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しょうがないって諦めていた気持ち


 キースが私をじっと見ている。


 魔法がかけられている心当たりを、きかれているのだけど。


 前世とか、ゲームとか、なんて言おうか?


 「あ、まず、私がかけられていた魔法ってなんなんですか?」

 素朴な疑問が浮かんだので時間稼ぎにきいてみた。


 「認識阻害魔法がかかっていたようだよ。実はミリーのご両親にも先にお話しして、その解除するためにみんなで動いていたんだ」

 キースは微笑んで続ける。


 「あまりに一気に解除すると命の危険があるってことで、魔法石で魔法を緩めてから、本格的に解除魔法をかけてもらう算段になっていたんだけど。加工したヴァネッサの腕が良すぎて魔法石の効力が増幅して、魔法が解除されてしまったようなんだよね」


 みんな私のために動いてくれてたなんて……。

 本当に嬉しい。

 私恵まれてるなぁと感じる。


 また、素敵な指輪を作ってくれたあのエキゾチックな美女を思う。

 相当な実力の持ち主なんだな、となんだか羨ましい。


 「で、心あたりの話をそろそろしてくれないかな?」


 どうしよう。前世はともかく、ゲームとはさすがに言えないよね。


 一生懸命頭の中を整理して。


 「キース、私には、前世の、記憶が少しあります」

 私は、覚悟を決めて話しだした。


 「前世の記憶の中で、人気だった物語があって。今のは私は、その物語のヒロイン、いわゆる、主人公であるみたいなんです。読んでなくてお話しがわからないのでなんともいえないんだけど……。

 私が狙われたとしたら、前世の記憶があり、物語の内容を知っている人が、私の他にもいるのかもしれません」


 私は、キースの目を見る。


 意味がわからないんだけど、というような顔をしている。

 そりゃそうだ、私も未だにわけがわからないもの。


 クローディア様も知っているが、彼女が魔法をかけるわけはないだろうから省く。


 「ミリーが嘘をついてると思ってるわけじゃないけど、読んでないのに主人公だってどうしてわかるんだ?」


 信じられない、というような顔をしている。


 「あの、かなり人気だったので、広告を見る機会がすごくあって。えっとお芝居見に行くときに、ポスターが貼られているでしょあんな感じで至る所で目にするんです」

 こちらでもわかるように言葉を選ぶ。

 めっちゃ難しい。ゲームっていいたい。


 「あぁ、なるほど。理解した。つまり、ミリーは、前世の記憶があり、そこにはミリー自身が主人公の物語があって、

同じように前世を知り、なおかつミリーよりもその物語に精通している人が犯人ではないか、と思ったということだね」

 キースがめちゃめちゃな私の話をまとめてくれる。


 いつも話しててキースは頭がいい人だなと思う。

 それなのに謙虚なんだよね。

 まだまだなんだ、といつも言っている。

 もっと自信を持ってもいいとも思うけど、こういう人はすごく成長する。


 OL時代、指導役をすることが多かったので。


 でも、いつも笑っているキースも大好きだが、真面目な顔もまた、素晴らしいと思う。

 私、こんなすてきな人と婚約できたんだよね?

 嬉しさで心がいっぱいになってしまう。


 ……


 「ミリー、大丈夫?」

 気づいたらキースの腕の中にいた。


 「あれ?私?」

一瞬時が飛んだような?


 「今倒れたんだよ」

 いい匂いのするキースの言葉が甘く感じる。

 腕の中にいるなんてドキドキが止まらない。


 「起きたばかりなのに無理させすぎたね、大丈夫?」

 優しく抱きしめてくれる。


 意識すればするほど、ドンドン自分の顔が真っ赤になるのを感じる。

 元はアラフォーなのに恋愛に疎かった私は、こんなシチュエーションを経験したことが全くなかった。


 「ミリー? 顔が真っ赤になってる。熱が上がったんじゃないか? 医者を呼んでくる」

 と私を優しく寝かせて、離れようとしたキースの腕をつい、掴んでしまった。


 「ミリー、どうした?」


 「キース。ここにまだ、もう少しいてほしいです。キースが格好良くて、ドキドキしちゃっただけなの」

 病み上がりで、心細くなってしまったので、素直に言えてしまう。


 私、寂しかったんだよ。

 学園で、誰にも見てもらえなくて、友達を一人も作ることができなくて。


 色々残念なアラフォーだから、と思うようにして、諦めていたけど、本当は本当はめっちゃ寂しかったんだ。


 認識阻害魔法、きいたことがある。

 それがかかってたんだ。私。


 私悪くなかったんだね。

 残念じゃなかったんだね。


 ずっとしょうがないって我慢してたのに、我慢できていたのに、今、キースの腕の中にいる自分があまりに幸せで、

寂しかった気持ちが、溢れて、キースにもっともっと甘えたいなぁと思ってしまったのだ……。


 キースは私をみて、急に男の子の顔をした。


 男性のこんな表情見たの、前世から初めて。


 「ミリー、目を閉じて」

 キースはそういうと、私の唇に、優しく、甘い甘い、キスをした。


 甘くて長いキスをして、キースが唇を離してくれてから、

もうキースの顔が恥ずかしくて見れない。


 私はあまりの幸せに体の力が入らなくなってしまった。

 

 「ミリー早く元気になって、またデートしよう」

 耳にささやいてくれる。


 キースのいい匂いが私を包む。


 キースが帰ってから、宮廷魔導医師が診察してくれたが、

やたら丈夫を連呼していた。


 「あんなに酷い魔法を一気に解除したのに生き延びたのも凄いし、起きてすぐここまで元気に座れるのも信じられない。また元の生活に戻すのに、普通なら全治3ヶ月はかかりますが、あなたなら1ヶ月もかからないかもしれませんね」


 私はやはりなかなか頑丈だったみたい。

 むしろ体はすごくしんどいんだけど、それ本当?

 今までが、健康体すぎただけか?


 最後に回復したら調べさせてほしいと頼まれて医師は部屋に戻った。


 つきっきりで見てくださったみたい。

 念のため明日までいてもう帰宅するようだ。


 わざわざ私のためにすごい方が見てくださってありがたい気持ちだ。


 キースとキースのご両親が呼んでくださったのだと聞いて、また嬉しい気持ちになった。


 ……これからどうしたらいいんだろう。

 私は、私に魔法をかけた人を調べるべきなのだろうか。


 わからない。

 なんだか怖い気もする。


 でも今は、幸せな気持ちで寝たいな、そう思って、私は瞼を閉じた。

ミリーちゃん年の功もあり、ちゃんと甘えられる子です。キースの方が拗らせてるかも。

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