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クビになった日

開いてくれてありがとう。

本日3話まで一気に更新しますので、読んでいってもらえると幸いです。

 ダンジョン、魔物たちの巣窟。

 現在その中で、五人の人間と魔物達が戦闘していた。



「メイリー! 防げ!」


「はいっ!」



 ダンジョン内に響く叫び声と、鉄と鉄の衝突音。


 現在五人は、ダンジョンに巣食(すく)う、狼を無理矢理人型にしたような魔物―――コボルトを狩っている。



「ロイはまとまってる二匹を、レイは残りまとめろ!」



 レイと呼ばれた青年、レイ・イグニスは魔法を使う。


 火を出したり操ったりなど、分かりやすいものではないが、なにかと応用の出来る良い魔法だ。


 しかし―――味方と共に戦う場合はサポートに回りやすく、あまり活躍が目立たなかったり、個人の判断でサポートをした場合、悪手になりやすいのがネックだ。



「あとは、俺がやる!」



 先ほどから指示を出している男―――ランズ・バルガルドが力強く叫ぶと、他のメンバーが魔物の元から避難する。


 勢いよく跳び上がり―――落下と同時に戦斧(せんぶ)を振り下ろす。


 宙で体を(ひね)り、勢いをつけて、地面に一撃。

 その衝撃で、計十五匹。

 全てのコボルトを気絶させた。



「よし、トドメ刺して証拠取って帰るぞ」



 ランズがそう言うと、皆で荷物をまとめて、コボルトの首を刺してから、右耳を切り取る。

 この右耳が討伐の証となるのだ。


 ダンジョンから戻り、街で討伐の報奨金を受け取ったら酒場へ移動。


 いつもならパーティーメンバー全員で夕食なのだが、今晩に限ってはランズの希望で、レイと二人だけだ。


 酒を飲み、飯を食い。

 そろそろ切り上げようというタイミングで突然、ランズは言う。



「今更だが、お前の魔法は合わせにくい」



 レイの魔法は、戦い方や戦況と合わされば強力だが―――下手にズレると致命的だ。

 ここ一年は特に、戦いの中で二人ともそれを実感していた。



「言いにくい話だが…………二年間一緒にやってきてようやく確信した。俺とお前、致命的に合わねえんだよ」


「そういう事か…………まあ、分かるよ」


「そうか―――なら、今俺が言いてえ事も分かるな?」


「ああ―――今まで楽しかったよランズ。でも、もう終わりなんだろ?」


「そうだ、レイ。俺達のパーティーから、出ていってくれ」



 二年間―――二人が共にパーティーとして、魔物と戦い続けた時間だ。

 鼓舞し合う時もあれば、苦悩を共にした時間も当然あった。


 しかし、それも今夜終わりを迎えたのだ。

 レイ自身負い目もあるので、態々怒るような真似はしない。

 ただ素直に、別れを告げる。



「じゃあなランズ…………楽しかったよ」




 ●●●●●●




 冒険者――――――レイの職業だ。


 ダンジョンや知らない国々などの、未知を求めて日々戦う。

 今まではその冒険者数名でチームを組んで戦う、パーティーに所属していたレイだが、今は一人きり。


 以前以上に装備の点検などを怠らない。



「剣、刃毀(はこぼ)れ無し。水筒、満タン。外套( がいとう)も破れてないし、靴底の仕込み刃も異常無し」



 以前ならば声に出して確認すれば、忘れ物があった場合誰かが教えてくれた。

 だから、癖になっているのだ。


 靴のつま先で床を鳴らして、食料などの入ったバッグを背負う。

 それから昨晩から泊まっている宿を出て、冒険者への仕事の依頼などが集まる場所、冒険者ギルドへと向かう。


 ギルドには様々な仕事の依頼や、人同士の繋がりなどなどが主な目的として使われる場所であり、その中でも本日のレイは、魔物の討伐依頼を受けに来た。


 一人で達成出来そうな仕事を掲示板の張り紙から見つけて、それの端に書いてある番号を受付へと申告。

 それが終わったら街から出て、一人ダンジョンへと向かった。


 目当てはトレントという、木のような見た目で、枝を操り鞭のように攻撃してくる魔物だ。


