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はじめてのデートで


 馬車を降りるとそこは城下町だった。


 賑やかでお店がいっぱいで、キラキラしてミリーも大好きな場所である。


 アラフォーの時もウィンドーショッピングにカフェでランチとか大好きだったのだ。


 「ミリー、疲れたかな?」

 キースが気を遣ってくれる。

 若いのに気を遣えるの本当にすごい。


 「大丈夫です。ありがとう」

 私はキースが近くにいるのでドキドキしてしまい、疲れてしまったが、ニッコリと笑った。


 (そういえば大きくなってからたまに会うことはあっても、こうして二人で遊ぶの久しぶりかも。緊張する)


 「ここだよ」

 キースが振り向いて行った。


 ここは、高級なものから安価なものまで扱っている、人気なアクセサリーショップの裏手にある工房だった。


 ドアをカランカランと鳴らして、キースが「失礼するよ」といいドアを開けると、そこに綺麗な女性がアクセサリーを直しているところだった。


 「いらっしゃいませ。もう少しで終わるのでそこで待っていてください」

 女性は、作業台に座ったままこちらをみないで、手を動かしながら、言う。


 深い紺色の髪色で、赤い目をしていて、エキゾチックな雰囲気の女性だ。


 完全に前世の自分より年下なのに、なんとも言えない色気になんだか顔が赤くなってしまう。


 「キース、あの人めっちゃ綺麗ですね!」

 ひそひそと言って、そこで、ハッと気づいた。


 もしかして彼女がキースのいい人?

 

 めっちゃ可愛いし綺麗で色気あるし、なんか友達多そうだし、知らないけど多分全てにおいて負けまくってる。


 すごく落ち込んでいる自分を自覚する。

 私、キースのこと、もしかして……?


 いや、ダメだ、考えない。

 このまま、気づかなかったことにして、心に仕舞おう。


 そうじゃないと泣いちゃいそうだ。


 なんだか何か喋ろうと思うもののなんて言ったらいいかわからず、キースも何も言わないので、私はエキゾチックな彼女の手の中でどんどん魔法みたいに出来上がっていくアクセサリーを見ていた。


 あまりの見事さにじっくり見てしまい、少し落ち着いた。


 キースが何を言っても笑顔でおめでとうと言おうと決めた。


 作業が終わり、彼女が立ち上がる。

 「ごめんなさい。いいところだったのでおまたせしてしまいました。私、ここの工房長をしております。ヴァネッサです。キース様よりお話お伺いしていますよ」

 と彼女はわたしにニッコリした。


 エキゾチックで可愛いとか反則だ。これは女子でもドキドキしちゃう。


「あ、私はミリー・スノーです。よろしくお願いします」

 私はふかぶかお辞儀した。


 「お辞儀なんてやめてくださいませ。キース様、出来ておりますよ。あとはミリーさんのサイズに再度微調整し、すぐお渡しできると思います」

 ヴァネッサは、そう言って小さな指輪を出して来た。


 指輪には透明だけども光を反射してキラキラ光るダイヤのような宝石がついており、婚約指輪みたいだった。


 でもダイヤではない。

 宝石に詳しくはないがきっとコレ魔法石だわ。

 魔法が使えるものならきっと気付くことができると思う。


 「なんですか? コレ」

 私はそう言った。


 「えっまだ何もミリー様におっしゃってませんの?」

 なんだかヴァネッサ様がドン引きしている。


 「では先にささっとサイズの計測させてもらいますね」

 と言いながらヴァネッサは素早く動作でさっと私の指の計測をしている。


 「終わりましたよ。あと30分ほど調整させていただくので、あの商談室を使ってくださってよろしいので、キース様さっさとミリー様にお話になってくださいね!」

 ヴァネッサ様はそういって、商談室のドアを指さした。

 キースはなんだか照れているような。だが黙っている。


 どういうことだろうか? ヴァネッサ様はキースのいい人ではないの?


 キース様に連れられて商談室のフカフカのソファーに座る。

 さきほどはザ、工房というような感じだったのに、ここだけ特に高級な感じの雰囲気になっている。


 前ではなく、横にキースが座る。


 「あの、コレはどういうことなんですか? ヴァネッサ様はキースの恋人でいらっしゃるの?」

 私は沈黙に耐えきれず、一番ききたかったことを聞いた。


「えっ? ヴァネッサは違うよ。お店の人だよ!」

 私の勘違いに気付き、キースが慌てて否定する。


 「じゃあ私はなんでこんなところに連れて来ていただいたんですか?」

 私は聞いた。


 「もう気づいてるかもしれないけど。僕はミリーが好きなんだ。君のご両親にももうご挨拶は済ませてあるよ。僕と婚約して欲しい」

 キースは私の両手を取ってプロポーズした。


 「えっ?」

 私は真っ赤になってしまう。


 キースが、私を、好き?


