ディアマンクッキーは恋の味(キース視点)2
少し加筆修正しました。
「フーン、その話は不思議だな。俺も興味あるからしらべてやってもいいぞ!」
俺は同じ王城で働く友人のところにいた。
友人は同級生であり、魔法では特待生だったため、宮廷魔導士として働いている。
言わないけどコネがあるわけでなく実力でのし上がったところも、信頼してるし尊敬もしている。
きっと彼ならミリーの謎も解けそうだと踏んだわけだ。
彼の名はマイロ。
紺色の髪を一つにまとめており、目の色は青みがかったグレーである。
顔もいいし勝てる気がしないのでミリーは会わせたくない。
きっと解析に必要になるだろうと思い、勝手に拝借したミリーの髪の毛が手元にある。
「何が悪いことがおこってないといいんだが。よろしく頼む。マイロ」
頭を下げる。
「できるかぎり急いで調べてみるから」
本当に俺はいい友人を持った。
※※※
昼休憩、マイロから呼び出された。
もうわかったのか?
「わかったぞ。魔法がかかってるな。かなり初歩の認識阻害術をかけられている」
初期の簡単なものすぎたのか、マイロは苦笑いしている。
認識阻害術は、隠密の仕事をする上でかかせない。
周りから認識されないという魔法術だ。
悪いことをしようとするものはこの術が使えることが必須であると言っても過言ではない。
だが、初歩のものは、自らも周りを認識することが難しくなるという副作用もあってほとんど使われていない。
だが、かなりの使い手の術ならともかく、対策が取られて簡単に破られることは誰でも知っている。
王宮で働くものはまずコレを見破ることを覚えさせられる。
そんなに難しくはないものだ。
「ミリーが自分からかけたのか?」
禁忌の魔法になっているが、あまりにも初歩のため、調べれば簡単に使える。
ミリーもかけることは可能なはずだ。
「いや、誰かからかけられたようだな。ひどいかかりようなのは、同世代限定で術が作用されるようになっていて、同世代以外には作用しない代わりに、かなり効力を発揮しているし、術が鎖みたいに彼女に纏わりついているような感じだな」
マイロはそう言って、続ける。
「おそらく簡単に判明したところから、初心者がかけているはずだが。初歩の術に限定法を使って中級程度の効力にあげてきているのが嫌な感じがするな。
解除するにも相当の負担がかかりそうだ。魔除けの魔法石でまず少し作用させてからじゃないと解除するとき命の危険があると思う。ちょっと待ってくれ。この間仕入れた魔法石がここに……」
と魔法石の入った箱を持ってきた。
「コレとコレとかいいかもな。可愛いアクセサリーにしてプレゼントしてみたらどうだ?」
マイロは笑った。
「これをつけて何があると思うから、倒れたりする前に抱えられるようにするんだぞ。そのあと落ち着いたら直接解除を行おう。絡み付いていてさすがに難しいので、信頼できる上司に頼んでおくようにするから」
「マイロ、ありがとう。恩にきる」
ミリーに似合いそうな魔法石を選び、一つもらう。
お代はいいから幸せになれよ、とか言ってくる。
俺が学園時代拗らせていたのをマイロは知っている。
そのあと俺はすぐ両親に相談した。
「だったら婚約しなさいよ!」
「キースがいいのなら反対はしないし、喜んでミリーさんを歓迎するぞ。まずスノー伯爵のところに書状をだしておこう。キース、明日ご挨拶に伺いなさい」
と両親がいうのでなんだかあれよあれよと婚約することになってしまったが、あのミリーと婚約できるのならば、まんざらではない。
早く渡したいが、こうなってしまったら婚約が先だ。忙しくなる。
そのあと、スノー伯爵にもミリーに魔法がかかっている話をして、魔法石でまずならしてから、解除に至る話をした。
「娘にそんな魔法がかけられているとは……。こちらでも調べさせます。念のため娘の体に負担がさらにかからない方法がないか調べてみてもいいでしょうか、婚約はわたしからはとてもありがたい話です」
爵位がこちらの方が上のため、伯爵は若輩者の俺にも敬語である。
そのあとすぐにやはりマイロのやり方が一番負担のない方法だと思うと許可が出た。
プロポーズを受けるかは娘の意思に任せるとのことで、俺からまずプロポーズしてほしいとのことだった。
とんとん拍子に進み、俺は少し舞い上がっていたのは間違いなかった。
※※※
ミリーに指輪をつけるとすごく似合っていた。
俺との婚約の証をつけてくれたミリーがあまりに可愛くて、
「本当に可愛い。ずっと俺のものでいてね」とか言ってしまった。
ヴァネッサが聞いてないフリしてくれる。
そして、アクセサリーショップからミリーと出る。
ミリーは指輪をずっとみては、本当に嬉しそうで、それだけで嬉しい。
特に倒れるとかもない感じだし、もう大丈夫かな?
