者は我が手に眠らん! 超級魔法、火穿!」
手の炎を針のように極限まで細めて、百を悠に超える数で射出する。
それら全てが雷の足場を使った飛翔で避けられるが、問題は無い。
「火穿―――ボム!」
全ての針が、一瞬煌めく。
そして次の瞬間に、爆発も爆発。
大爆発を引き起こした。
爆煙は風で早々に霧散して、その中にロムニスの姿は見当たらなかった。
今の攻撃でロムニスが死ぬわけがないと言うことは、理解している。
「逃げたか………………」
ひとまずガルレナの危機は、過ぎ去った。
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