 「嫌だった?」

 キースがじっと私の目を見る。


 私は緊張して、目を逸らしてしまう。

 「嫌じゃないです。キース……格好よくて緊張しちゃうので、私をあんまり見ないでください」

 私はそこからあんまり覚えてなくて、30分よりずっと早く調整できた指輪を、キースにはめてもらった。


 ヴァネッサ様は凄く仕事が早い。


 なんだかキースにめっちゃ恥ずかしいことを言われた気もするが、私は舞い上がってしまい、なんだか夢の中にいるみたいで、ずっとフワフワする。


 どうやら今、婚約のお願いの際、指輪を送るのが若者に流行ってるらしい。

 左薬指なのもなんだか前世を思い出して気恥ずかしい。


 前世では当たり前のことだったのが、ここでは若者の流行りとか変な感じだ。


 帰りの馬車で、じっと指輪を見てしまう。

 おそらく魔法石なんだろう。何か引き込まれるみたいな気持ちになる。

 指輪を嵌めてもらった時から何かずっとフワフワする。

 会話が全部遠くで聞こえにくい。


 私、よほど浮かれてるのね、と思ったところで、急に目の前が真っ暗になった。

 貧血かな? 息も苦しい。


 キースが何か言ってるけどさっきよりも更に遠くて全然聞き取れない。


 寒気が来たと思ったら、全身の血管が沸騰したみたいな感じになって、体中に謎の痛みを感じる。

痛い、痛い、痛い。


「痛い……助けて……」

私はどうにか声を振り絞り、キースに助けを求めて、そのまま気を失った。




※※※




 ツインテールの栗色の髪色の女の子が、私に魔法をかけている。


 「もうあの子に魔法をかけるしかない。それ以外に私が助かる道はないのだわ」

 

 覚悟を決めた目だった。




※※※




 「優子はどうして旦那さんと結婚したの?」

 前世の私が、親友に、聞いたセリフ。


 「わからないんだよね。どうしても好きになっちゃって。どうしても一緒にいたくなっちゃったの。好きなタイプでもなんでもないんだけど不思議だよね」

 優子ははにかんで、言った。


 いつか私にもそんな恋ができるのだろうか。


 「大丈夫! 美玲みれいなら。可愛いんだから、もっと自信を持って! 私美玲がすごく好き!応援してるから。

誰か好きな人ができたらね、彼のお母さんと仲良くなるときっといいわよ。男はみんなマザコンだからね。美玲なら必ず、大好きな人と結婚して、幸せになれるよ。私が保証する!」


 そうだ、私の前世の名前は美玲だった。


 優子……本当に私、大好きな人と結婚して、幸せになれるかな? 優子に会いたい。




※※※




 私はフカフカな自分の布団で目が覚めた。


 寝巻きにいつのまにか着替えさせられているようだ。


 起き上がろうとするも力が入らない。あんなに力持ちだったのに。


 侍女のエイミーが気づいて

 「ミリー様! ようやくお目覚めになられたのですね、無理なさらず寝ていてください。みなさま呼んでまいりますね」


 エイミーは駆け出して呼びに行った。


 駆けつけた両親から話を聞くと、私は一週間ほど寝ていたらしい。

 高熱が下がらず命の危険もあったらしい。


 健康で風邪ひとつひかない私が一週間も寝込むこともあり、家族は覚悟を決めろと医者に言われたようで、いつもニコニコしている両親の涙を初めてわたしは見た。


 申し訳なさで涙が出てきたが、愛されてるなーって思ってなんだか嬉しくも恥ずかしい気持ちだ。


 そのあと、キースもすぐに来てくれた。

 「ミリー、本当に良かった……」と泣いていた。

 泣いてるキースも可愛らしいなと思う。


 両親は若い2人にとか、お見合いみたいなことを言って出て行った。もちろんエイミーがいるので2人ではない。


 なんだか申し訳なさと嬉しさと恥ずかしさでキースを直視できず、いただいた指輪を見ようとすると、あるはずの指に嵌ってなかった。


 「キース、指輪はどうしたんでしょうか……」


 キースにもらった大切な指輪。


 キースは優しく私を見ていた顔を険しくし、

「エイミーさん、ちょっと申し訳ないが出て行ってもらっていいかな?2人だけで話したいことがあるんだ」


 エイミーは、私に頑張って! という顔をしながら、

「承知しました」と出て行った。

 絶対あの子、なんか勘違いしてるな。


 後でしっかり否定しよう。


 「ミリー。あの時指輪につけていた魔法石が割れたんだ。何か呪いや魔法にかけられるような、思い当たることはない?」

 キースが真剣な目で言った。


 「私には全く。いや、あるかも……?」

 ふと思い出したのは、前世のゲームのことだ。

 そういえば私はヒロインだったはずだ。

 もしかしてクローディア様の他にも転生者がいるとか。


 「あるの?」

 友達がいない私なのでキースはビックリしたようだ。


 「いや……勘違いかな?」

 前世のことを話すのは躊躇してしまう。


 「何か小さなことでもあるんだったら、言ってほしいな」

 キースが私の目をじっと見る。

 なんだかとても恥ずかしいのだけど。


 キースの真剣さに、私は誤魔化せないと感じ、覚悟を決めて前世の話をするために口を開いた。


前世の優子ちゃんの教えを無意識で守っていたミリーでした。

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