 ダンジョンへ辿り着き、少し歩くとトレントにはすぐ出会えた。

 しかも、群れで。



「少し厄介だな…………」



 メインの武器は腕ほどの長さがある剣だが、他にも色々持っている。

 例えば、炎の魔法を封じ込めた投擲用のナイフ。


 それを投げると、ストンとトレントに突き刺さって着火。

 あっという間に一体か一本か―――トレントを焼き焦がしてしまった。



「――――――次っ!」



 残りのトレントは四体。

 依頼内容は、トレントの討伐と工芸品作成に使える枝五本。

 足りて余る程には枝など生えている。


 しかしここからは燃やすわけにはいかないので、枝を犠牲にしない魔法を行使する。


 普段はサポートに回ってはいるが、レイの魔法は単独でも戦える。


 むしろ、レイの使う()()()()()()()は、一人の方が強いのだ。


 何もない道の先へとナイフを投擲して、落ちる前にトレントへと蹴りで触れる。


 瞬間、トレントはナイフの飛んだ先へと転移。

 このナイフに封じ込められた魔法は伸縮だ。


 トレントに刺さると同時に刃が伸びて、壁へと突き刺さる。

 これによって枝を四本確実に手に入れた。

 後一本。


 今度は直接トレントへと向けて炎魔法のナイフを投擲。

 枝で叩き落とされそうになる寸前で、ナイフの元へと転移して枝を根本から切断、炎は出さない。


 これで五本達成だ。


 最後に二体―――今のナイフを持ったまま自分が転移。

 二体とも斬りつけて、刃が中へと食い込んだ状態で火を噴射させ、内側から焼いた。



「よし、鈍ってない!」



 久々の単独戦闘が上手く行ったことに少し喜びながらも、枝の回収を急ぐ。


 せっかくの素材を、燃えたトレントの巻き添えで薪にされてはたまったものじゃあない。


 伸縮するナイフで壁に括り付けたトレントから四本回収して、最後の一本を拾い、少し疲れたと壁にもたれかかったそのときだった。


 突如として、壁が崩れて謎の空間へと落ちた。



「――――――へ?」



 空間転移の魔法には細かい座標の計算が必要。

 咄嗟(とっさ)の落下では、元の位置に戻る計算が間に合うか怪しい。


 瞬時に転移を諦め、視線を落下先へと向ける。


 昔貴族の家に縁あって入った時以来の、真っ白な―――純白の床が見えた。


 地面への激突まであと五秒。

 壁に足をつけて減速して、無傷での着地に成功した。



「ここは………………花?」



 真っ白な床に見えたのは、でこぼこな地面を埋め尽くすように咲き狂った真っ白な花だった。


 未知のものを探すために冒険者となったレイはこの空間に気を引かれ、少し探索することにする。


 少し歩くと、墓地の様な大きな十字架を発見。


 その根本には―――長い白髪で、整った顔の全裸の女が目を閉じて座り込んでいた。


 命がないのか―――どこか無機質な女には、生き物ならば基本備わっているであろう呼吸や、痩せ型な割には浮き出ることのない骨などが見当たらない。


 目を覚まさせようと肩を揺すろうとレイが手を伸ばすと、女は突然瞼を開いた。


 二人の間に少しの静寂が流れてから、女は無機質な声で言った。



「リーン・アリスワールド、起動します」



 不可思議な空間に不可思議な言動。

 この出会いを機に人生が大きく動き出すことを、レイはまだ知らない。

1話、読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思った方はレビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!

みなさんこれからよろしくお願いします!


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[一言]  なんだか、読んでるとスッと話に入り込めました!  とても面白かったです♪
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