ミリーに何もなく無事のまま、魔法に作用してくれるといいのだが。
念のため腰に手を回して何があっても大丈夫なように。
そのあと馬車で、ミリーが倒れた。
その時、指輪の魔法石が粉々に割れた。
もう大丈夫かもと思ってしまって、反応が遅れてしまったがどうにかミリーが倒れこむ前にしっかり抱え込めた。
腕の中でミリーはとても熱い。
だが、本人は寒いのかブルブルと震えている。
「痛い……助けて……」
顔色が、かなり悪い。
どうしたらいいのだろう。
守ると決めたのに、何もできない自分が不甲斐ない。
悔しい。
そのあと帰ると、すぐに両家の両親が集まってくれ、腕のいい宮廷魔導医師が呼ばれた。
マイロの方法は正しかったようなのだが、アクセサリーショップのヴァネッサの腕がよく相乗効果で魔法石の効力が上がってしまい、魔法石のみで解除に至ってしまったのだろうと言う。
急激に解除に至ってしまったせいで、命の危険があり、覚悟も決めなさいと言われたのを遠くで聞いた。
母もスノー夫人も泣いていた。
スノー伯爵に呼ばれ
「ミリーは指輪を受け取ったということは、お受けしたんですね。あなたが気づいてくださらなければ、これ以上ひどいことになっていた可能性の方が高い。
私は、娘を信じているから、目を覚ましたらすぐ来てあげてくださらないだろうか」
とおっしゃってくださった。
少し心が軽くなった。
俺もミリーを信じよう。
どうか、ミリーを助けてください。
初めて神に祈ったと思う。
ミリーはそのあと何度も危篤に陥り、もうダメかと、何度も思わされた。
その度に復活して、宮廷魔導医師が毎回驚いて、
「お嬢さん可憐に見えて、すごく頑丈ですね」
と言っていた。
しかし、なぜこんなにミリーが苦しまなければないのか。
絶対に、ミリーに魔法にかけたやつを見つけ出してやる。
そう心に決めた。
※※※
一週間経った。
まだミリーは死の淵を彷徨っている。
毎日通っているが、あまり良くない感じで、つい悪いことが頭によぎる。
とにかく、マイロにも手伝ってもらい、魔法をかけた犯人のことを入念に調べていって、ほぼ確定のところまで持っていっている。
ミリーに何かあれば必ず……。
そんな折、ようやくミリーが目が覚めたと連絡があった。
仕事途中だったが、すぐに許可をもらい仕事を抜けさせてもらう。
父も後からいくから、と言っていた。
父は結局俺に甘いと思う。
ありがたいものだ。
起きたミリーは健康そのものだったのが、ひとまわり小さくなり、座るのさえしんどそうなところに色気を感じてしまう。
この一週間ずっと考えないようにしつつも考えてしまっていた嫌な想像を思いつい涙が溢れそうになり、必死に耐える。
本当によかった。
小さくなってしまった肩を抱きしめてしまいたい衝動にかられながら、俺は、ミリーの前に進んだのだった。
キース視点は終わりです。




