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強奪

サクナヒメ楽しい

 同情の余地は、無くは無い。

 しかし必要は無さそうだ。


 突然の国々の王からの裏切り―――充分に充分を重ねて同情出来る、慰めてやる事だって出来る。

 だが、その同情を見た上で倒す。


 仲間の、家族の、知り合った人々の、そして自分の平穏が脅かされるならば、レイは相手が脅されて動いていようと容赦しない。


 周りからは優しさやら使命感やらがあると評価されやすいレイだが、実際は違う。


 知り合いが減れば傷つくだけの、超利己的人間なのだ。



「この世界を地獄にってのは、何をするんだ」


「ああ、それ聞いちゃう? 取り敢えず、そうだな…………秩序を貰う。僕は王が気に入らない―――気に入らないから奪う、気に入らないから壊す、世界の仕組みは、全てくっだらねえガキの感情に基づくんだよ」


「人の放牧か」


「いいねそれ―――生かさず殺さず閉じ込めず護らず、飼い殺しだ」



 アステラは残虐な笑みを浮かべる。


 レイは片手で何もない位置に向かい剣を振るった。

 今日は手に、よく武器が馴染む。


 今日ならばアリスと会ったばかりの日の、寝巻きのボタンを閉めたときよりも早く動けそうだ。




「炎とは再生の( きざ)し―――炎とは繁栄の証、炎とは希望の(とも )し」



 詠唱を開始して、歩き出す。

 既に魔力を通した剣を携えて。



(くら )がり暴くは我が( はて)御手( みて)。聖火、百景、獄炎―――千の伊吹( いぶき)()いては身を焦がし、(れん )の合間に静閉ざす」


「おっと!」



 詠唱を絶やさずにレイはアステラに向かい剣を振るった。

 アステラは怪我の即再生があるので必要ないだろうに、態々大きく回避した。


 連撃、連撃、数多もの斬撃を重ねに重ねる。

 そして体から、微かに炎が溢れ出す。



(さい )は投じられた―――我が身投じ、熱筋を導こう! 超越魔法、天天羅蘇(アマテラス )!」



 急激に炎が放たれ、熱される世界。

 熱に膨張した空気は風を生み出し、辺り一面を熱風で満たした。



「灼熱地獄―――既に君こそが、地獄の体現者ってわけかい」


獄炎球( ごくえんきゅう)―――|後光六道輪連華《 ごこうろくどうりんれんか》」



 纏う炎は背後の円へと。

 そこに数珠繋ぎにされた炎球は、全てがレイの武器である。



「六道―――モデル・エンペラー」



 六道の六つ目―――最後の型。

 炎球が一つずつ、それぞれ別のものへと変化した。


 一つ目はマントに、二つ目は今までの功績を称えるような勲章に、三つ目と四つ目が手袋となり、五つ目が剣へと。


 そして六つ目は、王冠の形を成した。



「ドラゴンの骨と皇帝の剣―――大層な二刀一対じゃないか」


「まあな」



 炎のマントを靡かせて言う。

 炎が燃え盛るにつれ、力がみなぎる様だ。

 際限なく、溢れ出す。



「様子見は終わりだ。今から俺は、お前を斬る」


「やってみろ!」



 叫んでアステラは、勢いよく手を振るう。

 すると、見えない何かがぶつかった。

 強い強い、衝撃だ。



「……それは、知ってる」


「だろうね―――だって殺して、奪ったんだから」



 瞬間―――レイは地を蹴った。

 溢れ出す力で、地面が抉れるほど強い力で。


 死んでいるとは、悟っていた。


 しかし、頭のどこかで思っていたのだ―――もしかしたら、どこかに隠れているのではないかと。

 もしかしたら、生きているのではないかと。


 逃げ果せているのではないかと。



「――――――ッ!」



 二つの刃を振るい、アステラの反応出来る速度を大幅に上回った攻撃だ。

 血は派手に噴き出すも、即治癒。

 これも一つの魔法か、アルスの最極が常に発動されている様だ。



「ッ―――中々どうして、痛いじゃないか!」


「うるっせえ!」



 二刀でアステラの胴体を真二つに。

 アステラは大口開いて笑いながら、血反吐を吐いている。


 絶え間なく続けられる斬撃にアステラは微塵になりながら、再生しながら笑い続ける。



「ああ楽しい! 楽しいなあ! いつぶりだ、こんなに楽しいのは!」



 アステラが自身の腕を弾き飛ばす。

 細かく切り刻まれた体よりも体積の大きい腕から、新しい体がトカゲの尻尾の様に生えてくる。


 服もどこからか現れた―――その様な魔法かと思ったが、妙に公序良俗を意識している。


 すぐに次の攻撃を叩き込まんとするが、再度衝撃。

 僅かに回避が間に合わず、衝撃は肩に被弾。


 炎のマントによって多少のダメージは抑えられたが、肩の骨が外れている。

 無理矢理ハメ直すと、ズキズキ痛むもそれ以外はほぼ無傷同然。


 今度は変則的な動きでアステラの背後に回り込もうとした瞬間、足が動かないことに気づく。


 右足の膝まで、完全に凍りついてしまっていたのだ。



「衝撃だけを、警戒していたかい?」


「ッ………糞が」



 わざと悪い口をきいて炎の手袋で氷に触れた。

 瞬時に熱で動ける程度に解凍出来た足を庇いつつ攻撃の隙を探した。


 そして気がつく―――ずっと立ち尽くすロムニスが、アステラに対して一度も加勢していないことを。


 そのロムニスの表情が、少し不満げなことに。



「………早く終わらせろってことか」


「ん? 何か言ったかい?」


「いや、気にすんな。ちょっと次の相手が待ってるみたいなんでな、早めに終わらせなきゃと思っただけだよ」

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